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» 2010年01月14日 17時30分 公開

山谷剛史の「アジアンアイティー」:Googleは撤退し百度はクラックされる──混迷する中国検索サイト事情 (2/2)

[山谷剛史,ITmedia]
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「中国はハッカー被害国」という政府公式コメント

中国のインターネットユーザーが使う検索サイトのシェア。ユーザーの経験が長いほどGoogleを選ぶ割合が高い(出典:CNNIC)

 実をいうと、中国のインターネットユーザーに占めるGoogle利用率は少数だ。CNNIC(China Internet Network Information Center)の統計によれば、2009年9月末で3億6000万人が中国でインターネットを利用し、そのうちの7割が検索サイトを利用、さらに、その9割が百度を主に利用しているという。もちろん、Googleを併用するユーザーは多いが、「とりあえず百度、必要ならGoogle中国も」というスタイルが中国の典型的な検索スタイルだ。

 ただ、Googleをメインの検索サイトとして利用するユーザーの多くは、インターネット利用歴が5年以上という、中国では非常に経歴の長いヘビーユーザーだ。彼らの中には、百度を絶対に使わないケースも少なくない。彼らは、Googleの中国撤退について、「中国がダメになったらGoogle日本を使おう」という声も上がりはじめている。

 筆者と親交のある中国人PCユーザーにはヘビーユーザーが多く、全員がGoogleを利用している。彼らは「Googleが中国から撤退するなんてあり得ない。考えられない。もし撤退しても、可能な限りgoogle.comを使い続ける」と口をそろえる。ただ、その一方で、老人学校でPCを学んでいるおじいさんとおばあさんに「どうよ?」と聞くと、「教科書には百度を使うって書いてあるから百度を使うよ。Google?よくわからん」とGoogleが撤退しても関係ないようだ(この、おじいさんとおばあさんがPCを学ぶ事情については中国のじいちゃんとばあちゃんがPCを学ぶを参照のこと)。

 ちなみに、中国でPCユーザーの多くが頼りにしているネットカフェでは、PCはWebブラウジングするものではなく、チャットや音楽、映画の視聴、オンラインゲームに使うものだったりする。いくつかのネットカフェを見てみたものの、置いてあるPCには、百度もGoogleもブックマークされていなかった。

 この記事を書いている14日になって、中国のニュースメディアは、発端になったGoogleオフィシャルブログの発表内容を忠実に掲載するようになった。各ブログや掲示板などに転載され、オフィシャルブログの画面キャプチャをそのまま張り付けた記事も登場した。ただし、Googleの行動を「西側諸国のごく一部の人権活動家が評価している」と解説するメディアも多い。

 なお、中国政府は14日になってようやく、中国国務院の王晨氏が「現在のインターネットは、デマや虚偽情報があふれている。インターネットメディアは秩序を守り情報を伝達する必要がある。ポルノ情報、ハッカー攻撃、ネット詐欺などの脅威に中国政府は立ち向かわなければならない。中国はハッカーからの攻撃を受ける被害国であり、健全なネット社会を構築しなければならない」という公式コメントを発表している。

ちょうどそのとき、百度は……

新聞や主要メディアでは百度のニュースは大きく紹介されるが、Google騒動の扱いは小さい

 今回の“Google騒動”とは関係ないが、Googleが撤退の可能性を明らかにする前日の1月12日午前中に、百度がアクセスできなくなる事例が報告された。一時的にアクセスできても、イラン国旗を背景に「イランサイバーアーミーによりサイトはハッキングされた」というメッセージが表示される状況だったが、これは、イランサイバーアーミーが米国のDNSサーバを攻撃して、「baidu.com」のレコードを書き換えたことが原因とされている。百度がアクセスできなくなるトラブルは過去になく、中国のメディアはこの事故を大きく扱った。

 この事故の分析記事では、アメリカとイランの2国間の揉めごとで、百度がとばっちりを受けたと解釈されているが、中国人ハッカーも報復として同日14時ごろまでに、政府教育機構サイトを含む10カ所のイラン政府系Webサイトを攻撃したと中国では報じている。ただ、この攻撃を紹介した記事のコメントの多くは、悪いのはイランではなく、インターネットを一元管理しようとする米国に問題ありという論調だ。イラン国内のWebサイトに対するサイバー攻撃についても「問題は米国にあり、イランへのサイバー攻撃は控えるべき」という書き込みが目立った。

 原因は異なるものの、いや、異なるだけに続いて起きた中国の主要検索サイトの騒動に、「2010年も中国のインターネット業界は大荒れになりそうだ」と多くのIT関連メディアは、“2010年も”危機感を強くしているという。

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