今なぜ「いつでもお遍路」なのか――KDDIとカヤックが生み出した“新しいお遍路の形”(3/3 ページ)

» 2012年06月05日 00時00分 公開
[園部修,ITmedia]
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洒落が効いた、新しいお遍路

 完成したアプリは、前田氏を始めとするコンシューマ四国支社の人達にも好評だった。近年四国4県では、四国八十八カ所霊場と遍路道の世界遺産登録を目指す動きも出ており、現地での関心も高まっている。

 前田氏は「このアプリでお遍路が面白いと感じたら、夏休みに四国に行って、お寺を回ってみようかな、と思っていただけたらうれしいです」と話す。四国に興味を持ってもらって、観光に行こうと考える人が増えれば、アプリによる地域貢献につながる。またKDDIがお遍路に対して面白い取り組みをしている、ということが広く伝われば、地域でのKDDIの存在感も大きくなる。

 そんな前田氏自身は、四国の出身ではない。だが四国に配属されて長く、東京や大阪から転勤してくる人が、お遍路に行きたいというので案内するようなことも多い。そんな軽いノリでお寺を巡るときにも、地元の方に「お接待」としてお茶や食べ物をいただき、優しさに触れたことが強く思い出に残っているそうだ。

 「ああいうことを経験すると、四国はいいところだなと思います。ですから、ほかの人にもぜひ知っていただきたいと思いました。また四国は九州などと比べて観光名所が多くないのですが、そんな中でお遍路が何かのきっかけになればと思っています」(前田氏)

 今後はいつでもお遍路をうまくプロモーションに生かすことで、ユーザーの来店誘引につなげたり、auショップでのキャンペーンを展開したり、イベントで告知をしたりと、さまざまな施策を実施するきっかけにしたいという。

 竹村氏も、「純粋に要求書通りに作っていただいたというよりも、プラスアルファでいいものにしていただいた。カヤックさんでなければこれはできなかっただろうと思います」と満足げだ。「ぜひ、上級コースの終盤まで進まないと出てこないアバターを、頑張って出してください」と笑った。

 アプリの制作が佳境に入った、最後の2カ月ほどこのプロジェクトに関わったというKDDI 新規ビジネス推進本部 事業開発部 アライアンスビジネスグループの内藤弘行氏も、このいつでもお遍路がWebメディアやテレビで紹介されて一気にユーザーに広まったことに興奮を覚えたという。記事に対するTwitterの反応もおおむね好意的で、ダウンロード数も予想以上だったことから、こうしたアプリの展開に手応えを感じた様子だ。「アプリの出来がよかったので、ウケるだろうとは思っていましたが、実際にさまざまな場所の反響を見ていて、世の中が動いているのを感じ、本当に興奮しました」(内藤氏)

 アプリの配信が始まる少し前、4月にプロジェクトに加わった同じく新規ビジネス推進本部 事業開発部 アライアンスビジネスグループの井上嘉子氏は、もともと「形のあるものを作りたい」という希望で現在の部署に異動してきた。その直後にいつでもお遍路に関われたことは、貴重な経験だったという。ちなみに5月1日のプレスリリースの文面を作ったのは井上氏だ。多くのメンバーの熱い思いが込められたアプリの立ち上げに関わった感動から、「今後もさまざまなアプリの開発に携わっていきたい」と話した。

地域貢献の新しい形?

 多くのスマートフォンユーザーは、「いつでもどこかでお遍路がしたい」とは思っていない。しかし、すでにいつでもお遍路は数千人のユーザーにダウンロードされている。綿引氏は「ユーザーニーズからではない、面白いアプリが作れたと思います」と胸を張った。なんだろうこれ、と思ってもらい、ダウンロードして楽しんでもらえればそれでいいという。

 最初は地域での収益向上を目的に企画されたアプリだったが、結果的にはユーザーがどこでも楽しめる、面白いアプリという形で結実した。地域への貢献という意味では、理想的な形と言えそうだ。

 これからも、地域に根ざした文化や伝統をモチーフにした、ユニークなアプリがKDDIから登場するかもしれない。

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