ドイツ・ベルリンで9月6日から11日(現地時間)にかけて開催された「IFA 2013」では、ソニーが「Xperia Z1」を、Samsung電子が「GALAXY Note 3」を発表した。また、ソニーはXperiaなどのスマートフォンと接続できるレンズ型カメラの「DSC-QX10/100」を、Samsung電子は腕時計型の周辺機器「GALAXY Gear」をスマートフォンとともに披露している。
Xperia Z1は、Xperia Zの後継機となるフラッグシップモデルで、ディスプレイやカメラを徹底的に強化したスマートフォン。ソニーの持つ技術を生かし、F値が2.0の「Gレンズ」や、デジカメと同じサイズの1/2.3型センサー「Exmor RS for mobile」に加え、サイバーショットでおなじみの「BIONZ for mobile」を採用している。ディスプレイは6月に上海で発表された「Xperia Z Ultra」と同様の「トリルミナスディスプレイ for mobile」で、映像をクッキリと鮮やかに補正する「X-Reality for mobile」も搭載している。

「Gレンズ」「Exmor RS for mobile」「BIONZ for mobile」という、ソニーのデジタルイメージング技術の三種の神器を取り入れ、カメラの大幅な画質向上を図った(写真=左)。カメラは機能の拡張にも対応しており、標準ではFacebook上で動画中継を行う「Info-eye」や、シャッターを押す前後1秒の61枚を保存する「タイムシフト連写」、ARで3D画像を合成して撮影する「ARエフェクト」などに対応する。追加したアプリも、この画面に表示され直接起動できる(写真=右)GALAXY Note 3は、紙のノートをデジタルに置き換えるというNoteシリーズのコンセプトを深めた1台。アナログの質感を再現するため、背面にはレザー調の素材を採用した。同シリーズの象徴的な機能とも言えるSペンの反応速度や機能も強化。ペンを浮かせたままボタンを押すと、Sペンを活用する各種機能のメニューが現れる「Air Command」も搭載した。

背面にはレザー調の素材を採用し、手触りも高級な紙のノートに近づけた(写真=左)。Air CommandはSペンの新機能。画面から浮かせた状態でボタンを押すと、各種機能へアクセスできるメニューが現れる(写真=右)ソニーは「普及価格帯のサイバーショットが鈍ってきている中で、スマートフォンで写真を撮りたいお客様が他社に流れるのは、絶対にあってはならない」(ソニー 代表執行役社長 CEO 平井一夫氏)という考えに基づき、Xperia Z1のカメラに磨きをかけた。コンパクトデジカメの市場が縮小する中、ユーザーが他社の端末に流れるのは避けたい。そのような思惑があり、Xperiaを受け皿にしていく構えだ。
実際、ソニーモバイルにはデジタルイメージング部門の人間を受け入れ、「うちの新兵を鍛えてもらい、そのノウハウを入れることを繰り返してきた」(シニアバイスプレジデント UXデザイン・企画部門 部門長 田嶋知一氏)。ソニーモバイルの社長兼CEO、鈴木国正氏も「ディスプレイも同じように動いている。オーディオも実際にはコミュニケーションをずっとしている。One Sonyとしての組織体制はできている」と語っている。

Xperia Z1をはじめとする新製品の数々は、プレスカンファレンスで平井社長が自ら説明した(写真=左)。開発を率いてきたソニーモバイルの田嶋氏。Z1の“1”には、One Sonyの初号機という意味合いが込められている。先代のZはその序章と言える“Z0”だった(写真=右)Samsung電子もスマートフォンやモバイル部門が会社の中心になって製品開発を進めているという点は共通しているが、方向性はやや異なる。例えば、IFAにも展示されていたミラーレスカメラ「GALAXY NX」は、どちらかというと、カメラのUI(ユーザーインタフェース)や通信機能をAndroidによって強化した商品。同様に光学10倍ズーム対応の「GALAXY S4 Zoom」も、モバイル部門が中心に開発を行っている。
かつてSamsung電子関係者は筆者に「カメラの性能は日本メーカーに一日の長がある。うちは、スマートフォンのノウハウを生かし、違ったアプローチで攻めたい」と語っていた。つまり、ソニーとは逆に、世界トップシェアを誇るスマートフォンで培ったUIや通信技術を、カメラに付加していくということだ。この部分は、モバイル部門が突出しているSamsung電子と、オーディオやカメラに強くスマートフォンの分野ではこれからのソニーとの違いと言えるだろう。
一方で、2社に共通している方針は、周辺機器を含めたスマートフォンの世界観を作っていくということだ。平井氏は「(レンズ型カメラの)QXシリーズもそうだが、スマートフォンの体験をどう広げていくのか。アクセサリービジネスはPlayStationもそうだし、スマートフォンもそうだが利益率が高い。クリエイティブなアクセサリーを展開していくことを考えている」と語っている。
また、平井氏は「One Sony」の方針を掲げ、上記のカメラ以外でも徹底してスマートフォンとその他の製品の連携を推し進めている。代表例が、プレスカンファレンスでも発表された「One Touch」というソリューションだ。これは、NFCでスマートフォンとほかの機器を連携させる仕組みのこと。もちろん、実装は他社にもできるが、NFCをテレビやPC、オーディオといった幅広い機器に対応できるのは、総合家電メーカーであるソニーならではだ。ソニーの代表執行役社長 CEO 平井一夫氏によると、「今年中に100点ぐらいにOne Touchが入り、お互いにコンテンツを行き来する」世界が実現するという。
対するSamsung電子は「GALAXY Note 3の完璧なコンパニオン(お供)」(共同CEO JK・シン氏)というスマートウォッチのGALAXY Gearで、GALAXY Noteを補完していく。GALAXY Noteは大画面で映像が見やすい半面、カバンの中からサッと取り出しにくいのがネックだ。電話をするにも、少々バランスが悪い。こうした弱点を腕に装着するGALAXY Gearで解決するというわけだ。ソニーの開発したスマートウォッチ「SmartWatch MN2」などと同様、着信を確認したり、アプリで機能を拡張したりするほか、マイクとスピーカーを搭載し、ヘッドセットの代わりにも利用できる。また、カメラも搭載しており、メモ程度の画質であれば、腕元でも撮影可能だ。
どちらのメーカーも、スマートフォンの性能向上がひと段落した今、周辺機器の世界に活路を広げようとしている姿が印象的だ。2社の端末や周辺機器は、秋冬商戦に向け日本市場にも投入される。発表や発売が、今から楽しみだ。一方で、IFAにはレノボやAcerといったスマートフォンの新興メーカーも新製品を出展していた。特にレノボは、中国市場でシェアを固め、今年に入ってグローバルではソニーを抜きトップ4の位置につけた。これらのメーカーがさらに力をつければ、ソニーが伸びている欧州やアジアでの強力なライバルになる。伸びしろのある中国市場での成長は、シェア1位のSamsungにとっても脅威になりつつある。
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