NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3キャリアが発売する2010年度冬春モデルのスマートフォンには、日本ならではの機能やサービスに対応したモデルが含まれているのが大きなトピックだ。中でも「おサイフケータイ」の対応にメリットを感じているユーザーは多いだろう。おサイフケータイに対応したスマートフォンの1号機として、11月26日にauの「IS03」が発売される。
ただし、IS03を購入してすぐにおサイフケータイのサービスを利用できるわけではない。最も早く利用できる電子マネー系のサービスは、11月下旬に対応予定の「モバイルWAON」。そのほかは、Edyが2011年1月、nanacoが2011年中、モバイルSuicaが2011年度上期、QUICPayが2011年3月以降、ドコモの「iD」が2011年2月以降となっており、スマートフォンへの対応がまだ進んでいないのは明白だ。特にモバイルSuicaの対応は「2011年度上期」なので、うがった見方をすれば、2011年9月下旬まで提供されない可能性もある。
「ケータイにおサイフケータイは欠かせない」という人は、スマートフォンの購入はもう少し待った方がいい感もあるが、一方で気になるのが、「おサイフケータイはSIMカードなしでも利用できるのか」という点。SIMカードは電話番号情報が保存されたICカードで、携帯電話で通話や通信をする際に必要になる。ドコモ向けには「FOMAカード」、au向けには「au ICカード」、ソフトバンク向けには「USIMカード」が提供されている。
SIMカードを抜いた際の動作は端末によって異なるが、カメラやワンセグ、無線LANなど3G通信を必要としない機能については、SIMカードなしでも利用できる場合が多い。おサイフケータイがSIMカードなしでも使えれば、スマートフォンがおサイフケータイのサービスに完全対応するまでは、SIMなしの旧機種と2台持ちして使い分けることが可能になる。スマートフォンと旧機種でSIMカードを差し替えて使うという手もあるが、おサイフケータイは日常的に使うものなので、現実的ではない。
というわけで、筆者がおサイフケータイに使っている「W61S」からau ICカードを抜いて試してみた。まずはセブン-イレブンで利用できるnanaco。店頭でのチャージ(入金)と支払いのどちらも、SIMなしの状態で成功した。続いて東京メトロの改札でモバイルSuicaを試したところ、問題なく通過できた。
これはauケータイ共通の仕様なのか、それとも機種やサービスによって異なるのか……KDDI広報部に確認したところ、通信を必要としない機能については、どの機種もau ICカードなしで利用できるとのこと。ただし端末にau ICカードを装着していないとアプリが起動しないので、残高の確認やオンラインチャージなどは当然できない。また、クーポンとして使える「マクドナルドトクするアプリ」など、利用時にアプリの起動が必要なサービスもSIMなしでは使えない。リーダーライターにかざして支払ったり、店頭で電子マネーをチャージしたりといったことは可能だ。オンラインチャージなど通信をする際は、当然SIMカードを差し替える必要がある。
ではドコモとソフトバンクはどうか。ドコモのおサイフケータイは、2006年冬モデルの903iシリーズでFeliCaチップのバージョンが上がっている。同社広報部によると、この新バージョンのFeliCaチップ(Version 2.0)を搭載した903i以降のモデルでは、FOMAカードなしではおサイフケータイのいっさいの機能を利用できないとのこと。ドコモの現行モデルは残念ながら、SIMなしではおサイフケータイを利用できないと考えた方がよさそうだ。ソフトバンク端末についてはauと同じく、USIMカードを抜いた状態でも支払いや店頭でのチャージなどは可能だ。
ドコモの一部ユーザーにとっては残念な仕様といえるが、ケータイからおサイフケータイ対応のスマートフォンへの機種変更を考えているそのほかのユーザーには朗報といえそうだ。
なお、バッテリーパックを外した状態だと、FeliCaチップに電源が供給されないので、おサイフケータイの利用時にはバッテリーパックを装着しておく必要がある。また、SIMカードが挿入されていないと通信ができないので、設定した番号から電話をかけてFeliCaを含む端末の機能をロックする「遠隔ロック」も利用できない。電子マネーがチャージされた状態でケータイを紛失すると、第三者に使われてしまう恐れがあるので、SIMなしで利用する際は特に注意したい。
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