もはや「異次元の域」──新LaVie Zはなぜこんなに軽いのか(2/2 ページ)

» 2013年10月29日 22時36分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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「軽さ」のための、カラーとボディデザイン

 最後に「軽い」「でも安心で強固」を表現するデザインにも工夫を加えた。

 まずは「軽い黒」。新カラーとして採用した「ストームブラック」は、ビジネスユーザーや先進的なユーザーへ訴求すべく用意したマーケティング的要素とともに、軽さのための黒となるよう工夫を加えた。強固ながら軽く見える黒色の調色、適度にサラリとした手触り、手にしても皮脂の付着が目立ちにくい、モバイルユーザーにとって絶妙な質感となる「黒色」に仕上げた。

photophotophoto クリア調かマット調か(ツヤ感)、サラサラかザラザラか(触感)、隠蔽性の高低、そして色味(青っぽい黒/赤っぽい黒/緑っぽい黒)など、「軽い黒」の表現のため50以上の試作を実施したという。天面と底面で素材が異なるため、それぞれ異なる調色を行う必要もあったようだ(写真=左、中央) 三角形の排熱口になったのも、軽さ追求と強度確保のためと知れば「フーン。別にどうでもいい」ことではなくなる(写真=右)

 「塗料自体の隠蔽性向上と質感のバランス、色味調整のため50以上の試作テストを実施しました。特に質感はツヤ感(つや消し傾向)と触感(ビーズ径のサイズ)をどうバランスさせるか、そして隠蔽性向上に必要な塗料コート数が増えると今度は重量増加につながってしまうため、隠蔽性を高めつつも塗料自体の調合で“重くしない”ための取り組みが特に苦労しました。なお、素材が異なる天面パネルとアッパーパネル(マグネシウム合金)、ロワーパネル(マグネシウムリチウム合金)は同一塗料では色味・質感が異なってしまうので、同じ色を出すためそれぞれ異なる塗料を調色しています。ちなみにムーンシルバーは表も裏も同一塗料なので、ブラックは少し手が込んでいることになります」(NECデザイン&プロモーション LaVie Zデザイン担当の小林猛氏)

 無駄のないシンプル/プレーンなデザインも意図したものだ。第1世代の「カプセル」をモチーフとしたわずかに丸みを帯びたフォルムから、イメージこそ大きく変わらないが、スパッと板を切り落としたかのようなフラットかつシャープさを強調するデザインを取り入れ、これにより軽さと堅牢さを演出する。特に天面パネルは樹脂素材(マグネシウム合金は電波を通さない。Wi-Fi/Bluetoothでの無線通信のため、電波を通す素材が必要)とマグネシウム合金の境目をなくした“ハイブリッド成形”によりスパッとフラットな造形の印象を際立たせた。このほか細かいところでは、底面のゴム足を円形から四角形に、スピーカーホールも同じく円形から菱形のものに変更。左側面の排熱スリットも斜めの長方形ホールから三角形を組み合わせたホールに形状を変更した。

 排熱ホールの形状は、外観上の意図とともに強度の確保も兼ねている。三角形を上下に組み合わせることで生まれる直線部分のボディ内部にリブを設け、ボディの強度を高めた。また、ディスプレイを収める天面パネルも断面二次モーメント値を高める(曲げモーメントに対する物体の変形のしにくさを表す値)工夫を施した設計に最適化し、第1世代の約2.2倍強固になったという。超軽量だが、手にして振っても不安を感じないLaVie Zの剛性感はこういった隠れた細かい部分で確保されていることになる。

photophotophoto デザインも、ボディカラーも、「徹底した軽さの追求」に通じている

 もう1つのタッチモデルも、昨今のニーズに応じた想定ユーザー設定し、それぞれのコンセプトを個別に切り分ける方針で用意した。開発段階の同社調査によると、重くなるならタッチは不要/多少重くなってもタッチがほしいとする比率が二分したとのことで、2バリエーションでの展開を決めたようだ。

