インタビュー
» 2014年08月05日 10時52分 UPDATE

SIMロックフリースマホメーカーに聞く:「安かろう悪かろう」ではダメ――“日本品質”に徹底してこだわった「freetel」の秘密 (1/2)

ここ最近、日本でも数多くのSIMロックフリースマートフォンが発売されている。中でも新興メーカーとして注目したいのが、「freetel」ブランドで端末事業を展開しているプラスワン・マーケティングだ。同社が端末事業に参入した狙いと勝算を聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 SIMフリー端末をめぐる状況は、最近になって、少しずつ変わり始めている。AppleやGoogleに続き、Huawei、LGエレクトロニクスが端末を発売するなど、いわゆる大手メーカーが端末を独自に販売する動きが活発化。MVNOがSIMカードと端末をセットで販売するケースも増えている。

 こうした業界の動向がある一方で、できたばかりのベンチャー企業も、この新たな市場に活路を見出そうとしている。その1社が、「freetel」ブランドの端末を展開する、プラスワン・マーケティングだ。同社は2013年、まだ「SIMフリー」という単語すら一般に認知されていなかった段階で、独自モデルの「freetel」を発売。本体価格の安さや割賦に縛らない自由を武器に、新興メーカーながら1万台以上を販売した。

 この端末のヒットに手応えを得た同社は、スマートフォン3機種、タブレット1機種、Wi-Fiルーター1機種、フィーチャーフォン1機種の計6機種を一挙に発表。格安モデルの「freetel Priori」を8月2日に発売したのを皮切りに、LTE対応モデルの「freetel LTE XM」を8月29日に、3GのデュアルSIMモデル「freetel nico」を9月上旬に発売する予定だ。

 一方で、スマートフォンメーカー、特に日本のメーカーは苦境に立たされている。最近では、NECカシオやパナソニック モバイルといった大手メーカーがスマートフォン事業から撤退したことが記憶に新しい。スマホの普及率が50%を超えつつある段階で、以前のような爆発的普及も見込みにくくなっている。このような状況の中、プラスワン・マーケティングには本当に勝算があるのか。また、同社はなぜ一挙に6機種ものラインアップをそろえたのか。こうした疑問を、取締役の大仲泰弘氏に聞いた。

photo freetel夏のラインアップは、スマートフォン3機種、タブレット1機種、Wi-Fiルーター1機種、フィーチャーフォン1機種の計6機種だ

日本の通信料を最大で80%削減する

photo プラスワン・マーケティング 取締役 大仲泰弘氏

―― スマートフォンが一般層に普及するタイミングで、なぜあえてメーカーを作ったのかという点にとても興味があります。まずは、会社を設立した理由を教えてください。

大仲氏 私も代表の増田も、とある外資系のメーカーに勤めていました。その中で、スマートフォンビジネスにも携わることができ、ソフトバンクさんやイー・アクセスさんに商品を卸していました。その事業をメーカーで3年ほどやり、キャリアさんともお付き合いをしています。外資系メーカーだったため、端末を実際に作っている中国の工場や、グローバルの動向も見えてきました。また、業界にはCESやMobile World Congress、COMPUTEXなどの大きな展示会が年3回ほどあります。そういったところに行く中で、海外と日本では通信事業のあり方がだいぶ違うということにも気づかされました。

 何が違うか。簡単にいうと、日本の場合、携帯電話やスマートフォンを買おうとすると、家電量販店やキャリアショップに行って好きな端末を選びますが、そこに必ずSIMカードがついてきます。かたや海外では、端末とSIMカードを切り離して考えるのが一般的です。買いたい端末を買い、そのあと好きなSIMカードを選ぶ。

 もちろん、ここには一長一短があります。日本のやり方だと全部ショップの人がやってくれるので、すごく楽ですよね。端末さえ選べば、あとは数十分後に再来店するだけで、電話がかけられる状態になっています。ただし、逆にサービスが単一化しがちです。量販店などでスマートフォンを買った経験があれば分かると思いますが、すべての料金プランを細かく説明する店員さんはいません。「これとこれをつければ安い」となって選択肢がなく、端末代も(購入時は)0円です。つまり、お客さんによっては必要のないハイスペックモデルや、必要のないサービスを選ばされている可能性もあるということです。

 海外だと、そのへんは自分で研究しなければなりません。日本では考えられないユーザビリティともいえるでしょう。一方で、使い方に合わせたSIMカードやサービスを選ぶことができるのは、1つの優れた点でもあります。(海外のように)単体でスマートフォンを購入できれば、端末だけ欲しいという人もターゲットになりえます。実際、前職では、法人や個人からのそういったニーズもありました。

 このマーケットは、まだまだ日本だと発展途上で、期待が持てます。そこに我々が入り込もうというのが、会社を始めたきっかけになります。

 私たちの会社は、「日本の通信料を最大で80%削減する」という目標を掲げています。みんな安い方がいいわけです。今、キャリアさんのモデルを契約すると、固定費として月に7000円前後かかります。ここに(音声定額でなければ)通話料もプラスされます。例えば、子どもが2人いる家庭で、家族4人が全員携帯電話を契約すると、月に3万円、4万円かかる可能性があります。これが12カ月だと、48万円。世帯収入の平均が500万円だとすると、その内の10%程度が通信で消えてしまうことになります。

