インタビュー
» 2011年11月18日 11時20分 UPDATE

移行ではなく発展:「付加価値があれば確実に買っていただける」――ドコモに聞くdメニュー/dマーケット (1/2)

11月18日に開始された「dメニュー」と「dマーケット」は、iモードをスマートフォンに移行させる取り組みの集大成ともいえるが、ドコモの前田氏は「移行ではなく発展」と言う。スマートフォンにおけるコンテンツビジネスの狙いを聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 NTTドコモが11月18日に提供を開始した、同社のスマートフォン向けサービス「dメニュー」と「dマーケット」。dメニューは“スマートフォン版iモード”といえる位置付けで、コンテンツプロバイダー(以下CP)が提供するWebサービスを利用できる。iモードのマイメニュー登録をスマートフォンに引き継げるのも特徴だ。サービス開始当初は約500社の約3400サイト、2011年内には約700社の約3600サイトがそろう。dマーケットでは、月額525円で映画/ドラマ/アニメを視聴できる「VIDEOストア」、レコチョクと連携して約100万曲を配信する「MUSICストア」、約3万のコミックや小説を楽しめる「BOOKストア」、従来の「ドコモマーケット」で提供していた「アプリ&レビュー」を展開する。

 dメニューのアクセスは http://smt.docomo.ne.jp/ から。dマーケットにはdメニューからアクセスできる。

 iチャネルやiコンシェル、BeeTVをスマートフォンにも対応させるなど、ドコモはスマートフォン向けのコンテンツ拡充に注力している。そんな中で開始するdメニューとdマーケットは、ドコモ、そしてCPにとって大きな可能性を秘めたサービスだ。これら2つのサービスに込めた狙いとは。またどれほどの勝算があると考えているのか。同社スマートコミュニケーションサービス部 ネットサービス企画担当部長の前田義晃氏と、スマートコミュニケーションサービス部 ネットサービス企画担当課長の渡辺英樹氏に話を聞いた。

photophoto ドコモが展開するWebサービスのポータルとしての役割を果たす「dメニュー」。ここから「dマーケット」へのアクセスも可能
photophotophotophoto 左から、dマーケットのVIDEOストア、MUSICストア、BOOKストア、アプリ&レビュー

iモードのエコシステムをスマートフォンでも作る

photo NTTドコモの前田義晃氏

―― まずはdメニューとdマーケット立ち上げの経緯から教えてください。

前田氏 スマートフォンは、グローバルメーカーを含む端末メーカーが主導で商品を企画し、その上でさまざまなアプリやプラットフォームを提供し、販売も好調に推移してきました。一方で、今までフィーチャーフォンで培ってきたビジネスの基盤がスマートフォンでは構築できていませんでした。メーカーごとに異なるホームUIやアプリを採用しているのが現状で、我々がお付き合いしているお客様(CP)に対して、必ずしも効率的なビジネスの場を提供できていませんでした。

 そんな中でまず提供したのが「docomo Palette UI」で、スマートフォンを使う上で統一的なインタフェースを目指しました。さらに、サービスの導線となる大きなコンテンツとして、dメニューとdマーケットを用意しました。

―― 2010年4月に「Xperia SO-01B」が発売されてから御社のスマートフォン人気に火が付きましたが、スマートフォン向けのコンテンツ整備を考え始めたのも、そのころでしょうか?

前田氏 声を上げ始めたのは去年(2010年)の夏ごろですね。Xperiaの前には「HT-03A」を発売しましたが、スマートフォンがどこまで普及するかは、初期の段階では見通せていませんでした。Android自体はパッと見PCに近い雰囲気もあったので、どう普及していくかは注視していかないと……くらいに考えていました。しかしiPhoneの伸びが追い風となり、スマートフォンの普及は避けられなくなりました。「iPhoneは日本の垂直統合的なビジネスモデルを参考にしている」という声もありますが、パッケージ感のある分かりやすいサービスを目指していかないといけないと思います。「PCみたいだから、好きなように使ってください」というだけでは、モバイルに特化した価値あるユーザー体験は提供できないでしょう。

