第4回 “1000元スマートフォン”で激変する中国の携帯事情山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2012年11月26日 09時51分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 中国国内のスマートフォン販売が好調だ。出荷台数は昨年から倍増し参入メーカーも増えている。だが目立っているのはiPhone 4SやGALAXY S IIIといった海外メーカーのハイエンド製品ではない。「1000元スマートフォン」と呼ばれる低価格な製品が急激な勢いで伸びているのである。メーカー間の競争だけではなく事業者間のシェア争いも加わり、1000元スマートフォン市場はさながら戦国時代の様相を呈している。


世界最大のスマホ市場、中国で何が起きているのか?

 中国のスマートフォンの出荷台数は年々右肩上がりに伸びており、今や米国を抜き世界最大の市場になっている。例えば調査会社Canalysの2012年5月のレポートを見ると、2012年第1四半期の全世界のスマートフォン出荷台数は1億4600万台。このうち中国の割合は22%で、約5分の1にも達している。携帯電話総契約者数が2012年3月に10億人を超えた中国は、2Gから3Gへの移行も多いことから、スマートフォンの需要は今後まだまだ伸びるものと見られてる。一方、2011年まで1位だった米国は16%の2位に後退。各事業者がLTEスマートフォンを矢継ぎ早に投入し、またiPhoneの売れ行きも引き続き好調だが、急成長する中国に勢いで抜かれた格好だ。

 では中国国内の状況はどうなっているのだろうか。中国大手調査会社、EnfoDeskが2012年9月に報告した国内携帯電話販売台数の推移を見ると、2011年第2四半期の総販売数は約6780万台。これに対して1年後の2012年同期は6650万台であり、国内の総販売数の成長は横ばい、あるいは微減と成長は止まっているように見える。

 ところが内訳を見ると、2011年第2四半期はスマートフォンが1680万台で全体の販売台数の4分の1に過ぎなかったが、2012年同期は3820万台で倍増以上となり、割合も57.5%で過半数を超えている。つまりスマートフォンだけを見れば、この1年間で販売数は大きく伸びており、中国では国民の半分以上がスマートフォンを買う状況になっているのである。

photophoto 中国国内の端末販売数内訳(EnfoDesk資料より作成)。総販売数は横ばいだが。スマートフォンの比率が急増している(写真=左)。中国移動の売れ筋スマートフォン。三星(Samsung)や魔托羅拉(Motorola)、HTCに混じり、中興(ZTE)、酷派(Coolpad)、華為(Huawei)といった中国メーカー品も見られる(写真=右)

 では中国で売れているスマートフォンはどのような製品なのだろうか。2011年冬に発売された「iPhone 4S」や、2012年夏のヒットモデル「GALAXY S III」ももちろん販売数増の後押しをしているだろう。だが全体の数を引き上げているのは中国国産のスマートフォンなのだ。しかも「1000元スマートフォン」と呼ばれる、1000元台の低価格な製品が売れ行きの上位を占めているのである。

 例えば、2011年に中国で最も売れた1000元スマートフォンは、ZTEの「V880(Blade)」で、国内の販売台数は約300万台だったという。V880は3.5インチディスプレイのコンパクトな製品で日本でもソフトバンクから同系機が「Libero 003Z」として発売されたほか、欧州でも自社ブランド製品として多くの事業者が取り扱っている。コンパクトさと低価格が受け、発売後、1日で1万台が売れた日があるほどの人気商品になった。

 また、他にもLenovoの「A60」は2011年7月の発売から2カ月で100万台、Coolpad(宇龍酷派)は2011年内に「W706」が200万台、「E239」「D530」「D539」がそれぞれ100万台を突破するなど、国内メーカーのヒット商品は続々とミリオンセラーを記録している。Huaweiの「C8650」のように、2011年夏の発売から2012年春までの7カ月で販売数500万台を突破するなど、これら1000元スマートフォンは飛ぶ鳥を落とす勢いで売れまくっているのだ。

 国産スマートフォンが売れまくり、利用者が増えたことによって、それまで「国内メーカー品は2流品」と考えていた中国国民の意識も変わりつつある。また各社が相次いで低価格端末の開発競争を繰り広げた結果、品質はもちろんのこと、機能も高く、大手メーカー品に見劣りしないコストパフォーマンスに長けた製品が、次々と市場に投入されるようになった。

photophoto 2011年の1000元スマートフォンのベストセラー、ZTE V880(写真=左)。スマートフォン専業のCoolpadも主力は1000元台の製品だ(写真=右)

1000元スマートフォンとは?

 1000元スマートフォンの定義はずばり「価格が1000元台であること」。すなわち1000元から1999元、日本円で約1万3000円から約2万6000円までの製品を指している。中国の家電量販店や事業者の店舗へ行けばどこでも目立つのは、「1000元知能手機」すなわち「1000元スマートフォン」の広告で、2000元を超える中国メーカーの製品はほとんど見られない。性能が多少良くとも価格が2098元では店舗への来客が見向きもしないため、メーカー側も高くても1999元に収まるように価格設定をしているのだ。

 これに対しSamsungやNokia、Sony Mobile、Motorolaなど海外の大手メーカーはハイエンドモデルとして3000元、4000元といった製品を販売しているが、エントリー製品としてやはり1000元スマートフォンも用意している。これら海外メーカーは高機能で華やかなフラッグシップモデルを大々的にアピールして消費者の目を引き寄せつつ、実際は1000〜2000元台の製品を買ってもらうという戦略を取っているようだ。例えばSamsungのGALAXYシリーズの中で、中国で2011年に最も売れたのはミッドレンジの「GALAXY Ace」だという。

photophoto 中国電信の1000元スマートフォンの例。ほとんどが国産品だ(写真=左)。China Mobile(中国移動)の上海でのキャンペーン。Huawei、Lenovo、ZTE、Coolpadの1000元スマートフォンが無料になる(写真=右)
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