前回の連載で解説したように、MVNOの格安SIMでは使える機能に一部制限がある。キャリアメールも、その1つだ。MVNOは、NTTドコモなどの大手キャリアから回線を借りているだけで、サービスの提供主体だ。言い換えると、MVNOは基地局などを持っていないだけで、キャリアの1つであることに変わりはない。そのキャリアのユーザーに向けたサービスとして提供されている回線貸し出し元のキャリアメールをMVNOで使えないのは、ある意味当たり前ともいえるだろう。
もちろん、MVNOの中には、独自のメールサービスを提供している会社もある。例えば、BIGLOBEやhi-ho、So-netのように、もともとプロバイダーとして事業を行ってきたMVNOは、メールアドレスをセットにしていることが多い。例に挙げたBIGLOBEでは、月額料金に「ベーシックコース」の料金が含まれている。これは、プロバイダーとしてのサービスを受けるための料金で、メールアドレスも利用可能だ。逆に、すでにBIGLOBE会員の場合、ベーシックコース分の200円(税別)が、月額料金から割り引かれる。
エントリープラン | ライトSプラン | ライトMプラン | |
---|---|---|---|
BIGLOBE非会員 | 900円 | 1505円 | 2838円 |
BIGLOBE会 | 700円 | 1305円 | 2638円 |
※固定通信用にBIGLOBE接続サービスを利用しているような場合、月額料金が200円安くなる。見方を変えると、この200円に、メールアドレスなどのサービスが含まれているということだ。 |
また、格安SIMとスマートフォンの組み合わせなら、プラットフォームが提供しているメインのメールアドレスにしてしまう手もある。Androidはアカウント作成時にGmailのアドレスが自動で作られる。iOSも同様で、iCloudメールを利用できる。これらは無料で、どちらもプッシュ配信に対応しているため、メールが届くとすぐに端末に通知が来る。なお、iOSでGmailを使うときは、専用のアプリが必要。無料のGoogleアカウントのGmailだと、「メール」アプリに設定してもプッシュでは通知されない(ビジネス用のGoogle Appsなら通知は可能)。逆にiCloudメールをAndroidに設定することも可能だが、同じくこの場合もプッシュは利用できない。そのプラットフォームが提供しているメールを使った方が、便利というわけだ。
ただし、これらのメールは、キャリアメールとまったく同じように使えるわけではない。プッシュ通知に対応しているMVNOのメールもあるが、そうでないケースもあることがその1つ。また、認証用にキャリアメールを必要とするサービスもまだまだある。一例をあげると、Googleの2段階認証も、日本ではキャリアメールか音声にしか対応していない。最近ではGmailを認証用に使えるサービスも増えているが、キャリアメールと完全に同じになるわけではない点には注意したい。
キャリアが行っている、迷惑メール対策が支障になることもある。現在では、各社とも自動で迷惑メールを判別するフィルターを導入しているが、以前はこうしたサービスがなく、ケータイやPHSからのメール以外を一律で弾く設定にしている人は多い。そのため、上記のようなキャリアメール以外からキャリアのアドレスにメールを送ると、PCからのメールと判定され、相手に届かないケースがある。相手に迷惑メールフィルターの利用を勧めたり、例外として自分のメールアドレスだけを受信するように設定してもらったりすれば解決する話だが、かなりの手間がかかる。相手のスキルによっては、設定を変更できないという恐れもある。
ここまで述べてきたように、キャリアメールを使えないデメリットはあるものの、スマートフォンでのメッセージの主流は、LINEやFacebookメッセンジャーのような、サードパーティ製アプリに移りつつある。よく連絡を取る相手はほぼスマートフォンというような場合は、これらのアプリをインストールしておけば、連絡に困ることはなさそうだ。これらのアプリはプッシュにも対応しているため、リアルタイムなやり取りにも向いている。
電話番号を知っている相手に送るメッセージの手段としては、SMSも便利だ。SMSは2011年に相互接続しており(→SMSのキャリア相互接続、7月13日に開始――送信料金の値下げも)、異なるキャリア同士で送受信できるようになった。MVNOにも、これは当てはまる。相手がSMSの受信拒否などの設定をしていない限り、電話番号だけで送信でき、確実性が高い手段と言えるだろう。ただし、料金が1通あたり3円かかる。基本料金が追加でかかるため、わずかながら料金が上がる点にも注意したい。
ちなみに、SMS対応のSIMカードには副次的なメリットもある。端末の中には、SMS非対応のSIMカードを挿すと、電波のマークが正常に表示されないものが存在する。この場合、いつもよりバッテリーの消費量が増えてしまうこともある。特に、電話まで利用することを想定したスマートフォンにデータ通信のみのSIMカードを挿すと、こうした問題が起きやすいようだ。端末によって状況が異なるため一概にはいえないが、機種を変えながら使うことを考えると、SMS対応のSIMカードにしておいた方がいいだろう。
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