―― 昨年夏からすでに1年以上が経過していますが、やはりコンテンツのプラットフォームをそろえるには相当の時間がかかるのですね。

前田氏 そうですね。一方で既存のコンテンツプラットフォームとして、Android マーケットやApp Storeもあります。これらはそれぞれ特色があって否定すべきものではありませんが、インターネット上でビジネスプレーヤーの方々がご自分の店を構えて誘客しやすいプラットフォームかというと、必ずしもそうではないと思います。基本的にはパラパラと商品だけを出す、陳列は向こう(GoogleやApple)がするというスタイルです。この方が、より多くのコンテンツを見せる、一体的に展開するという点では有利かもしれませんが、収益を立てるという点では柔軟な方法ではないと感じていました。

 CPが自分のお店を持ち、そこに対してさまざまな導線から誘客してマネタイズしていく。iモードの公式コンテンツを含めたエコシステムは、そういう作り方をしています。これを継続的にできるプラットフォームをスマートフォンでも作る必要があると強く感じました。

成功事例はBeeTV――付加価値があれば買ってもらえる

photo スマートフォン向けでは50万会員を獲得した「BeeTV」

―― iモードは月額課金が主流ですが、スマートフォンは売り切りアプリが多く、無料アプリも充実しています。そもそもPCサイトも無料で見られます。フィーチャーフォンとはビジネスモデルが違う面がありますが、iモードと同様に収益を上げられるとお考えでしょうか?

前田氏 私はこれまで以上にコンテンツをご利用いただけると思っています。フィーチャーフォンにおける有料課金の市場規模は約6000億円。うち約3000億円がiモードによるものです。Android マーケットやドコモマーケットで多数のアプリが使われてはいますが、ビジネスを推進するプラットフォームとしては足りないと感じていますし、コンテンツも必ずしも洗練されているわけではありません。一方で、ビジネスモデルが成立していないと、付加価値の高いコンテンツがなかなか出せない事情もあります。

 BeeTVは2011年4月頭からAndroid上でも本格的に展開しています。スマートフォンで登録するにはいったんiモード版を解約する必要がありますが、BeeTVのスマートフォンの会員数は50万を超えていますし、今も会員数は急激に増えています。スマートフォンに移行したからといって、多数の無料アプリを使えばいいという雰囲気ではないでしょう。今までと同じように、付加価値の高いコンテンツをスマートフォン上でも提供できれば、確実にお使いいただけると強く感じました。特にスマートフォンのようにディスプレイが大きく高精細になると、リッチ感や動画を見るモチベーションが変わるでしょう。フィーチャーフォンで提供できなかった価値をスマートフォン側で提供できる考えています。

―― 確かに動画や音楽などのマルチメディア系のコンテンツはスマートフォンの方が相性がよさそうですが、ニュースや天気予報などテキストベースのサイトはどうでしょうか。

前田氏 そこはあまり心配していません。ケータイでも非公式サイトでいくらでもニュースサイトはありましたし、公式サイトにも無料コンテンツはあります。有料のニュースサイトを使っている方々は、そこで得られる付加価値にお金を払っていたということです。フィーチャーフォンに比べてスマートフォンは表現形式が大きくなりますし、PCサイトも見られます。今までと同じ方法でお金を取ることは難しいでしょうが、そこはCPが努力と工夫をすれば、決してお金を払ってもらえない状況ばかりだとは思いません。我々は「iモードから移行する」という言い方をしていますが、移行というよりは「発展させる」と考えています。

 CPに対しては、スマートフォンに合わせた進化を考えてサービスを提供してほしいと働きかけています。本格的なスマートフォン展開を考えているCPはどちらかというと多くありません。ただ、UIや見せ方を工夫すれば成功する事例も紹介しつつ、いろいろ話し合いをしています。フィーチャーフォンからの焼き直しではなく、新たな価値を提供すれば市場は広がると思います。

―― コンテンツサービスを発展させる上でのカギはどこにあるとお考えですか?

