スマートフォン、ウェアラブル製品、ネットワーク――ZTEの日本戦略を聞くZTE Spring Media Luncheon 2014

» 2014年01月21日 07時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 B to Cにかじを切り、コンシューマーに寄り添ったスマートフォンを開発していく――。ZTEは香港で開催した「ZTE Spring Media Luncheon 2014」でそう宣言したが、日本市場はどのように攻めていくのか? 「STAR7 009Z」以来のZTEスマホが登場する可能性はあるのか? かつてZTEジャパンで代表取締役社長を務め、現在はZTEバイスプレジデントと東アジアのプレジデントを務めるジャン・リンフォン(Zhang Linfeng)氏に話を聞いた。

日本では、当面はミドル/ローエンドで頑張りたい

photo 「nubia Z5S」を手にするジャン・リンフォン氏

―― 2013年のZTEのスマートフォンシェアは、2012年に比べて下がりつつありますが、現状をどうご覧になっていますか?

ジャン氏 確かに2013年はシェアが下がりましたが、従来のビジネスモデルを変え、世界トップ3のメーカーになることを目指しています。

 弊社がフラッグシップモデルとして展開しているGrandシリーズは、新モデル「Grand S II」を新たに発表し、中国と欧米で発売しました。薄くて高解像度のディスプレイを搭載しているGrand S IIは、中国と欧米で一定の評価をいただいています。大画面の「Grand memo」は、画面を2分割して利用できる機能もあり、ビジネスでの用途をメインに考えています。

 「nubia」も中国市場で好評いただいています。nubiaはアフリカの言葉で「人類の起源」という意味を持っており、そこから取った名前です。使い勝手にこだわった、一般ユーザー向けのモデルです。nubiaのビジネスモデルでB to Cにかじを切り、ネットでのみ販売しています。ここがGrand S IIとは違うところです。

photophoto 「Grand S II」(写真=左)と「nubia Z5S」(写真=右)

―― Grand S IIとnubiaはターゲットが違うと。

ジャン氏 nubiaはどちらかというと、若者向けのモデルです。キャリア経由で販売してきたGrandシリーズとはビジネスモデルも違い、直接エンドユーザーにお届けできます。こうした直販の方向は、日本も含めて地域ごとに考えていく必要があります。

―― 日本で2014年にZTEのスマートフォンは発売されるのでしょうか?

ジャン氏 日本は物作りでは世界トップの市場なので、たくさん学ばなければなりません。弊社は日本ではデータ通信端末からスタートし、日本のお客様の要望を理解し、一定の経験を蓄積することができました。ソニー、富士通、京セラなどの素晴らしい日本メーカーと同じような製品を出すには、もう少し頑張る必要がありますが、チャレンジに値するマーケットだと思います。(日本向けの)新しい端末についても、まだ若干の調整が必要ですが、仕様を検討しているところです。

―― それはnubiaかGrandシリーズになるのでしょうか?

ジャン氏 今、頑張っているところです(笑)。日本のメーカーに学んで、コストパフォーマンスの高いものを提供したいですね。

―― 日本では、ソフトバンク向けの「STAR7 009Z」以来、2年ほどスマートフォンを出していませんが、何か理由があるのでしょうか。

ジャン氏 端末の責任者になったばかりなので詳しいことは分かりませんが、日本市場の要求が世界で一番高いからだと思います。それはネットワークだけでなく、品質、デザイン、使い勝手などが含まれます。日本でフィーチャーフォンに慣れてきたユーザーはARPUも高いし、進んだ方が多い。携帯は日本が世界一進んでいると思います。ZTEが展開する地域は中国、アジア、アフリカが中心でしたが、日本に進出して課題が見つかりました。

―― その課題とは? 日本展開で足りていないところは何だとお考えですか。

ジャン氏 例えば、ソニーさんはハイエンドなスマートフォンを得意としていますが、ZTEはどちらかというとコストを優先しています。(グローバルと)同じ製品を出すかはまだ検討中ですが、必ずしもハイエンドな製品とは限りません。

―― ただ、XperiaやGALAXY Sシリーズなどを見てもお分かりかと思いますが、日本ではハイエンドモデルが主流になっています。

ジャン氏 ハイエンド製品を日本で出すにはまだ時間がかかるので、当面はローエンドやミドルエンドで頑張りたいと思っています。nubiaやGrandシリーズは、中国や欧米ではハイエンドですが、日本でそのまま持っていっても、Xperiaなどとは若干の差があると思います。中国のハイエンドモデルをカスタマイズして、ミドルエンドモデルとして出すことについては、(日本で)一定の需要があるとみています。

―― 世界で大ヒットした「Blade」のような、低コストでローエンドモデルをたくさん売るという戦略も考えていますか?

ジャン氏 コスト面でメリットがあるので、ローエンドもグローバルでカバーしていきます。

日本でもウェアラブル製品を出したい

photo ZTEは腕時計型のウェアラブル端末「BlueWatch」を発表。Bluetoothでスマートフォンと接続し、天気予報の確認、アラーム・各種SNSアプリの利用、着信やメールなどの確認ができる

―― ジャンさんは今年のCESに参加されたそうですが、実際にいろいろな製品をご覧になってどう感じましたか?

