MNO3社の料金が横並びになる中、選択肢の1つとして注目しておきたいのは格安SIMを提供しているMVNOだ。2014年に入り、徐々に音声通話対応プランを発表するMVNOも増え、MNOからMNPで電話番号を移すことも可能になっている。
こうした状況の中、ビッグローブは7月1日に「BIGLOBE LTE・3G」にて音声通話への対応を開始した。ビッグローブは他社に先駆けて1Gバイト、980円の料金プランを打ち出すなど、MVNOをけん引する1社になっている。新たに始まった「音声通話スタートプラン」は、1Gバイトのデータ通信とセットとなり、価格は1600円。データ量に応じてほかのプランを選ぶことも可能だ。データ量が2Gバイトの「ライトSプラン」は2405円、3Gバイトの「ライトMプラン」は3738円、7Gバイトの「スタンダードプラン」は4690円となっている。
ビッグローブの代表取締役社長 古関義幸氏は、「正直、たくさん電話をかける方にはキャリア(MNO)の2700円は非常に魅力的」としつつも、「2700円を超えて電話をかける方がどのくらいいるのかは疑問」だと語る。BIGLOBEの音声通話対応プランは、通話料が30秒20円とやや高いが、古関氏が「IP電話があれば電話がなくてもいいと(データのみのプランを)始めたが、そういう方でも電話は受けたい」と語るように、基本的には待受け中心の使い方をするユーザーを想定しているようだ。
料金設定はMNOの旧料金プランと同じで、データ通信は割安となれば、MVNOへの移行を考えるユーザーも増えるかもしれない。現時点では新料金プランへの移行は強制されておらず、KDDIのみ現行プランの新規受付終了の予定はないというが、新端末の購入時に割引を受ける条件にして、新料金プランへ誘導する可能性は十分ある。そのようなときに、MVNOの料金プランは魅力的だ。ある程度電話を使うユーザーでも、「楽天でんわ」や「G-Call」のようなサービスを活用すれば、通話料を割安に抑えることが可能だ。
とはいえ、SIMカードだけを買って別に用意した端末に挿すというのは、まだまだ一般ユーザーにとってハードルが高いのも事実。こうした中、ビッグローブは「端末」で差別化を図っている。音声通話スタートプランには、同社が以前から提供していた「AQUOS PHONE SH90B」とセットになったプランもあり、料金は月額3476円。端末の支払いが終わった25か月目以降は、音声通話スタートプランのみとなり1600円になる。
また、さらに月額料金を抑えられる端末も用意した。9月にはLGエレクトロニクス製の「G2 mini」が発売される。こちらの端末はドコモが2013年秋発売した「G2」のコンパクト版で、「G2 miniはそこまでいかないと思う」(古関氏)というように、より安価になることが示唆されている。ディスプレイ解像度が540×960ピクセルだったり、CPUがミッドレンジ向けのSnapdragon 400だったりと、スペック的は最新のハイエンドモデルより劣っているが、その分、サイズと価格を抑えたという位置づけだ。
一方で、MNPを前提に考えると、MVNOならはのサポートの手薄さが課題として浮き上がる。音声通話対応のSIMは、不正利用の防止という観点から、厳格な本人確認が義務付けられている。そのため、店舗を持たない多くのMVNOでは、SIMカードが後日郵送される形となっている。例外として、IIJがビックカメラ有楽町店にカウンターを設け、即時引き渡しを可能にしたり、フリービットのように少ないながらも店舗を持っている場合はあるが、そのようなケースを除くとすべて郵送での対応となる。
古関氏も「リアルショップを持っていないので、値段を安くできている」と述べているが、メインで使っていた電話番号をMNPで移そうとすると、電話が使えない期間が2〜3日発生してしまうのはMNPを利用する際の高いハードルといえるだろう。競争を促進するという観点では、規制を緩めるか、MVNO自体が本人確認の仕組みを拡充する必要性がありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.