前田氏 スマートフォンですと、ブラウザの中で表現できる情報量が増えます。レイアウトがフィーチャーフォンと同じだと、その時点で無理があるので、見せ方にどれだけ工夫できるかが重要です。まだdメニューは立ち上がったばかりなので、今すぐ完ぺきなものは作れませんが、これからも継続的に進化していきます。

photophotophotophoto dメニューの「メニューリスト」に並ぶカテゴリー一覧。着メロや着ボイスなどの懐かしいコンテンツもある

スマホユーザーの多くがiモードで有料登録していた

―― 700社3600サイトのうち、既存のiモード向けCPと、dメニュー向けに新たにコンテンツを提供するCPはどれだけ含まれるのでしょうか。

前田氏 700社3600サイトは、すべてiモードのCPとサイトです。これに、それほど数は多くありませんが、旧ドコモマーケットで提供しているゲームなどのオリジナルコンテンツが加わります。

―― 現在のiモードに関わるCPとサイト数はどれくらいなのでしょうか。

前田氏 現在は3000社が2万3000サイトを提供しています。700社3600サイトが占める割合(CPは約23%、サイトは約16%)は少ないと思われがちですが、マイメニュー登録数は、dメニューのCPだけで7割強を占めるので、主要なコンテンツはほぼ移っています。多くのユーザーを抱えているCPには特に、dメニューに取り組んでいただけるよう強く働きかけています。

―― ユーザーが気になるのは料金だと思います。料金設定はどうなりそうですか?

前田氏 マイメニューを継続する場合の料金は変わりません。ただ、スマートフォン独自のコンテンツ(※別途課金)の提供を予定しているCPもいます。そこはCPによって千差万別です。

―― iモードの月額課金はどの程度でしょうか。

前田氏 iモード情報料の売上は月300億円ほど。個別課金も増えつつありますが、月80億円ほどです。

―― 個別課金はどんなコンテンツが多いのでしょうか。

前田氏 最近はソーシャルゲームのアイテム購入ですね。電子コミックも、月額課金登録をしてもらいながら、個別課金で買われる方もいます。

―― この月額課金と個別課金の比率は、スマートフォンでも同じようになるとお考えですか?

前田氏 これは読めないですね。月額課金で伸ばしていこうという方々もいるでしょうし、いったん(月額課金で)囲い込んで、もっと使ってもらおうということで個別に課金する場合もあるでしょう。

渡辺氏 iモード情報料は伸びのペースは落ちていますが、全体の数字(売上)は上がってきています。

前田氏 スマートフォンに先行して移っているイノベーターと呼ばれる人たちは、iモードでも公式サイトに依存しているわけではなく、一般サイトも含めた使い方を分かってらっしゃる……そう思っていたのですが、よくよく調べると、必ずしもそうではないんです。iモードの有料登録率は、スマートフォンが売れ始めたころは53%でしたが、現在は約1割減の43%で、iモードユーザー5000万人のうち約500万人強が解約しています。spモードの契約数は600万を超えたので、iモード解約数とspモード契約数がほぼ一致します。iモードの有料コンテンツを使っていた方々がスマートフォンに移った、つまり有料コンテンツの価値が認められていたことの裏付けになるわけです。

MUSIC/VIDEOストアは2011年冬春モデルのみ対応?

 ドコモの発表によると、dマーケットのMUSICストアとVIDEOストアを利用できる機種は「2011〜2012年冬春モデルのAndroid 2.3を搭載したドコモスマートフォン(P-01D、SH-04D、SO-01Dを除く)」に限られる。なぜ新機種以外では利用できないのか。同社に確認したところ、DRMによって著作権保護された音楽や動画のライセンスを確認する機能を既存の端末が備えていないため。ただ、既存機種についてもソフトウェアアップデートなどによってMUSIC/VIDEOストアを利用可能にすることを「検討している」とのこと。早期の対応に期待したい。なお、BOOKストアはAndroid 2.2以上のドコモスマートフォン、dメニューはドコモのスマートフォンとタブレットで利用できる。


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