 徹底した軽さを望むハイクラスモバイルPC利用層を想定した高解像度モデルに対し、タッチモデルは学生層などやや広めに想定ユーザーを設定し、タッチ+高解像度とより長時間動作の仕様に分けた格好だ。とがった高解像度モデルに比べるとやや丸い仕様かもしれないが、それでもタッチ対応Ultrabookで世界最軽量(同上)を実現し、こちらも「徹底した軽さ」を前面に押し出しており、かつ大容量の6セル/4000mAhのバッテリーを内蔵する仕様としたため、最大14.5時間と高解像度モデルより長時間動作を実現するのもメリットの1つである。

photophotophoto タッチモデルもポン付けで実現したわけではない。薄型化や操作性向上に寄与するダイレクトボンディングのほか、内部構成部品のフィルム材質まで変更して軽量化を図っている。ディスプレイ面の強度も形状工夫により第1世代比で約2.2倍に高めた(写真=左、中央) タッチモデルとノンタッチモデルは組み立て方法がまったく違う。こういう部分から、タッチモデルも高解像度モデルに劣らない特別モデルであることが伺える(写真=右)

 タッチモデルはスマートフォンやタブレットで用いられる「ダイレクトボンディング」と呼ぶ、液晶パネルとガラスを樹脂で直接貼り付ける製造方法を13.3型とスマートデバイス比で大型となる本機にも採用し、薄型化とソリッド化、そして操作性向上を果たした。また、タッチモデルは第1世代およびタッチ非対応の高解像度モデルとは組み立て方法がまったく異なるため、設計を一新する必要もあった。

 「ノンタッチモデルはディスプレイ部品を天面パネル/筐体側へ組んでいく方法ですが、タッチモデルはダイレクトボンディング工法を採用するため、同じ設置方法ではケーブル配線などが困難になります。このため逆向きにディスプレイベゼル側へ組む方法としました。組み立て方法がまったく異なるので、この部分は一から設計となったのが設計上でもスケジュールでもとても苦労しました。ただ、ノンタッチモデル比で厚さをプラス1ミリに押さえることができました。見た目はほとんど変わらない仕上がりになっています」(NECパーソナルコンピュータ LaVie Z設計担当の梅津秀隆氏)

photo 高解像度モデル(左)とタッチモデル(右)の厚さを比較。数値では1ミリ厚いが、見た目はほとんど変わらない


photo 指2本で“ひょい”と持ててしまうほどのスペシャルな軽さである

 このように第2世代LaVie Zは、当時究極だった第1世代からさらに「数グラム単位の積み重ね」によりさらなる軽量化を果たした。13型で800グラム未満、厚さ15ミリ未満、NEC製PC標準の堅牢性の確保、通常はトレードオフとなってしまう項目を解決する「匠の技」を詰め込んだ、近年まれに見るとてもぜいたくなPCに仕上げたことが伺える。

 「コモディティ化が進むPCは、部品さえ調達して組めばある程度の形にはなり、差別化は見た目のみになりがちです。ただ、この考え方ではLaVie Zは生まれません。“ぶっちぎり”で他社が追いつけない軽量化──の差別化を突き詰めました。実は開発途中の数値として820グラムという値を報告したのですが、上から激怒されましてね。“何を言っているんだ。何がなんでも800をキレ!”と。必然的に800グラムを切ることが目標になりました」(NECパーソナルコンピュータ LaVie Zプロジェクト管理担当の飯田昌暢氏)

 「商品企画としても、第1世代より“これで十分と思うな”という気持ちで新モデルを企画しました。ただ、第1世代は900グラムを切ってほしいとオーダーできましたが、新モデルは当時極限だったものからさらにどこまで軽くできるか──商品企画側ではもう分からず、実は明確に何グラムにとオーダーしたわけではありませんでした。LaVie Zのようなとがった商品はズバッと刺さるサプライズが必要。さらにそのサプライズは買って1週間で慣れてしまう程度では仕方ない。795グラムの軽さは、手にしていただくたびに“ムフフ、軽いぜ”と向こう数年は感じていただけるはずです」(NECパーソナルコンピュータ LaVie Z商品企画担当の中井裕介氏)

photo LaVie Zのルーツとなったマボロシ(未発売)の試作機「MGX」。キーボード付きで360度回転ディスプレイヒンジを備えている。OSはAndroid、サイズは215(幅)×109(奥行き)×9.9(厚さ)ミリ、重量は約350グラム

NEC Direct(NECダイレクト)

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