「ドコモプラン」を提供するmineoの勝算/UQとKVEが合併する理由――KDDI系MVNOの最新動向石野純也のMobile Eye(8月17日〜28日)(1/2 ページ)

» 2015年08月29日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 「第2のサービスイン」(ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループリーダー 津田和佳氏)と意気込む、mineoの「ドコモプラン」が、9月1日にスタートする。mineoを運営するケイ・オプティコムでは、これに合わせて料金を改定。データ通信料をドコモプラン、auプランでそろえた上で、元回線のキャリアの枠組みを超えた「パケットシェア」も開始する。最大5回線の「複数回線割」「家族割」もスタートさせるなど、サービスを一気に拡充させた。

 一方で、同じau回線を使ったMVNOのUQ mobileを展開していたKDDIバリューイネイブラーは、UQコミュニケーションズと合併。10月からは、WiMAX、WiMAX 2+で事業展開を行うUQコミュニケーションズがUQ mobileのサービスも行うことになる。mineoとKDDIバリューイネイブラーという2つのKDDI系MVNOが、この2週間で、大きく動き出した格好だ。今回の連載では、この2つを取り上げ、KDDI系MVNOの今後を考察していきたい。

マルチネットワークに対応したmineo、激安キャンペーンも展開

 ケイ・オプティコムは、9月1日から新たに「ドコモプラン」を提供する。同社はもともと、KDDIのネットワークを使った初のMVNOとしてサービスを展開していたが、新たにドコモとも相互接続を実施。ドコモとKDDI、2つの回線を別々のプランとして提供する。料金はデータ通信のみの「シンプルタイプ」(ドコモプランのみSMS対応に120円必要)で、500Mバイト、700円から。1Gバイトは800円、3Gバイトは900円、5Gバイトは1580円。音声通話対応の「デュアルタイプ」の価格は、ここに700円足したものとなる。料金はいずれも税別(以下同)。

photophoto 9月1日から「ドコモプラン」を開始するケイ・オプティコム。mineo事業を率いる津田氏が、詳細を解説した
photo 料金は500Mバイトで700円から

 1Gバイト、3Gバイトの料金はauプランより安く設定されていたが、合わせてauプランの価格も改定。シングルタイプでは、ドコモとau、どちらを選んでも同じ料金になるように設定されている。音声通話対応のデュアルタイプについては、auがプラス610円と、ドコモより90円安い。これは、キャリアからの卸価格が異なるためだという。

photo 音声通話対応のプランは、回線によって価格が異なる。auの方が、割安だ

 2つのMNOと相互接続を行い、マルチキャリアMVNOになった結果、サービスにも特色が生まれた。mineo同士であれば、データ通信量を自由に分け合える「パケットシェア」を、マルチキャリア対応させた。また、新たに「複数回線割」や「家族割」も開始。2回線以上をひもづけると、最大5回がそれぞれ50円の割引を受けられる。こちらについても、回線の種別を問わず、複数回線割や家族割を組める。ドコモとauの切り替えも安価に抑え、2000円での切り替えを可能にした。

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photo 2社の回線をまとめて提供する、マルチキャリアMVNOだからこそのサービスを開始

 ケイ・オプティコムの津田氏が「mine史上、最大のキャンペーン」と述べているように、ドコモプランの提供に合わせて大規模な割引も行う。新規契約者に対し、シングルタイプ、1GBプランの月額使用料と同じ800円を、6カ月間割り引くキャンペーンを行う上に、「ドコモプランを先行予約いただいた皆様には、さらに3カ月無料が加わり、合計で9カ月の基本使用料が無料になる」(同)。

photo キャンペーンも大盤振る舞い。とりあえずmineoを試してみたいという人にも、打ってつけだ

 この激安キャンペーンが功を奏し、すでにドコモプランの予約数は1万を突破しているという。キャンペーン期間後に無償で解約するユーザーもいるため一概には言えないが、とりあえず、出足は好調といったところだ。津田氏が「最低利用期間を撤廃したので、6カ月後に解約されるお客様もいるとは思うが、使ってもらえれば十分ご満足いただける」と自信をのぞかせていたが、そのままmineoに定着するユーザーが多いと見込んでの施策といえるだろう。

