変質する10代のネット利用小寺信良「ケータイの力学」

» 2011年07月19日 21時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 筆者が子供の携帯利用実態に注目し始めて3年あまりになるが、たった3年の間でもトレンドが目まぐるしく移り変わってきた。中学、高校が3年制であることもあって、ちょうど世代が3年で完全に入れ替わるタイミングである。

 6月29日にIMJモバイルが「女性のデジタル領域における行動・意識に関する調査」を公開した。15歳から49歳までの女性を対象に、年代別のトレンドが分かる。4月にはほぼ同じ趣旨で男性に対する調査も公開されているので、この2つの資料から10代の動向に注目して、分析してみたい。

 この資料が示す10代は、15歳から19歳までの男女それぞれ224人。だいたい下は中学3年生から上は大学1年生ぐらいまで、ということになるだろう。保有しているデジタル機器を見ると、予想外にPCの所持率が約90%もある。ほかの年齢から比べれば、PCの所持率は低いのだが、かなりの所持率である。

 従来型携帯電話の所持率はだいたい85%で、全国高校生の携帯電話所持率の97%からするとだいぶ低く出ている。これはスマートフォンの所持率を足すと105%程度になることから、スマートフォンに乗り換えた人もあり、2台持ちもあるということだろう。

 閲覧しているサイトのジャンルとしては、動画共有・配信サイトが男女ともに最大となっている。男子の場合はどうせ大半がエロ動画探しだろうとある程度の予想は付くが、女性ではほかの年齢層があまり関心を示さない中、10代女子のみが突出しているのが意外である。どんなコンテンツを見ているのか、気になるところだ。

photophoto 閲覧しているサイトのジャンル(左=女子、右=男子 出典:IMJモバイル)

SNS利用にも地殻変動が

 利用サービスとしては、SNSに大きな変化が起こっている。一説には10代にTwitterは浸透していないという話もあったが、調査の結果ではmixiをかなり上回っている。特に10代女子の利用率は突出しており、時代は変わりつつあるということが分かる。

photophoto 利用ソーシャルメディア(左=女子、右=男子 出典:IMJモバイル)

 一方mixiのほうは男女ともに20代の利用が突出している。これは単純に20代に人気があるという見方もできるが、10代の時に人気が出たサービスに加入し、そのまま継続しているという傾向もあるのではないか。数年後の調査では、Twitterが同じような傾向を示すのかもしれない。

 Facebookはご存じのように実名主義の性格が強いサービスだが、利用者数が少ないせいか、まだ未成年者がトラブルに巻きこまれたとは、それほど聞かない。しか今後は就職活動などで学生にとって必須のサービスとなりつつあることから考えると、利用者層が10代にまで広がっていくのは時間の問題かと思われる。特に大学が本格的に活用しはじめたら、高校時代から始めておくという傾向は強まるだろう。元々Facebookは大学生の間で発展したこともあり、学校との相性がいいのである。

 Twitterの利用内容を見てみると、もっとも多いのが友人の近況で、以前ならメールでやっていた他愛のないコミュニケーションが、Twitterの利用に移っていると考えられる。男女差が見られるのは、男性がテレビ、映画、お笑いなどのエンターテイメント情報に多く興味を示しているのにくらべ、女性は有名人の近況が多い。ファンツールとしての使い方としても、女性は公開されるエンターテイメントよりもプライバシー情報に興味があるという傾向が出ている。

photophoto Twitterで閲覧している記事(左=女子、右=男子 出典:IMJモバイル)

 逆に男女ともに興味が高いのが音楽の情報である。音楽業界では若い人がCDを買わなくなったと騒いでいるが、音楽に対して興味を失ったわけではなく、彼らの音楽の入手ツールがもはやCDではないということだ。違法ダウンロードの処罰化を検討する前に、子供が払える価格の音楽サービスを作るのが先だろう。

 サイトを閲覧する動機となっているのは、10代では「暇つぶしのため」がトップに来る。この部分には、現在隆盛のモバゲーやGREEも入ってくるだろう。しかしそれ以外の目的を見ると、単なる遊びではなく、自分の役に立つ情報にアプローチしようとしているのが分かる。

photophoto サイトを閲覧する目的(出典:IMJモバイル)

 人を育てるのは人であって欲しいという願いはもちろんあるが、SNSの向こうがわにも人がいる。ネットを通じて多くの人にはぐくまれながら、子供が成長できる社会のあり方というのも、一つの可能性として考えていくべきであろう。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は津田大介氏とともにさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社)(amazon.co.jpで購入)。


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