シャープが5月20日、スマートフォン事業説明会を開催し、同社の2011年夏モデルの狙いと今後の事業展開について説明した。
周知の通り、日本ではスマートフォン市場が急速に拡大しており、国内における2011年度のスマートフォンの比率は40.6%で、2012年度には出荷台数が過半数を超えるとの予測もある。さらに、OS別では2010年度にはAndroid端末が57.4%のシェアを占め、今後もさらにシェアを伸ばすことが予想される。2010年度の国内携帯電話出荷台数シェアは、シャープが6年連続で1位の22.8%、スマートフォンは2位の24.3%を獲得。同社は2010年、国内でスマートフォンを計200万台出荷した。
スマートフォン――というとハイスペックで最新の機能を積んだモデルが連想されるが、シャープ 執行役員 通信システム事業本部長の大畠昌巳氏は「ユーザーが重視するのは操作性と基本機能で、フィーチャーフォンに対するニーズと大きな違いはない」とみている。そこで、「今後も高機能で最新サービスに対応したスマートフォンは提供していくが、スマートフォン普及期を迎えるにあたって、基本性能の向上も重要だ」と同氏は考える。
こうした背景を受け、シャープはスマートフォンの差別化を図るために「ブランドの提案」「AQUOS連携」「基本機能の強化」「サービス連携強化」という4つのポイントに注力する。
シャープはこれまでNTTドコモ向けには「LYNX」、ソフトバンク向けには「GALAPAGOS」ブランドを提案してきたが、今回の夏モデルから「AQUOS PHONE」ブランドに変更。ドコモ向けに「AQUOS PHONE SH-12C/f SH-13C」、au向けに「AQUOS PHONE IS11SH/IS12SH」、ソフトバンク向けに「AQUOS PHONE 006SH/THE HYBRID 007SH」の計6機種を供給する。「魅力を端的に伝えられる、分かりやすいブランドを提案したい」とシャープが考えた結果、テレビやレコーダーでおなじみのAQUOSをスマートフォンにも採用した。
シャープはかつてワンセグ機能を強化した「AQUOSケータイ」を開発していたが、AQUOS PHONEではシャープのAQUOSブランドの家電連携機能「スマートファミリンク」や、液晶テレビのAQUOSで培われた高画質エンジン、高精細液晶を訴求していく。スマートファミリンクでは、無線LANを利用し、AQUOS PHONEで撮影した写真をDLNA対応のテレビに表示したり、DLNA対応のBlu-ray Discレコーダーで録画した番組をAQUOS PHONEで視聴したりできる。この機能はプリセットされている「Smart Familink」アプリから利用可能。ただし、SH-12Cは後日バージョンアップで対応する(対応時期は未定)。
今後は、AQUOS PHONEに表示した写真をフリックするだけで、テレビ(AQUOS)で再生できる「スマートジャンプ」や、AQUOS PHONEで音声着信、メール受信したことをテレビに通知する「AQUOSインフォメーション」も提供する予定。この2つの機能もSmart Familinkアプリから利用できるが、テレビ側がまだ対応していない。展示場では既存のAQUOSのソフトを書き換えることで対応させていたが、今後は新製品から順次対応させる見通し。
「DLNAと聞くと、設定が難しそうなイメージを抱かれやすい」(説明員)との考えから、Smart Familinkの画面の案内に従っていくだけでAQUOS PHONEとAQUOS機器を接続できるインタフェースを用意した。このアプリからAQUOS PHONEの写真や動画をAQUOSで再生するスマートジャンプを利用できるほか、AQUOSブルーレイで録画した番組をAQUOS PHONEで視聴できる。AQUOSブルーレイで録画した番組はHDサイズで再生されるが、フレームレートは20fpsに落ちるので、ややゆっくり再生される。また、音楽もAQUOSに送信可能なので、テレビから音楽を出力して楽しめる。
なお、着信情報をAQUOSに表示するAQUOSインフォメーションでは、プライバシーに配慮して、着信相手の名前やメールの一部が表示されることはない。着信があったことのみが通知される。
2010年秋冬モデルでも、シャープはドコモ、au、ソフトバンク向けにAndroid端末を供給したが、フラッグシップモデルの「LYNX 3D SH-03C」「IS03」「GALAPAGOS 003SH」のOS、チップセット、ディスプレイサイズなどの基本仕様にはバラツキがあった。今回の「SH-12C」「IS12SH」「006SH」は、いずれもAndroid 2.3、4.2インチの大型液晶、1.4GHzのチップセット、540×960ピクセルのQHD液晶を搭載し、仕様が共通化されている。また、これら3機種ではQHDサイズの高精細な3D液晶や、800万画素CMOSのツインカメラを搭載するなど“3D”の楽しみも訴求する。
スマートフォンの新機軸として提案するのが、フィーチャーフォンのスタイルを持つAndroid端末だ。au向けのIS11SHにはテンキーボードを搭載したスライド型、ソフトバンク向けの007SHにはテンキーボードと回転2軸の折りたたみスタイルを採用した。OSはAndroid 2.3で、従来のケータイと同様の使い勝手を目指した。フラッグシップの3機種は順当に進化したという印象だが、IS11SHと007SHの方が話題性は大きそうだ。なお、IS11SHのテンキーは終話・発話キーを備えておらず、文字入力が主な用途となるが、007SHのテンキーは終話・発話キーも備え、ダイヤルキーの長押しで該当する行のアドレス帳を呼び出せるなど、よりフィーチャーフォンに近い使い勝手を実現している。
世界初のワイヤレス充電「Qi(チー)」に対応したSH-13Cも、意欲的な取り組みが実を結んだモデルで、同梱の充電器に端末を載せるだけで充電が開始される。本体裏側のQiロゴ部分を充電スペースに合わせて置けばよい。バッテリーと充電台が備える送電コイルを磁力で合わせる「磁気結合」の仕組みを利用して電流を起こし、充電が可能になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.