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» 2011年04月08日 23時51分 UPDATE

SIMロック解除の意味とは:料金は応分負担すべき――日本通信が考える“フェア”なデータ通信

現在のモバイルデータ通信はフェアじゃない――そんな思いから生まれた日本通信のSIM製品「b-mobile Fair」は、その名のとおり、公平な通信サービスを目指したもの。同社はSIM市場をさらにリードしていくことを狙う。

[田中聡,ITmedia]
photo 「b-mobile Fair」

 日本通信が、4月15日にSIMの新製品「b-mobile Fair」を発売する。ドコモの3Gネットワークにフル対応したb-mobile Fairを、SIMロックフリー端末やFOMAカードが利用できるスマートフォンなどに挿入すると、下り最大7.2Mbps/上り最大5.4Mbpsの通信が可能。1Gバイト単位で通信でき、9800円のパッケージを購入後、1Gバイトあたり8350円をオンラインチャージすることで継続利用できる。パッケージとチャージ分の有効期限はいずれも4カ月(120日)。

 同社は4月8日にb-mobile Fairに関する説明会を開き、同製品の狙いや、SIM市場に対する考えをあらためて明かした。

アンバランスなビジネスモデルは破綻する

 日本通信 代表取締役社長の三田聖二氏はまず東日本大震災について言及し、「今回の震災で、データ通信がいかに大切であるかを認識した」と話す。「震災では電話が使えないことが多かった。インターネットのサービスは、標準的に世界一般で使われている。モバイルIPフォンも含めてインターネットを利用できる環境が大切だ」と強調した。

 三田氏は、震災後にモバイルIPフォンに対応する同社の「IDEOS」215台を被災地の病院などに提供したことを明かした。「IPフォンで協力できないかと総務省と話をした。215台を登録して、箱を開けたらすぐに使えるようにした。メディア向けには発表しなかったが、困っている場所で使ってもらいたかった」

photophoto 日本通信 代表取締役社長 三田聖二氏(写真=左)。東日本大震災の被災地へ「IDEOS」が届けられた(写真=右)

 日本通信がb-mobile Fairを開発したのは、現在のモバイルデータ通信が「フェアじゃない」と同社が考えたことが発端だ。「数%のユーザーが帯域の大半を占有しており、あまり通信をしない人も同じ料金を払ってヘビーユーザーをサポートしている。こうしたビジネスモデルだと、バランスが崩れてどこかで破綻する」と三田氏は憂慮する。同氏は「MVNO制度でキャリアのネットワークをオープンに使えるので、SIMロック解除の流れに乗って、新しい市場にアイデアを紹介したい」と意気込む。

一般ユーザー42人が1人の超ヘビーユーザーを支えている

photo 日本通信 代表取締役専務 CFO 福田尚久氏

 日本通信は約1年前の2010年4月5日に、300Kbps強の通信に対応した「b-mobileSIM U300」を発売し、以降は通話も可能な「talking SIM U300」、ドコモのネットワークを使ってiPhone 4を高速で利用できる「talking b-microSIMプラチナサービス」など、さまざまなSIM製品を発売してきた。日本通信 代表取締役専務 CFOの福田尚久氏によると、U300が一番の売れ筋だという。一方で、「通信速度の速いSIMが欲しい」という要望も多く挙がっていたことから、今回のb-mobile Fairを提供するに至った。

photophoto b-mobileシリーズのヒット商品「U300」(写真=左)。これまでに発売してきたSIM製品(写真=右)

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は、料金が一律の定額サービスと、2段階の定額サービスを提供している。一律定額と2段階定額サービスのグラフが交わるポイント(損益分岐点)の通信量は、ドコモとKDDIが約14Mバイト、ソフトバンクモバイルが約7Mバイト。つまりこれらのデータ量を下回る通信をしている人は、2段階定額サービスの方が料金を抑えられる。

photophoto ドコモ、au、ソフトバンクのパケット定額サービス(写真=左)。一律の定額サービスと2段階の定額サービスの損益分岐点(写真=右)

 ただ、ドコモは上位1%の超ヘビーユーザーがトラフィック全体の30%を占めているなど、これらの定額サービスが必ずしも公平とは言い難いと同社は考える。モバイルデータ通信のトラフィックは、2015年には2010年の26倍に伸びるという観測もあり、「サービス事業者として(公平性を確保できるよう)真剣に取り組まないといけない」と福田氏は力を込める。同氏によると、超ヘビーユーザーの通信量は、一般ユーザーの42人分に相当するという。結果として超ヘビーユーザーも一般ユーザーも同じ6000円前後の料金を払っているので、日本通信は「通信料金は応分負担すべき」と考える。

