インタビュー
» 2014年04月22日 10時09分 UPDATE

コミュニケーションの原点回帰へ――ドコモ加藤社長に聞く「カケホーダイ&パケあえる」の狙い (1/2)

「最後まで通話定額には反対の意見があった」「無料通話分付きのプランを入れてもいいのでは」――。さまざまな選択肢を検討して悩んだ末に決まったという、ドコモの「カケホーダイ&パケあえる」。この新料金プラン誕生の背景を、ドコモの加藤社長に聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 4月10日に発表されたNTTドコモの新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」が話題を集めている。特に、国内の通信事業者では初めて通話の完全定額を実現したことのインパクトが大きい。基本プランの「カケホーダイ」では、Xiは月額2700円(税別、以下同)、FOMAは月額2200円で通話がし放題となる。さらに、パケット通信は10Gバイト〜30Gバイトを、家族で10回線まで分け合えるようになった。

 一方で、Xi向け料金プランと割引サービスは、8月末で新規受付を終了することで、Xiユーザーの選択肢は「カケホーダイ&パケあえる」だけになる。また、単身者であまり通話をしない人には「値上げでは?」との声も挙がっている。FOMAでおなじみだった「無料通話分」付きのプランは今回も用意されない。

 完全定額は確かに画期的だが、必ずしもメリットばかりではないともいえる、今回の新料金プラン。あらためて、その狙いをNTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏に聞いた。

「バリエーション」と「長期ユーザーへのメリット」を融合させた

photo NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏

―― カケホーダイ&パケあえるを提供するに至った背景を教えてください。

加藤氏 FOMAの無料通話分内蔵プランは複雑だったという声が多かったので、Xiでは基本料、自網(ドコモ)内の無料オプション、従量制(30秒21円)、この3本立てで行きました。でも「自網内はいいけどほかは高いのでは?」「もう少しバリエーションはないのか?」という声も挙がりました。複雑だったので単純にしたら、そう言われておったまげましたけど(笑)、ここをどうお応えしたらいいか、そして長く使っていてメリットがないのかと。この2つをどのように融合できるのか、というところから検討を始めました。

―― いつごろから検討していたのでしょうか。

加藤氏 料金のことは常に考えていますが、今回のストラクチャーは(2014年の)年明け前に収束しました。

―― Xiで無料通話分がないので、選択の幅が狭まったという声があったと。

加藤氏 やはり外へかけたら高いよね、という声はありました。

無料通話ありのプランを導入しなかった理由

―― 2700円で通話し放題になるのは確かに画期的ですが、例えば1時間の無料通話分付きのプランを設ける、といったことは検討しなかったのでしょうか。

加藤氏 もちろんそうしたプランも何種類か考えました。現在のXiのプランが月額743円で、通話料は30秒21円なので、例えば2000円で5000円分の無料通話分、500円で800円分の無料通話分が付くプランなども考えました。何種類がいいのかも議論しました。それがね……かなり複雑になるんですよ。(通話の)おかわりを自由にするのか……じゃあそれは単純な値下げになるのか? とか。いろいろな側面から見ていくと、収束しにくかったですね。

―― プラン内容をシンプルにすることを第一に考えたということですか。

加藤氏 まずシンプルであることです。もう1つは「哲学」というと大げさですが、人間だからこそ享受できる「空間と時間を共有してのコミュニケーション」に関連します。離れた相手との「テレコミュニケーション」になったときに、音声でのコミュニケーションは原点回帰かなという気がしました。

 もちろんチャットやメールもありますが、SkypeやLINEの無料通話サービスがあるのも、皆さんお話になりたいからなんだなと感じました。でも(SkypeやLINEだと通話の)相手さんが制限されるじゃないですか。ならばそれも関係なく、「落ち着いてじっくり、安心しておかけください。回数も時間も制限しません」――ここに行き着いたわけです。

―― VoIPアプリも魅力的ですが、制約があると。

加藤氏 あると思います。緊急通話はできませんよね。長い時間をかけて何回も議論しましたけども、やっぱり定額には反対という意見も最後まで残りました。でも、通信事業者として何をすべきなのかと考えると、完全定額がいいだろうと。

―― LINE電話やSkypeなども安さでは競合すると思います。

加藤氏 でも(通話料が)従量ですよね。時間を気にすることなく楽しんでいただけるのが、私どもの提案なんです。そこをご理解いただければ。

―― 月々2000円台で音声通話も利用できるMVNOのサービスも増えています。今回の新料金プランを発表する際に、そうしたMVNOのサービスも意識されたのでしょうか。

