2015年のARROWS→arrowsを振り返る メインにできないAndroidケータイITmediaスタッフが選ぶ、2015年の“注目端末&トピック”(編集部せう編)

» 2015年12月30日 18時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 ITmedia Mobileをよくご覧の皆さまならお気付きかもしれないが、筆者は2015年4月から編集部の「半・中の人」となった。それもあって、いろいろな端末・サービスに触れる機会が今までの比ではないほどに増えた。それだけにいろいろと思うところも増えた。とりあえず2015年を振り返ってみようと思う。

ARROWSからarrowsへ――新たな挑戦をし始めた富士通 しかし……

 4月から編集部に入った筆者だが、“ARROWSジャーナリスト”、9月30からは“arrowsジャーナリスト”と呼ばれるほどに、メインスマホが一貫してarrowsであることは変わりない。そんな筆者の目から見た2015年のハイスペックなarrowsはどうだったのだろうか。

 夏モデルの「ARROWS NX F-04G」は、世界で初めての虹彩認証に対応するスマホとして登場した。「富士通といえば指紋認証」というイメージが強い筆者としては、最初は虹彩認証に懐疑的な面もあった。しかし、実際に使ってみると、認証速度の速さが手放せないものになってしまった。

 構造上、真夏の炎天下で認証が困難であることが問題だが、Android 5.0以降のOS標準機能である「Smart Lock」でロック解除認証を省略することで乗り切れた。Android Wear万歳、Bluetooth 4.0万歳、Android 5.0万歳、である。

 しかし、F-04Gには大きな“問題”が2つ発生した。1つは発熱問題だ。夏場は、発熱警告と機能制限に悩まされた。ARROWSスマホは、本体の発熱問題とともに歩んできた「歴史」がある。2013年の夏モデル「ARROWS NX F-06E」以降、歴史を打破できそうなところまで来たはずなのに、F-04Gで“逆戻り”してしまった感がある。ただし、F-04Gと同じ「Snapdragon 810」を採用した他社スマホでも、同様の発熱問題が発生しているため、この点で富士通だけを責めるのは筋違いだろう。

 もう1つの問題は、基板が接続不良を起こすという不具合だ。

 諸事情あって、筆者はF-04Gを2台持っている。そのうち1台は、販売停止前に入手したものだが、幸いなことにこの不具合は発生しなかった。関係者の話を総合すると、この不具合は特定のロットに集中していたようで、幸いなことに、筆者の1台はそこから外れたものだったようだ。とはいえ、この不具合を出荷前の段階で把握できなかったのは富士通の“手落ち”であることは明らかで、責められても仕方がない。

ARROWS NX F-04G 虹彩認証の便利さを教えてくれた「ARROWS NX F-04G」。2015年のハイエンド端末の“トレンド”通り、熱くなりやすい機種だった。写真はの私物の2台で、1台目(左)は販売一時停止前に入手したもの

 それを反省してか、2015年冬モデルとして登場した「arrows NX F-02H」は、プロセッサを「Snapdragon 808」に変更した。フラッグシップモデルとしては異例の“スペックダウン”を敢行している。

 しかし、実際にベンチマークテストをすると、F-02Hの方が全体結果が数値上良好だ。体感上の動作速度も改善している。これは、富士通が「NX!Tune」と呼ぶ、システムの徹底的な最適化による効果だ。スペックダウンしながらも全体的な操作性を向上させたところに、富士通の技術力の一端を感じた。F-04Gの段階でSnapdragon 808を搭載し、NX!Tuneを搭載できていたら、間違いなく富士通の評価はより高まったのだろうと思うと、いろいろ残念に思わなくもない。

arrows NX F-02H 「arrows NX F-02H」は、F-04Gよりサイズアップした代わりに薄くなった。スペックダウンしたことも隠れた注目点
F-04Gのベンチマーク結果F-02Hのベンチマーク結果 F-04G(写真=左)とF-02H(写真=右)の「Antutu Benchmark」の結果。スペックダウンしたはずのF-02Hの方が全体結果は良好

 arrowsといえば、久々にキャリア向けに「arrows Fit F-01H」というハイエンド“ではない”モデルが登場したことにも注目したい。NTTドコモが2015年夏商戦から強化しているミドルレンジモデルの1つで、一括販売価格が6万円弱とキャリア向けスマホとして安価に設定されていながら、防水・防じん・耐衝撃性を確保し、「スマート指紋センサー」「マルチコネクション」や、5GHz帯の無線LAN(Wi-Fi)など、ハイエンドモデル向けの機能も搭載している。

 さらに、この機種をベースに3万円弱〜4万円弱の実売価格を実現したSIMロックフリースマホ「arrows M02」も登場した。スマート指紋センサー、5GHz帯の無線LAN対応、microSDXC対応は省略されているが、防水・防じん・耐衝撃性はそのままで、ベース機種にはない「高速ダウンロード」機能を備えている。VoLTEによる高音質通話やおサイフケータイが使えることも大きな注目点だ。

 ARROWS改めarrowsは、「人を想えば、進化はとまらない。」をキャッチフレーズに、ユーザーが心地よく使えることを目指すという。コスト面で使いやすさにつながる機能が省略されやすいミドルレンジのスマホに、ハイエンドスマホで培った使いやすさにつながる機能を落とし込んだことは、評価に値するだろう。2016年も、arrowsスマホはより使いやすいことを徹底的に追求してほしい。

arrows Fit F-01Hとarrows M02 arrowsとしては久々のミドルレンジモデルとなる「arrows Fit F-01H」(左)と「arrows M02」(右)。価格を抑えつつ、ハイエンドモデルの機能を厳選して搭載している