 また、ドコモのデータ通信はPeer to Peerなどのファイル交換や、SkypeなどのVoIPアプリが利用できないなどの制限があるが、b-mobile Fairにはこうした制限は設けられていない。さらに、ドコモは3日間の通信量が300万パケットを超えるユーザーに対してネットワーク規制を実施しているが、b-mobile Fairでは規制されない。こうした仕様も“フェア”につながるといえる。

photophoto b-mobile Fairには通信速度やプロトコルの制限がかけられていないほか、通信規制も実施されない(写真=左)。パッケージとチャージ分、いずれも有効期限は4カ月(写真=右)

 b-mobile Fairの投入で、さらなるユーザー増加が予想されるが、日本通信は3月に、年間ベースで換算して2億円以上のコストをかけて帯域を増やしている。「ユーザーが増えるにつれてネットワークを増強しており、今も毎月1〜2回ほど増やしている」(福田氏)。また、ドコモのHSDPAは2011年6月に下り最大14Mbpsに対応するが、「b-mobile Fairはドコモネットワークの最高スペックに対応するので、端末次第では14Mbpsの通信に対応する」(福田氏)とのこと。

通信が月754Mバイト未満ならb-mobile Fairの方がお得

 米国の携帯事業者 AT&Tのスマートフォンユーザーの通信量は、月に200Mバイト以下で、日本通信のユーザーも同様の傾向にあるという。日本全体だと、「ネットワークの品質がいいのでさらに使っているという事情もあるが、毎月300Mバイト弱の通信量」(福田氏)だという。福田氏はドコモのスマートフォン向け定額料金の6300円(定額料5985円+ISP料金315円)を例に挙げ、b-mobile Fairなら6300円で754Mバイト分の通信ができることから、「毎月の通信量が754Mバイトを超えなければb-mobile Fairの方がお得」とアピールする。プラチナサービスでも754Mバイトを超える人はいるが、少数だという。

 b-mobile Fairの有効期限を4カ月、1Gバイトあたりのチャージ料を8350円としたのは、「1Gバイトの部分をしっかりと使っていただきたいから。1〜2カ月にすると使い切らない場合があるので、料金と期間のバランスを考えて最適値を出した」と福田氏は話す。

 チャージはWebサイト「My b-mobile」や、Android向けアプリ「bCharge」から行える。bChargeはAndroid マーケットからダウンロード可能。ウィジェットも用意し、どの程度のデータを消費しているかがアイコンから分かるようになっている。都度チャージはもちろん、オートチャージにも対応する。

photophotophoto Webサイト「My b-mobile」(写真=左)や、Android向けアプリ「bCharge」(写真=中)からチャージができる。bChargeのウィジェットに、残りのデータ量が青丸で表示される(写真=右)

 b-mobile Fairの利用シーンについては、b-mobileWi-Fiと組み合わせてWi-Fiルーターとして活用、IDEOSと組み合わせてWi-FiルーターやIPフォンを活用、タブレットの「Light Tab」と組み合わせてテザリングや動画視聴を行う、USB型データ端末やSIMスロット付きPCと組み合わせて通信、SIMフリーやFOMAカード対応のスマートフォンと組み合わせて通信――などが想定される。福田氏によると、震災後の計画停電などに伴い、USB端末のニーズが増えているという。「モバイルWi-Fiルーターはバッテリーを気にする必要があるが、USB端末ならPCのバッテリーがあれば使用できる」(同氏)

photophotophoto
photophotophoto さまざまな機器と組み合わせて利用できる
photophoto 1カ月あたりの通信量が754Mバイト以内なら、他社のパケット定額サービスよりも得になる計算(写真=左)。b-mobile Fairのユーザー層はヘビー/レギュラー/ライトユーザーとしている(写真=右)

ドコモがSIMを販売したことは「嬉しい」

photo SIMロック解除が活性化することで、モバイル端末とSIM市場に新規プレーヤーが参入しやすくなる

 ドコモが4月1日以降に販売開始する端末はSIMロック解除機能を搭載するなど、SIMロック市場が活性化しようとしている。SIMロック解除が普及することで、日本通信はモバイルデバイス市場とSIM市場に新規プレーヤーが算入しやすくなるとみる。「今後は日本のメーカーが端末をキャリアに収めるのではなく、自社で端末を投入する時代になるのではないか。海外メーカーもさらに増えるだろう。競争すれば料金も下がって多様性が出てくる。そういう状況になったときに、SIMロック解除の意味が分かるだろう」(福田氏)

 三田氏は、ドコモが4月1日からSIMカード単体で販売することについて、「SIMはこういうふうに売るべきだと認められたといえるので、ドコモが日本通信を真似したことは嬉しい」と歓迎した。

 「SIMロック解除は、(例えば)ドコモのSIMでソフトバンクケータイを使えることが利点だと理解している方が多いが、実際はそれを超えたところに意味がある。データ通信の市場がオープンになり、今後はメーカーが自社ブランドと流通で製品を販売しやすくなる。これからその流れがますます加速するだろう」(三田氏)

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