加藤氏 あまり意識はしていませんね。

―― ウィルコムやソフトバンクは10分などの制限付きで通話定額を実現しています(ソフトバンクは「スマ放題」の提供を延期している)。

加藤氏 10分より後の通話料は従量制になる――。我々も当然(そのようなプランを)考えました。考えている途中にそういうのが(ソフトバンクのスマ放題)出てきて、あ、すごいアイデアだなーと思いながらも、通話定額を実現させました。

―― ソフトバンクの「VoLTE時代を見据えた」という新プランを見た率直なご感想は……。

加藤氏 まず、VoLTEとはあまり関係ないな、という(笑)。だけど、お知恵を出しておられるなと思いました。だけど私どもは、そこに「家族」「シェア」という概念を入れましたので、アイデアの方向が違うなと思いました。

音声だけ、データだけ……など選択肢はある

―― カケホーダイの料金は、FOMAが2200円、Xiが2700円に落ち着いたのは、どのような基準からなのでしょうか。

加藤氏 基本プランはどの規模がいいのかを議論して、この結果になりました。(カケホーダイ&パケあえるでは)「基本料」と言わず、あえて「基本プラン」と言っています。これまでの基本料では、プラス通話料や無料通話分などがあって……こうしていくのも、いかんなと。じゃあ1つにするかという考え方もあったんですけど、1つにしたらISPの自由度がなくなります。分けるのならきっちり分けた方がいいかなと。

photo 通話定額のカケホーダイ&パケあえるでは、基本料金に通話料が含まれるので、「基本料」ではなく「基本プラン」としている

―― Xiの方がFOMAよりも高めに設定されているのは……。

加藤氏 機能性能で、やっぱり違いますよね、というのはご理解いただけると思います。

―― Xiは既存プランの新規受付を8月末で終了することが気になっています。ユーザーにとっては選択肢が狭くなってしまうのではないでしょうか。

加藤氏 新料金プランで構造を大きく変えましたので、これから先を見ました。先にはM2Mもありますし、データ通信だけの選択も可能ですから、いろいろなバリエーションがあります。今後はサービス競争になっていくと思いますが、絶対に(完全定額制が)お得だと感じています。

―― ドコモとしては、完全定額を前面に打ち出していくと。

加藤氏 音声だけでも大丈夫ですから。フィーチャーフォンでパケットなしでもOKです。パケットを使う場合は、「パケットパック」に入ってもらってISPと足してもらいますけど。推奨するわけではありませんが、パケットパックだけも選べます。こうした分け方をどうするかは、間際まで悩みました。

ライフステージを考え、学生だけでなく「25歳以下」も割り引く

―― 音声通話やデータ通信だけを選べるということで、選択肢はあるということですね。

加藤氏 (選択肢が)あるというのと、これからは家族で分け合えますので、パケットをうまく使っていただけたらお得になります。「子どもが中学生になったからスマホを持たせてあげよう」となったときに、「データSパック」なら月額3500円から500円が引かれます。そう、「U25応援割」がありますから。(データ通信は)月額3000円でいけます。1000円分、1Gバイトのボーナスパケットも付きます。

photo 「U25応援割」では、25歳以下のドコモユーザーには基本プランが500円引きになり、ボーナスパケットの1Gバイトが加算される。利用年数に応じてパケットパックを割り引く「ずっとドコモ割」も提供する

―― そういえば、U25(25歳以下)なので、必ずしも学生だけを優遇するわけではないんですよね。

加藤氏 ここはあまり話題になっていないので、宣伝させてください(笑)。iPhoneで随分改善しましたけど、ドコモは若い方に支持されていない部分もありまして……。さらに、ライフステージに合わせて若い人たちも応援しようと。じゃあ学生か? というと、それはないでしょう。年齢だけで行きましょう。じゃあ22歳まで? 学生だけではないでしょう。浪人したらどうしますか? とまあ、これは笑い話ですけれど。大学院生も多いですし、卒業してからすぐ(の時期)も、(生活が)しんどいじゃないですか。

 あるときの資料に「25歳まで」と書いてあったんですよ。じゃあ、まあ、それでいいかと(笑)。22歳か25歳か、または20歳でもいいんじゃないか? などと議論はしました。

―― ユーザーの割合で25歳以上が多かったわけではないと。

加藤氏 そういう統計を取ったわけではありません。「25歳は人生でどんな意味があるのか?」という我々の議論の中から生まれてきました。

―― パケット通信を同一回線内でシェアできる「パケあえる」には、家族で使ってほしいというメッセージが感じられます。

加藤氏 そういうメッセージです。もともと「ファミリー割引」という概念があって、その中で(通信容量が)ピッタリでもいいですし、あるブロックでそう(シェア)していただいてもいいですし。

全員がお得になるのは難しい

―― 一方で、音声通話をあまりしなくて、パケット通信をたくさんする単身者には、新料金プランはあまり魅力的ではない、という声も出ています。

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