新たな付加価値と事業創造で「ダムパイプ」にはならない――NTTドコモ 辻村副社長に聞く (後編):新春インタビュー(3/3 ページ)

» 2012年01月02日 07時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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ドコモの考えるグローバル進出

―― 2012年は「グローバル化」も重要なテーマになります。これはスマートフォン分野と、グローバル化でやや遅れてしまった国内の端末メーカーはもちろん、コンテンツプロバイダーにとってもグローバル化を考えなければならない時期です。こういった中で、ドコモはグローバル市場の関わりをどう捉えていらっしゃるのでしょうか。

辻村氏 まず国内の端末メーカーがグローバル化するのは、ドコモとしても歓迎すべき傾向です。日本だけでなく海外のオペレーターも日本メーカーから調達すれば、メーカーは新たな収益を生みますし、我々のメリットも大きいわけです。

 その上で日本メーカーの海外進出で何が競争力になるかといいますと、それは「LTE」ではないでしょうか。日本では(ドコモが)これだけ早くLTEを導入し、Xiとして普及に弾みがついている。日本メーカーもドコモ向けにLTE端末を投入していますから、これ(Xi端末開発の経験・ノウハウ)が海外市場での強みになるでしょう。

 また通信部分以外では、「防水機能」が注目ですね。日本では一般層へのスマートフォン普及が早く起きていますが、ドコモショップなどでヒアリングをしますと、こういった普通のお客様にとってスマートフォンの防水機能はとても評価が高い。この防水機能の実装では、日本メーカーは海外メーカーよりも優位性があります。ですから、グローバル市場で防水需要が顕在化する前に、(防水を)日本メーカーの優位性にすることは十分に考えられるのではないでしょうか。

―― ドコモとして日本メーカーのグローバル化を歓迎する一方で、ドコモ自身の海外展開はどのような戦略で行うのでしょうか。

辻村氏 ドコモではTata Docomoのようなオペレーターへの出資の例もありますが、今後の海外展開においては、ドイツのnet mobile AGやベトナムのVMGのようなコンテンツアグリゲーション分野にも力を入れていきたいと考えています。

 あと、まだ社内で議論している段階ですが、私が成長の可能性が高いと考えているのが、国内のサービス産業と連携して海外進出するモデルです。

―― サービス産業連携と言いますと、具体的にはどういったことになるのでしょうか?

辻村氏 例えば、コンビニエンスストアなどの流通小売りや物流サービス業、金融サービス、人材派遣サービス、総合セキュリティサービスなどですね。こういった日本で成長した高品質なサービス産業が今、続々とアジアの新興国をはじめ海外に進出して行っています。そして、これらのサービス産業は、スマートフォンやタブレットなどモバイルITの技術・サービスととても親和性がある。彼らのビジネスを革新し、より生産性を高めることにスマートフォン/タブレットが役立つわけですね。

―― 異業種他社とドコモが提携し、モバイルITのソリューションで提携先のビジネスの付加価値を高める。これは国内でもすでに始まっている取り組みですね。

辻村氏 そうです。すでに動き出している国内のサービス産業連携としましては、イオングループ様やマクドナルド様などとさまざまな取り組みを行っています。また具体的に名前を挙げられませんが、他の大手サービス事業者とも(提携に向けた)議論を行っています。

 ドコモと異業種との連携・提携は、まずは国内のサービス事業において付加価値向上や新ビジネスの構築のために行われますが、それが将来、海外に輸出されていくことは十分に考えられます。サービス産業のパートナーが海外進出をする際に、我々ドコモも新たなビジネスモデルやサービスモデルを(モバイルITで)支える側としてお供させていただく、というシナリオです。

―― 国内で成功したモバイルソリューションをパッケージ化し、サービス産業の海外展開とともにドコモもさまざまな業種・業態で海外進出していくわけですね。

辻村氏 その通りです。これはサービス産業の各企業にとっても、Win = Winの関係を築けることと思います。彼ら(サービス産業)が海外進出する際には現地資本の企業との競争になるわけですが、ここではモバイルITを取り込んだ“進化したサービス業の在り方”が武器になります。日本国内でブラッシュアップされたモバイルソリューションが、海外進出の際には役立つわけです。

