大解説! 省電力なCPUとSoCの最新事情を整理するインテルとAMDとNVIDIAの次の一手は?(3/4 ページ)

» 2013年02月21日 16時00分 公開
[本間文,ITmedia]

先行するNVIDIAはTegraのパワーを強化

Tegra 4とTegra 4i。実装面積はTegra 4iが少なくて済む

 モバイルプロセッサ市場では、NVIDIAがTegra3の後継として、ARM Coretex A15コアを4+1構成で搭載し、グラフィックスコア数を72基に増やして、パフォーマンスを大幅に引き上げた“Wayne”(開発コード名)こと「Tegra 4」の出荷を開始し、2013年前半にはこのSoCを搭載した製品が市場に登場する見通しだ。

 NVIDIAは、Tegra 4の下位モデルとして、2012年に買収したIceraのソフトウェアモデム技術をベースにLTEやCA(Carrier Aggregetion)、HSPA+、TD-HSPAなどをサポートしたベースバンドチップ「i500」を統合した「Tegra 4i」を追加し、低価格スマートフォン市場にもTegraファミリーを積極的に展開する。

 Tegra 4iは、上位モデルのTegra 4が組み込むARM Cortex-A15ではなく、Tegra 3でも使っていたARM Cortex-A9の最新リビジョンである“R4”を採用する。Tegra 4やTegra 3と同様に、4基のCPUコアと省電力動作専用CPUコアの「4+1コア」構成を取る。R4 Cortex-A9は、28ナノメートルプロセスルールの導入で省電力化と高クロック化を両立している。NVIDIAでTegra製品のマーケティングを統括するマット・ウェブリング氏は「40ナノメートルプロセスルールを採用してTegra 3に搭載する従来のコアに比べて15〜30パーセントの性能向上を果たしている」と説明する。

Tegraシリーズの主な仕様
スペック項目 Tegra 4 Tegra 4i Tegra 3
開発コード名 Wayne Grey Kal-El
プロセスルール 28ナノメートル 28ナノメートル 40ナノメートル
CPUコア ARM Cortex-A15 ARM Cortex-A9 r4 ARM Cortex-A9
コア数 4+1 4+1 4+1
CPU動作クロック 1.9GHz 2.3GHz 1.7GHz
グラフィックスコア数 72基 60基 12基
システムメモリ DDR3L/LPDDR3 LPDDR3 DDR3-L/LPDDR2
最大システムメモリ容量 4Gバイト 2Gバイト 2Gバイト
出力可能最大解像度 3200×2000ドット 1920×1200ドット 2048×1536ドット
HDMI 4K(UltraHD) 1080p 1080p
ベースバンドプロセッサ オプション NVIDIA i500内蔵 オプション
パッケージサイズ 23×23ミリBGA/14×14ミリFCCSP 12×12ミリPOP/12×12ミリFCCSP 24.5×24.5ミリBGA/14×14ミリFCCSP"
NVIDIA Direct Touch
NVIDIA PRISM Display Technology 2.0 2.0 1.0
"Chimera" Computational Photography Architecture ×

 グラフィックスコアの設計はTegra 4と共通で、60コアを統合した。Tegra 4(72コア)と比べると12コア減っているが、Tegra 3の12コアと比べれば5倍の性能アップを果たしたことになるという。

 また、これらTegra 4ファミリーでは、“Chimera”と呼ぶコンピュテーショナル・フォトグラフィ・アーキテクチャをサポートする。クアッドコアCPUと強力なグラフィックスコアの演算性能を利用して、イメージ処理を高速化することで、高速な連写を実現するだけでなく、より自然なハイダイナミックレンジ写真(HDR:High Dynamic Range)合成や、動きのある被写体を指でタップすれば、カメラ側が被写体を追尾してピント合わせを行なってくれる「タップ&トラック」、パノラマ写真でもハイダイナミックレンジ写真を実現する「HDRパノラマ」機能などを、タブレット端末やスマートフォンのカメラでも実現できるようにする。

Tegra 4iの概要。CPUコアにはARM Cortex-A9の最新リビジョンとなる“R4”を採用し、グラフィックスはTegra 4と同じGPUコアを60基搭載する(写真=左)。Tegra 4シリーズの特徴でもある、Computational Photogarphy Architectureでは、動く被写体をタップで指定してピントをあわせ続けるといった新機能も利用できる(写真=右)

 Tegra 4iを2013年第2四半期中にメーカーなどへのサンプル出荷を開始し、年末にはこのSoCを搭載したスマートフォンが市場に出回る見通しだ。Tegra 4i搭載デバイスの実売予想価格は、100〜300ドルレンジと想定しているが、主流は100ドル台の製品となるとAMDでは見ている。

NVIDIAは、Tegra 4iのリファレンススマートフォンプラットフォーム“Phoenix”を、パートナーに向けて提供することで、製品開発を容易にする考えだ(写真=左)。“Wayne”ことTegra 4と、“Grey”ことTegra 4i以降、Tegraの進化は二極化していく可能性が高い(写真=右)

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