 食費や家賃ならまだしも、通信量にそこまでお金をかけていいのか。不可欠なものではありますが、安くすることをもっと考えてもいいのではと思います。でも、誰もそれを考えない。もしかしたら知らないだけかもしれません。ここを削減して家計を助けましょうというのが、私たちの会社の信念です。

工場を指導してもらうために“日本のエキスパート”を起用

―― 端末を単体で販売するというビジネスがなかったところに、目をつけたということですね。初号機のfreetelは、スペックや機能は絞られていましたが、1万円台前半と非常に安価でした。もっと機能を高くする方向もあったと思いますが、なぜこの仕様になったのでしょうか。

photophoto 3.5型ディスプレイを搭載した初代「freetel」スマホ

大仲氏 初号機は2013年11月に発売して、7カ月ぐらいが経ちました。確かに、今キャリアさんから出ているモデルと比べると、スペックは低い。ただし、この製品を作るにあたって、3つの特徴を持たせました。1つ目が品質、2つ目が価格、3つ目は購入のフレキシビリティです。

 価格は文字通りで、スペシャルパックという形で1万2190円で販売しました。技適やPSEなど、日本の法律を守った仕様で中古ではない端末だと、今でも最安値クラスだと思います。これが購入しやすいポイントで、キャリアさんと同じように2年間使おうとすると、端末代は月々488円です。

 3つの中で一番重要だと思っているのが品質です。「安かろう悪かろう」で火を噴いたり、煙が出たり、電源が入らなかったりしたら、一瞬で(ビジネスが)終わってしまいます。これは、小さなメーカーにとってはもちろんですが、ソニーさんやパナソニックさんのような大手メーカーでも同じことです。ここに対しては、資本を投入しました。

 日本品質でできる中国の工場を何百社も当たって探し、品質管理を行ってきた日本のエキスパートの方と契約を結び、中国に入って付きっきりで工場に指導をしていただきました。工場はラインを動かしてナンボで、1日止めるとそれが費用になってしまいます。それを数カ月止めて、1から教育を始めています。

 例えば、細かなところでは工場の周りにゴミが落ちていないかというところも、1つの基準です。半導体を扱うので、そういう基本的なところからしっかりやりました。ハンダのつけ方や、作った製品の並べ方など、すべてを1から指導しています。

 もちろん、これはソニーさんやパナソニックさんのような会社なら、普通にやっていることです。でも、世界で見ると相当高い基準ともいえますし、これは世界に誇れるものです。日本の製品は壊れにくいという評判にもつながっています。逆に、世界の工場からすると、なぜそこまでするのかと思われるかもしれません。そこが我々のこだわりたかったところです。

 フレキシビリティに関しては、キャリアさんのような2年間の契約は一切ありません。PCと同じで、1カ月で止めようが、2年使い続けようが、お客さんの自由です。使うSIMカードによっては縛りもあるかもしれませんが、端末としては制約を設けていません。

 お陰さまで、1万数千台のロットは完売しました。次の端末が出てくるのは、そのためです。

 今のスマートフォンはCPUがクアッドコアで、ROM(ストレージ)も16Gバイトや32Gバイトが当たり前です。メモリも2Gバイト、3Gバイトとどんどん増え、解像度もフルHDを超えてしまいました。そうした端末と比べればスペックは低いですが、Androidの何かを制限しているわけではりません。Android 4.1がそのまま動く、スペックシートのままの端末です。

freetelのメイン層は30〜40代の主婦やお父さん

―― freetelの初号機は、継続販売しないのでしょうか。

大仲氏 9800円のfreetel Prioriが、同じスペックの端末です。アクセサリー類がfreetelとは違って、こちらの方が少し安くなっています。

―― なるほど。装いを変えて継続販売するということですね。ちなみに、初号機はどのような層の人が買っていたのでしょうか。

大仲氏 最初に飛びついたのは、やはりITに詳しい方です。ですが、今のメイン層は30〜40代の主婦やお父さんですね。先ほど申し上げた(モデルケースのように)独身ではなくなり、ちょうど子供が生まれたぐらいの方々です。

 あとは、シニアの方が夫婦で初めてスマートフォンを持つというときに買われています。

―― SIMカードとのセットでも販売していますが、どちらの比率が高いのでしょうか。

photo freetelのスマートフォンはテザリングも利用できる

大仲氏 端末単体とSIMカードのセット販売、両方を提供していますが、セットで買う方の方が多いですね。個人の方は電話として買うことも多いですし、テザリング用のルーター代わりにする人もいます。また、デュアルSIMという特徴もあるので、出張に行かれる方が買うケースもあります。

―― 日本と現地のSIMカードの両方を挿して使うわけですね。

大仲氏 その方がおトクですからね。例えば、ハワイに5日間行くとしましょう。このとき、自分の持っている端末で国際ローミングを使うと、5日間で約1万5000円かかります。この端末を1万2190円で買って、20〜30ドルのプリペイドSIMカードを挿せば、国際ローミングと同じ1万5000円で端末まで手に入ることになります。

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