紙ではなく“手帳”を再発明――「GALAXY Note」が開く新しい1ページ(前編)開発陣に聞く「GALAXY Note」(2/2 ページ)

» 2012年04月11日 17時35分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
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 GALAXY Noteのペン入力で目指したのは、本物の紙に書いたような感覚をデジタルデバイスで再現するというハイレベルなもの。そこで採用されたのが、日本のワコムが持つ電子ペンの技術だった。Samsung電子では詳しい説明を避けたが、おそらくワコムの「ペナブルテクノロジー」が用いられているとみられる。GALAXY Noteに付属するSペンは電源が不要で、軸にあるスイッチを押すことで、アプリの呼び出しやスクリーンショットの実行など、機能的な操作も行える。

photo キム・ジョンイン氏と、同じくSamsung電子 常務のキム・ソンシン氏

 採用の決め手についてSamsung電子常務で日本向け営業を担当するキム・ソンシン氏は、「ワコムの技術は業界でも定評があり、競争力も高い」と話す。しかし、「GALAXY Noteはワコムによる(電子ペンの)技術革新で実現できた製品だが、その技術を端末に実装するには独自のデバイスや技術が必要だった。それには過去の経験からのフィードバックが欠かせなかった」(キム・ソンシン氏)とも付け加えた。

 過去の経験とは、フィーチャーフォンでありながらフルタッチ入力の先駆けとなった「OMNIA」シリーズや、Windows Mobile端末を開発してきた経験だ。これらは感圧式のパネルが使われており比較的簡単に実装できたが、その反面ユーザーインタフェースを自然なものにするには相当な時間がかかったという。キム・ジョンイン氏は「あの頃は感圧式で苦しかった」と、当時の苦労を忍ばせる。その感圧式タッチパネルで培った経験と、静電式タッチパネルを採用したAndroid端末の開発で得たノウハウが、GALAXY Noteで再び生かされることとなった。

“Note”という新ジャンルの製品

photo

 GALAXY Noteの製品名も、比較的早くから「Note」に決まったという。「デジタル機器だけど、アナログな紙の手帳のように使える。Noteという製品名は“デジログ”を具現化する名前。企画段階では無数の製品名が提案されたが、スタッフは皆早くからNote、Noteと呼ぶようになった」(キム・ジョンイン氏)

 Note以外の製品候補には「“diary”という候補もあった」(キム・ソンシン氏)というが、単なる製品名でなく新カテゴリーを生み出す意味でもNoteが選ばれた。ここに、“新しいセグメントを作る”という意気込みが見て取れる。また宣伝活動で使われる、コミュニケーションメッセージも「Phone? Tablet? Feel Free It's Galaxy Note!」と、スマートフォンでも、タブレットでもない新カテゴリーであることを強調。キム・ジョンイン氏は、「カテゴリーの開拓は早い者勝ち。製品のネーミングで、新カテゴリーを確立させた。GALAXY Noteは、スマートフォンでも、タブレットでもない。ノートという新しいモバイルデバイスの製品だ」と自信を見せる。

photo 「S choice」

 だが、課題がないわけではない。単にハードウェアを用意するだけでは、簡単に競合にキャッチアップされてしまうのがスマートデバイス市場の常。Samsung電子ではSペンに対応するアプリを数多く供給することでエコシステムの構築を目指し、差別化を強化する考えだ。

 「Sペン対応のアプリはGALAXY Noteの生命線。新しいカテゴリーの製品を活用してもらうため、『S choice』というSペン対応アプリのマーケットを用意した。現在の登録アプリは65点ほどだが、今後より多くのアプリを供給するのが我々の宿題。そのため、Sペンアプリを開発するSDKを公開し、開発者のためのサポート部隊も設立した。各国のアプリベンダーには、ぜひSペンを使ったさまざまなアプリを開発してほしい」(キム・ジョンイン氏)

 また、Sペンを用いるデバイスのバリエーション展開も気になるところ。いかにGALAXY Noteが持ちやすいデザインとはいえ、5.3インチのディスプレイが大ぶりなことに変わりはない。例えば、4インチクラスのディスプレイを搭載したGALAXY Noteが登場する可能性はあるのだろうか。

 キム・ジョンイン氏は「(GALAXY Noteは)すべてのユーザーに受け入れてもらえるような、100%の製品ではない。片手では持て余すという問題には、今後も取り組んでいかないといけない」と大きさゆえの問題を認めるものの、「ほかのサイズへの展開は、市場の反応を見ながら決めたい」と慎重だ。10.1インチのタブレットサイズは発表済みだが、「5インチの成功を受け、10.1インチのタブレットでも可能性があるのか拡大してみた」とのことで、バリエーション展開はまだまだ手探りという印象だった。

photo Mobile World Congress 2012で発表された「GALAXY Note 10.1」

 Samsung電子としては、サイズのバリエーション以前にSペン自体をさらに進化させるかを課題にしているという。「製品の差別化はSペンだけではないが、ペン入力を今後どう展開するのかは悩んでいる。例えば現在のペンはボディに収納させるため、サイズが小さくなっている。これでは力が入りすぎるかもしれない。こうした点は改善していく必要がある」(キム・ジョンイン氏)

 またAndroid以外のOS、例えばSamsung電子が開発した「Bada OS」や、米Microsoftの「Windows Phone」を搭載したデバイスをSペンに対応させることは、明確に否定した。

 開発者インタビューの後編では、端末デザインの詳細や国内向けモデルの開発について、また、GALAXY Noteの普及でビジネスシーンに変化が見られたことなどをご紹介したい。

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