ハイスペック至上主義からの脱却――“最上位”必須ではなくなったスマホ

 フィーチャーフォン(ケータイ)の頃から、日本のキャリアが発売する端末はハイエンドに偏ってきた。理由は単純で、型落ちした前シーズンのハイエンド端末をミドルレンジ端末のような扱いで販売してきたからだ。最新のチップを積んだミドルレンジモデルよりも、前シーズンの型落ちハイスペックモデルの方が性能が良くて快適に使えるのなら、どちらを選ぶか、といえば多くの人は「型落ち」を選ぶのは当然で、それがハイエンド偏重につながったのだ。

 しかし、ハイスペックモデルの価格が高騰し、プロセッサの性能アップが一巡してきたことによって、より安価なミドルレンジスマホが大きな注目を集めるようになった。その象徴的な存在が、「AQUOS EVER SH-04G」だろう。

 SH-04Gは、防水、赤外線通信やおサイフケータイといった国内市場でニーズの大きい機能を搭載しつつ、プロセッサ、液晶や通信まわりのスペックを抑えることで、従来のキャリアスマホよりも低廉な価格を実現した。ケータイからの乗り換えユーザーが懸念する価格面での課題に真摯(しんし)に取り組んだ、マイルストーンともいえるモデルだ。

 発表当初、筆者は「これなら型落ちの2014年冬モデルを買う人が多いのではないか?」とも思っていたのだが、ふたを開けてみると、機種変更・契約変更時の月々サポートを新規・MNP(携帯電話番号ポータビリティ)時よりも手厚くするという戦略が奏功して2015年夏の人気機種の1つとなった。

AQUOS EVER SH-04G ミドルレンジスマホブームのきっかけとなった「AQUOS EVER SH-04G」

 一方、ミドルレンジ旋風は、SIMロックフリースマホにもプラスに働いた。Huaweiの「P8lite」は価格と性能の絶妙なバランスで大きな人気を集めた。FREETELの「SAMURAI 雅(MIYABI)」も、同様の理由で一時的に入手困難になるほどの人気を集めた。

 「LINE」「Twitter」「Facebook」など、コミュニケーションツールとしてスマホを利用したいユーザーにとっては、ハイスペック端末はオーバースペックな面がある。一方で、エントリーモデルだとカメラ性能やストレージ容量に不安があることも事実だ。その中間を埋める、「何をしてもおおむね快適」なミドルレンジスマホ。格安SIM(MVNOサービス)の普及と合わせて、2016年もより広がりを見せると思われる。ようやく、ハイエンドからローエンドまで、ユーザーのニーズに合わせてスマホを選べる時代がやってきそうだ。

P8liteSAMURAI 雅(MIYABI) Huaweiの「P8lite」(写真=左)やFREETELの「SAMURAI 雅」(写真=右)が、SIMロックフリーのミドルレンジスマホの中では人気に

なぜ「去勢」してしまうのか――Androidケータイが「スマート」ではない件

 筆者のメイン携帯電話(一番利用期間の長い契約)は、2014年に買い換えた「F-07F」だった。これを逃したら、従来のケータイを買えなくなる“予感”がしたからだ。

 2015年、その予感は徐々に現実のものとなってくる。まず、1月にKDDI(au)が、Androidスマホをベースとする「AQUOS K SHF31」を発表した。

 SHF31は、LTE通信、テザリングを含むWi-Fi通信、スマホ向けのリッチなWebサイト閲覧、LINEへのほぼ完全な対応など、スマホベースであることのメリットを最大限生かして登場した。しかし、タッチパネルを搭載しないことなどから、あえて「Google Play」を搭載せず、世にたくさんあるAndroidアプリをそのまま使えない、という問題点もある。もっとも、「auスマートパス」に加入すればテンキーに最適化したアプリをダウンロードできるのだが、非加入の場合はアプリ追加が事実上できない。

 KDDIは、SHF31をVoLTE対応にした「AQUOS K SHF32」を7月に発売したが、アプリまわりの問題は解決しなかった。

AQUOS K SHF31 Androidケータイの先駆けとなった「AQUOS K SHF31」。アプリ追加における制約がなければ間違いなく買っていた

 Androidスマホベースのケータイは、他キャリアでも登場した。ドコモは夏商戦で「ARROWSケータイ F-05G」と「AQUOSケータイ SH-06G」を、ソフトバンクは冬商戦で「AQUOSケータイ」をそれぞれ発売した。2016年春商戦では、ソフトバンクはVoLTE対応の「DIGNOケータイ」を投入する予定だ。

 いずれの機種も、KDDIのAQUOS Kと同じくスマホ向けのリッチなWebサイト閲覧、LINEへのほぼ完全な対応を果たしている。しかし、DIGNOケータイ以外の機種は3Gのみとなっている。また、全機種ともにテザリングやアプリの追加に対応していない。機能的に「去勢」された結果、従来のケータイよりも全体的な機能面で劣り、「スマート」ではなくなったことは否定できない。

ARROWSケータイ F-05G ドコモの「ARROWSケータイ F-05G」は、ドコモ初のAndroidケータイとして登場。筆者も入手して使ったが、すぐにF-07Fにメインを戻してしまった……。

 別にスマホ・タブレットを持っていれば「去勢」された部分も気にならないかもしれないが、筆者のようにあくまで「1台」でことが済むケータイが欲しい人にとっては、非常に見劣りする。筆者は、メイン携帯電話をF-05Gに機種変更して使ってみたが、「これなら、機能制約のないスマホのほうがよっぽどスマート」と思ってしまった。「ケータイの方がよっぽどスマート」と言えない、Androidケータイの現状が残念で仕方ない。

 ケータイ的な使い勝手を完全に実現した、スマホとも張り合えるスペックのAndroidケータイなんていうのは、夢のまた夢なのだろうか……?

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