ジャン氏 たくさんは回れませんでしたが、健康関係は、かなりの製品が出ていました。ZTEもスマートウォッチを発表しています。

―― 今後はウェアラブル端末にも注力してくと。

ジャン氏 はい。ZTEは端末事業部だけでなく、システム、クラウド、IT、ICT事業部も持っているので、ウェアラブル製品は端末のみならず、アプリと連携できる製品を準備しています。

―― 腕時計型ですと、既存の腕時計から付け替えてもらうにはハードルが高いと思いますが、必ずしも時計とは限らないのでしょうか。

ジャン氏 そうですね。ともかく、ウェアラブルは2014〜2015年が特に盛り上がると思います。

―― 日本でウェアラブル製品を投入する可能性はありますか? 例えは、ソフトバンクモバイルは「ソフトバンクヘルスケア」を提供していますが、キャリアと連携することも?

ジャン氏 ソフトバンクさんと連携することも検討しています。ウェアラブル製品を出すとしたら、キャリアさんと組むのではないでしょうか。

OSはAndroidに限定するつもりはない

―― ZTEさんはAndroidだけでなく、Firefox OSの製品(ZTE Open)も開発しています。OSについての考えもお聞かせください。

ジャン氏 当面はAndroidが主流ですが、Androidに限定するつもりはありません。第3のOSは世界的な流れになるでしょうし、ZTEも準備をしています。

―― ZTE Openの反響はいかがでしょう?

ジャン氏 まだ欧州を中心とした一部地域でしか販売していないので、それほど大きなものではありませんが、日本での導入も検討している段階です。

―― それは、Firefox OSの導入を宣言しているKDDIと組むということでしょうか?

ジャン氏 その点はまだ決まっていません。

―― Windows Phoneの展開はいかがでしょう?

ジャン氏 海外ではそれほどたくさん売れているとは聞いていません。Windows Phoneは企業に導入しやすい可能性はありますが、先進国でないと難しいと考えています。

―― 日本以外のアジア各国では、大きな画面でも抵抗が少ない人が多い――という話をよく聞きます。タブレットやファブレットにも注力していくのでしょうか。

ジャン氏 日本市場を研究すると、日本人は大きなスマートフォンをあまり好んで使わない傾向が見えます。ビジネス用や、ガジェット好きな人には大きな端末が使われているようですが、アジアで好評のファブレットが、日本で本当に受け入れられるかどうかは、調査が必要だと思います。ZTEとしては、大画面スマートフォンにも注力していて、現在はGrand Memoシリーズを展開しています。

―― 今、ZTEスマートフォンで最もシェアが高い国はどこですか。

ジャン氏 一番高いのは中国で、その次が米国です。

―― 今、一番頑張りたい市場は?

ジャン氏 日本ですね。日本は市場自体は大きいですが、ZTEのシェアは後ろの方ですね。

―― 日本ではトップ○を目指すなどの具体的な目標はありますか?

ジャン氏 そこは定めていません。実力に合わせて努力しないといけないと思っています。

4Gに対していち早く研究開発をしてきた

photo

―― あらためて、ZTE製品の強みを教えてください。

ジャン氏 データ端末については、スピーディに開発できることが強みです。もう1つは、サプライチェーンを大事にしていることです。例えば、チップベンダーとは緊密な関係を持っているので、日本に合った製品をいち早く出せます。

―― 「Pocket WiFi GL09P/203Z」は、Qualcommとのパートナーシップがあったおかげで、最新のLTEチップを搭載した製品を最も早く出せました(参考記事)。

ジャン氏 そういう意味で、チップベンダーとの関係は重要です。お客さんに高性能な製品をいち早く出す――という点で、ZTEはいいポジションにいると思います。

―― ZTEは世界で65のLTE商用ネットワークを持ち、中国ではシェア1位です。どのように実現したのでしょうか。

ジャン氏 4Gに対していち早く研究開発をしてきたからです。弊社は膨大なR&Dチームを有しており、日本にも大規模な研究を進めています。キャリアさんの厳しい要求に応え、4Gの発展には非常に貢献できたと自負しています。

―― 日本のネットワークでお付き合いがあるキャリアは、ソフトバンクモバイルだけですか?

ジャン氏 はい、日本のインフラはAXGPのみを開発しています。(AXGPと互換性がある)TD-LTEのネットワークについて、上海万博の前後2年かけて、ZTEの技術者が日本の開発者と技術交流を重ねた結果、AXGPのインフラを手がけることになりました。これは日中の技術者双方が努力した結果だと思います。

―― TD-LTEとAXGPのネットワークは、ノウハウを共有して開発しているのでしょうか。

ジャン氏 具体的なところは分かりませんが、3GPPの仕様にはのっとっているはずです。あとは緊急地震速報など、日本独自のカスタマイズも施しています。

―― インフラメーカーとしてのZTEの強みは?

ジャン氏 インフラメーカーは10社に満たないくらいなので、どのメーカーも皆さん強いと思います。ZTEは4GやLTE-Advanced、そして5Gに向けてさらに研究開発を進めていきます。

―― LTEはTDとFDD、どちらが主流になるとお考えですか? あるいは、併存していくのでしょうか。

ジャン氏 今までの設備投資もありますし、一定の期間は併存すると思います。周波数の関係もあるので、あとはキャリアの判断になるでしょう。

―― ユーザーにとってTD-LTEかFDDかの影響は少ない?

ジャン氏 エンドユーザーにとってはスピードが重要で、どのバンドに接続しているかは(基本的に)分からないでしょう。設備投資やバンドについては、キャリアが考えることです。

―― 最後に、日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

ジャン氏 ZTEはネットワークと端末のメーカーです。これからも、日本のユーザーに向けてコストパフォーマンスの高い製品を提供して、情報技術で人々のコミュニケーションを加速させ、平和な世界作りに貢献したいと思います。

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