ドコモ、ソフトバンク、KDDI――三者三様の株主総会で見えたもの石野純也のMobile Eye(6月10日〜22日)(1/3 ページ)

» 2013年06月22日 10時36分 公開
[石野純也,ITmedia]

 6月18日のNTTドコモを皮切りに、19日にはKDDIが、21日にはソフトバンクが株主総会を行った。株主総会は、取締役の選任や定款の変更を承認する場だが、経営の現状や将来に向けた取り組みを株主に説明するのも重要な役割だ。この中で、ドコモは冬モデルについての方針の一部を、ソフトバンクはイー・モバイルやウィルコムとの通話料を無料することを発表している。そこで今回の連載では、6月10日から21日の2週間を対象に、3社の株主総会で明らかになったニュースをピックアップする形でまとめていきたい。

ツートップが好調なドコモ、冬モデルでは“3日使える”モデルも

 18日に開催されたドコモの株主総会では“ツートップ”の実績や、今後の端末、サービスの一端が垣間見えた。夏モデルでは「Xperia A SO-04E」や「GALAXY S4 SC-04E」をツートップとして強力に推しているドコモ。両機種とも、プロモーションの量を増やし、「ありがとう10年スマホ割」と「はじめてスマホ割」を適用すると、合計で最大2万160円の月々サポートを増額する施策を行っている。端末の本体価格がほかの機種と比べ割高なため、必ずしもすべてのユーザーがお得になるわけではないが、販売は好調だ。

photophoto ドコモの株主総会は、議長を代表取締役社長、加藤薫氏が務めた(写真=左)。ツートップや、13年度の販売目標が紹介された。「Xperia A」と「GALAXY S4」は、どちらも販売好調だという(写真=右)

 ドコモ代表取締役社長、加藤薫氏によると「Xperia Aは約64万台を販売した。それより期間は少し短いが、GALAXY S4は32万台になっている」という。ツートップとして優遇されていたとはいえ、Xperia Aの1カ月で約64万台という数字は異例の売れ行きといえる。ドコモは、4月の決算会見で、同じソニーモバイル製のスマートフォン「Xperia Z SO-02E」が、約2カ月半で63万台を販売したことを明らかにしている。販売施策が異なる点には注意が必要だが、この数値を元にすると、Xperia Aの売れ行きは好調だったXperia Zの2倍以上のペースということが分かる。

photo 1カ月で約64万台を販売した「Xperia A」。5月17日の発売以来、ランキングのトップをキープしている

 スペックこそXperia Zより抑え目だが、手に持ったときのフィット感やカラーバリエーション、そして何よりも2年間使えば実質価格が5000円台になる値ごろ感などが、フィーチャーフォンからの買い替えを検討するユーザーに評価されているようだ。ドコモの加藤社長は発表会時に100万台という目標を明かしていたが、この数字も上ブレする可能性が高い。

 ツートップのもう1機種であるGALAXY S4は、32万台を販売した。数値の上ではXperia Aの半分だが、上記のXperia Zにペースは近い。ちなみに、1年前の夏モデルである「GALAXY S III SC-06D」は、販売開始から約1カ月で34万台の販売数を記録している。GALAXY S IIIは最終的に100万台を超えるヒットモデルになったが、このままのペースを維持できれば、S4も同様の結果を残すことができそうだ。

photo 5月23日に発売された「GALAXY S4」は、1カ月経たずに34万台を販売

 2012年の夏は、Qualcommのチップセットの供給が不足し、多くのフラッグシップモデルが慢性的に在庫切れを起こしていた。そうした中、グローバルメーカーで優先的にチップセットを確保できたSamsung電子が、途切れず店頭に端末を送り込めていたという事情もある。一方で、スマートフォン市場が2012年よりも拡大している中で、GALAXY S4はS IIIよりも販売数が伸びていないという見方もできる。

 このように、実績を見るとツートップ戦略は一定の成功を収めていることが分かる。ただ、株主から「日本メーカーと頑張ってほしい」という要望が挙がっていたように、メーカーを絞って宣伝や価格に差をつける手法には疑問の声も少なくない。実際、ツートップに選出されなかったメーカーからも、不満が漏れ聞こえてくる。

 ドコモの代表取締役副社長 岩崎文夫氏は「今回のツートップでベンダーを選別したわけではない。メーカーさんからお客様に受け入れやすい、商品力が高い端末の提案を期待してる。国内外問わず、いいものをオススメしたい」と述べていたが、ツートップの基準はもう少し明確にした方がユーザーも納得できるはずだ。また、買いたいと思った端末の価格がツートップより高いと、ユーザーの不満につながる可能性もある。一部のモデルに売れ行きが集中した結果、ラインアップの幅が狭くなってしまっては本末転倒だ。ドコモには、バランスのいい舵取りを期待したい。

 株主総会では、「電池の持ちをもっとよくしてほしい」という質問に答える形で、冬モデルの計画も明らかになった。加藤氏は「冬モデルでは3日持たないかと、日々開発を続けている」と話し、夏モデルに続き、バッテリーの持ちを伸ばしていくことを明かした。

 このほか、株主からはフィーチャーフォンに搭載されていた2つの電話番号、メールアドレスを1枚のSIMカードで切り替えながら使える「2in1」を、スマートフォンに移植してほしいという要望も挙がった。2in1については、関西支社長(株主総会時点では取締役 執行役員 マーケティング部長)の永田清人氏が「今のスマートフォン、例えばAndroidでは、技術的にすぐできる状態ではない。ただ、スマートフォン上、ネットワーク上、そのほかの方法で、複数の電話番号やメールアドレスを扱うサービスは検討している」とコメントしている。フィーチャーフォンとは別の形になる可能性もあるが、サービス自体はドコモ内でも検討されているようだ。例えば、中国などで一般的になりつつある、SIMカードを端末に2枚挿す「デュアルSIM」方式であれば、2in1に近い使い勝手を実現できるかもしれない。

photophotophoto 製品発表会や決算会見で発表されていた戦略が、あらためて株主に解説された。LTEの基地局拡充や、「おすすめパック」を初めとする新サービス、dマーケットの取り組みなどが主なトピックだ
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