―― しかし、海外ではドコモは“オペレーター(通信事業者)”の立ち位置にはなりません。

辻村氏 確かにそうですが、ドコモには海外オペレーターとのネットワークがあります。通信インフラの部分では、我々と友好関係にある現地オペレーターをご紹介することができるでしょう。さらにソリューションやプラットフォーム全体の構築や運用管理は、海外でも我々が担えます。ドコモとしては、サービス産業との連携を1つのパッケージとしていきたいのです。その過程では、海外にジョイントベンチャーを作るといったことも考えられるかもしれません。いろいろなやり方がありますよ。

―― 国内外を1つのプラットフォームとしてまとめることで、競争優位が築けるわけですね。

辻村氏 ええ。プラットフォームとして共通化できれば、国内でのサービス進化をすぐに国際競争力につなげられますし、一方で海外市場の展開にともなって(プラットフォーム)規模が拡大していきます。

―― 先日ドコモが発表した中期経営計画の中で、新規事業領域で約1兆円の収益増を目指すとされましたが、ここではグローバル市場連携のものもかなり出てくる、ということでしょうか。

辻村氏 そうなると思います。

付加価値の創造とパイプの信頼性で「ダムパイプ化」を避ける

―― スマートフォンを筆頭とする本格的なスマートデバイス時代になったことで、キャリアの優位性をどう築くかが従来よりも難しくなっています。2012年、ドコモはどのように競争優位性を構築していくのでしょうか。

辻村氏 スマートデバイス時代にはキャリアはダムパイプ(土管)化するといった見方もありますが、我々としてはそれは何としても避けたい。キャリアの強みはお客様にとって最も身近な位置にいることですから、そこで生み出せる付加価値があると考えています。

 ダムパイプ化を避けて付加価値を作るためには、端末に関しても発言力がなければならないと思いますし、コンテンツやクラウドの分野にも積極的に投資する必要があります。キャリアは総合力を高めて、お客様のために付加価値を作っていくことが大事になっていくでしょう。

―― いかに付加価値を作るか。新規市場の創出に貢献するかが、キャリアの競争力を作る上で重要になっていくわけですね。

辻村氏 ええ。例えば、M2M市場への取り組みなどは好例ですね。ドコモではPS Vitaでソニー・コンピュータエンタテインメントと提携してますし、ヘルスケア分野ではオムロンと提携しています。モジュールとサーバのサービスを組み合わせることで、新たな価値と市場を創り出せるわけです。

 今後のモバイルIT市場は、スマートフォンやタブレットのようにお客様から目に見えるところだけとは限りません。さまざまなパートナーと提携しながら、多くの付加価値を作ることが重要なのです。

―― 先ほど「ダムパイプ化は避けたい」とおっしゃいましたが、逆説的に言えば、今後の新市場創出で必須のパートナーとの連携では、インフラ品質がすごく重要になってきますね。信頼性の高いパイプ(通信インフラ)があることが大前提になる。

辻村氏 ダムパイプ化を避けるというのは、(インフラ部分となる)パイプラインを軽視することではません。むしろ逆で、パイプラインの品質や信頼性が高いことが大前提ですよ。ここがしっかりしていてはじめて、多くのパートナー企業と提携して、さまざまな付加価値をお客様に提供して行けます。すなわち、ダムパイプ化を避けられるのです。

―― 2012年はどのような1年にしたいですか。

辻村氏 2015年ビジョンでドコモは「総合サービス企業」になることを掲げています。そこで2012年は、いろいろなパートナー企業と連携してモバイルITのパワーやサービスを使っていきたい。お客様にとっては、モバイルITのサービスがより身近で、進化した形で体験していただける年になるでしょう。

 スマートフォンやタブレットといった見えるものだけでなく、見えないところにもモバイルITの世界が広がっていきます。2012年は、そのための重要な1年にしていきます。

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