ドコモは震災から何を学んだのか――ドコモ東北支社 荒木裕二支社長に聞く神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2013年03月13日 00時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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誰も経験していないスマートフォン時代の大震災

―― 逆に東日本大震災の時と異なる新たな問題や課題はありますか。

荒木氏 スマートフォンですね。東日本大震災当時はまだスマートフォンの普及初期で、特に東北地方ではフィーチャーフォンが圧倒的な主流でした。しかし今では端末販売の半分以上がスマートフォンになっています。実はこの“スマートフォン時代の大震災”については、誰も経験していないのです。

―― 一般的にスマートフォンはフィーチャーフォンよりも大量のトラフィックを発生させます。また、LINEやTwitter、Facebookなどキャリアの管轄外のサービス利用が増える中で、大規模災害時のトラフィック抑制がどこまでできるかが課題になりそうですね。

荒木氏 ええ。SNSなど他社のサービスも含めて、災害時の(スマートフォンの)トラフィックをどう制御するのか。ここは通信キャリア同士だけでなく、LINEなど他のサービス提供事業者も含めて話し合っていかなければなりません。

―― ドコモが率先して、事業者間の連絡協議会を設立するなどの考えはないのでしょうか。

荒木氏 民間会社同士だけだと、難しい部分もあるかもしれませんね。そこはドコモが主導権を握るとかではなく、(防災に)関連する省庁や大学の有識者なども交えて、災害時のトラフィック制御について話し合っていくのがよいでしょう。

 また、災害発生時で考えますと、(フィーチャーフォンより大きな)スマートフォンの消費電力をどうするか、なども考えなければなりません。スマートフォンの方が端末のバッテリー切れ問題が大きいわけですね。スマートフォン時代における新たな災害対策をどうするかは、まさに今年(2013年)から真剣に議論していきます。

―― ドコモは全社的に東北地域の復興に注力しており、その中でもドコモ東北支社は“地域密着”で復興支援を行っています。ドコモ東北として今後どのような役割をこの地域で担っていきたいのか。その点についてお聞かせください。

荒木氏 ドコモ東北が担う役割は何かといいますと、「(3.11を)風化させない」ことだと思っています。東日本大震災の経験を、次に大震災が起こるかもしれない別の地域に伝えていく。インフラ事業者として、我々が得た経験や教訓を広げていくことが大切です。それをしっかりと続けていきたいです。

PhotoPhoto NTTドコモ東北支社には、震災の記憶を風化させないための「震災記録資料室」が設けられており、左の写真のような、震災で断線した中継用光ファイバーなどを展示している。右は震災後のインフラ復旧で用いられた中継用の高速光無線システム。震災当時は、マイクロ波エントランスをはじめ、様々な非常用設備がフル動員されたという。ドコモの「備え」が生かされて、迅速なインフラ復旧につながった
PhotoPhoto 左は津波で倒壊した基地局設備。右は福島第一原子力発電所付近の基地局復旧時に使われたものと同じ型の放射能防護服
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