 au回線を使ったMVNOを始めた際は、mineoのロゴを入れた端末まできっちりそろえてきたが、ドコモプランはSIMカードのみでのスタートとなる。ドコモのネットワークを使えるSIMロックフリー端末はラインアップが豊富なため、あえて端末は取り扱っていないのかと思いきや、実は「正直言うと、間に合わなかった」(津田氏)だけだという。端末の販売も検討しており、ほかのMVNOと同様、セット販売を行う計画もあるようだ。一方で、au回線用の端末とは異なり、ロゴを付けるといった、mineo用の作り込みは減らしていく方針。ほかのドコモ系MVNOと同様、SIMロックフリー端末を自社で販売するという形になりそうだ。

ドコモから回線を借りたmineoの狙いとau回線の弱点

 ケイ・オプティコムがドコモプランを始めた背景には、マルチネットワークMVNOとして、特色を出したいという戦略がある。現状ではドコモとau、それぞれにSIMカードを用意しているが、将来的には1枚のSIMカードで「強い方の電波をキャッチすることをやりたい」(津田氏)という。

 ただし、そのためには、端末の位置情報を管理している「HLR(3G用)/HSS(LTE用)」を、ケイ・オプティコム自身が持つ必要がある。また、現行の制度ではSIMカード自体もMNOから貸与される仕組みになっているため、計画を達成するためには省庁を巻き込み、法律の改正も必要になる。ケイ・オプティコムでも、「いつごろ可能になるのか情報収集している段階」(津田氏)だ。設備や費用に加えて、関係省庁やMNOなど、調整する相手も多く、まだ見通しは立っていない。同様の要望はIIJや日本通信などのMVNOからも上がっている。MVNOをめぐる動きの1つとして、どのように決着するのか注目したいところだ。

photo 将来的には、最適なネットワークを自動で選ぶ、マルチネットワークMVNOを目指している

 また、ケイ・オプティコムでは、5年で100万契約という目標を掲げている。1年目は10万契約の獲得を狙っていたが、ふたを開けてみると1年経過時の契約数は7万件にとどまった。当初は順調に数を増やしていたmineoだが、iOS 8がau回線を使うMVNOに接続できないことが判明した。津田氏によると、この影響がトータルで「2割ぐらいあった」という。いわゆるKDDI系MVNOの「iOS問題」が、契約者数の足かせになってしまったわけだ。MVNOの数も同社の予想よりも増え、「今のままでは遅れを取ってしまう」(同)という危機感もあった。かなりドコモには近づいてきているが、KDDIの方がまだ接続料も高いこともあり、他社のデータ増量や値下げに対抗しにくい面もある。

photo 10万契約を目標にしていたが、1年間での結果は7万契約にとどまった

 端末という点では、iOS以外でも、KDDI系MVNOはドコモ系MVNOに遅れを取っている。KDDI系MVNOは、現状だとVoLTEが提供されておらず、音声通話の利用には3Gの「CDMA2000 1x」が必須になる。CDMA2000 1xは決して日本独自の規格というわけではないが、北米や日本、韓国など、限られた地域でしか採用されてこなかったため、対応している端末の数が非常に限られている。そのため、まだ規模の小さいMVNO市場に向け、対応端末を出すメーカーは非常に少ない。

 結果として、mineoではauの中古端末か、mineoが独自に調達した端末を選ばざるをえず、ドコモ系MVNOに比べて端末の選択肢が乏しい状況になっていた。au端末をすでに持っているユーザーには数少ないMVNOの選択肢として魅力的だったかもしれないが、「端末のセット率も2割程度」(津田氏)と、それ以上の広がりを欠いていた印象もある。

photophoto 独自に端末を調達してセット販売しているが、豊富なSIMロックフリー端末を選べるドコモ系MVNOに比べると、見劣りする感は否めない。ドコモ回線を加えることで、こうした問題を解決する

 エリアについてはどうか。ケイ・オプティコムは、実人口カバー率99%を超えたLTEのエリアの広さをアピールしていたが、ドコモのLTEもエリアは十分広がった。一般のユーザーがその差をはっきりと体感するのは、難しいのかもしれない。そのためか、今回のドコモプランを加えても、目標の100万契約は据え置きになっている。

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