モバイルプロセッサ市場では、NVIDIAがTegra3の後継として、ARM Coretex A15コアを4+1構成で搭載し、グラフィックスコア数を72基に増やして、パフォーマンスを大幅に引き上げた“Wayne”(開発コード名)こと「Tegra 4」の出荷を開始し、2013年前半にはこのSoCを搭載した製品が市場に登場する見通しだ。
NVIDIAは、Tegra 4の下位モデルとして、2012年に買収したIceraのソフトウェアモデム技術をベースにLTEやCA(Carrier Aggregetion)、HSPA+、TD-HSPAなどをサポートしたベースバンドチップ「i500」を統合した「Tegra 4i」を追加し、低価格スマートフォン市場にもTegraファミリーを積極的に展開する。
Tegra 4iは、上位モデルのTegra 4が組み込むARM Cortex-A15ではなく、Tegra 3でも使っていたARM Cortex-A9の最新リビジョンである“R4”を採用する。Tegra 4やTegra 3と同様に、4基のCPUコアと省電力動作専用CPUコアの「4+1コア」構成を取る。R4 Cortex-A9は、28ナノメートルプロセスルールの導入で省電力化と高クロック化を両立している。NVIDIAでTegra製品のマーケティングを統括するマット・ウェブリング氏は「40ナノメートルプロセスルールを採用してTegra 3に搭載する従来のコアに比べて15〜30パーセントの性能向上を果たしている」と説明する。
Tegraシリーズの主な仕様 | |||
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スペック項目 | Tegra 4 | Tegra 4i | Tegra 3 |
開発コード名 | Wayne | Grey | Kal-El |
プロセスルール | 28ナノメートル | 28ナノメートル | 40ナノメートル |
CPUコア | ARM Cortex-A15 | ARM Cortex-A9 r4 | ARM Cortex-A9 |
コア数 | 4+1 | 4+1 | 4+1 |
CPU動作クロック | 1.9GHz | 2.3GHz | 1.7GHz |
グラフィックスコア数 | 72基 | 60基 | 12基 |
システムメモリ | DDR3L/LPDDR3 | LPDDR3 | DDR3-L/LPDDR2 |
最大システムメモリ容量 | 4Gバイト | 2Gバイト | 2Gバイト |
出力可能最大解像度 | 3200×2000ドット | 1920×1200ドット | 2048×1536ドット |
HDMI | 4K(UltraHD) | 1080p | 1080p |
ベースバンドプロセッサ | オプション | NVIDIA i500内蔵 | オプション |
パッケージサイズ | 23×23ミリBGA/14×14ミリFCCSP | 12×12ミリPOP/12×12ミリFCCSP | 24.5×24.5ミリBGA/14×14ミリFCCSP" |
NVIDIA Direct Touch | ○ | ○ | ○ |
NVIDIA PRISM Display Technology | 2.0 | 2.0 | 1.0 |
"Chimera" Computational Photography Architecture | ○ | ○ | × |
グラフィックスコアの設計はTegra 4と共通で、60コアを統合した。Tegra 4(72コア)と比べると12コア減っているが、Tegra 3の12コアと比べれば5倍の性能アップを果たしたことになるという。
また、これらTegra 4ファミリーでは、“Chimera”と呼ぶコンピュテーショナル・フォトグラフィ・アーキテクチャをサポートする。クアッドコアCPUと強力なグラフィックスコアの演算性能を利用して、イメージ処理を高速化することで、高速な連写を実現するだけでなく、より自然なハイダイナミックレンジ写真(HDR:High Dynamic Range)合成や、動きのある被写体を指でタップすれば、カメラ側が被写体を追尾してピント合わせを行なってくれる「タップ&トラック」、パノラマ写真でもハイダイナミックレンジ写真を実現する「HDRパノラマ」機能などを、タブレット端末やスマートフォンのカメラでも実現できるようにする。
Tegra 4iを2013年第2四半期中にメーカーなどへのサンプル出荷を開始し、年末にはこのSoCを搭載したスマートフォンが市場に出回る見通しだ。Tegra 4i搭載デバイスの実売予想価格は、100〜300ドルレンジと想定しているが、主流は100ドル台の製品となるとAMDでは見ている。
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