両親が普段PCでやっているのは、Webチェックと写真整理だ。コンパクトデジカメを入手して以降、外出するたびに喜んで写真を撮ってきてはPCに取り込み、その中から気に入った写真をプリンタで印刷して(ときにはL版だけでなくA4サイズに引き延ばして)アルバムや壁に飾っている。
前述のように、Webアクセスに関してはPCとできることに大差ないため、iPadを使う意義は見出せなかったようだ。1日1〜2回程度、ちょこっとPCに触れる程度なので、iPadの「手軽に起動して調べ物」というのはそれほどメリットにはならない。しかも実家の場合はノートPCのほうが画面が大きくて見やすく、「Google Mapsで経路検索してもPCのほうが情報量が多くて分かりやすい」と両親は指摘する。
例えば、鉄道の経路検索を行うと、iPadでは経路が一種類しか表示できないうえ、移動ガイドを開始しない限り詳細も確認できない。しかしPCでは複数の経路候補が出るほか、それぞれのルートの概要や所要時間が一望できる。言われてみると、確かにPCのほうが便利に思えてくる。
そして最大の難関は「デジカメとiPad」だ。iPadでは4月末にデジカメで撮影した写真をメモリカード経由で取り込む専用オプションが提供される予定だが、現時点で同オプションは存在しないため、iPadに直接写真を取り込むことは不可能だ。
写真を転送する方法は現状2通りで、1つはWindows/MacのiTunesから特定フォルダ内の写真を転送する、2つめはFlickrやPicasaに一度写真をアップロードしてiPadにWeb経由でダウンロードする。だが両手段とも一度PCを経由することになるため、iPadだけで処理しようと考えたときは本末転倒だ。結局、写真整理という目的はiPadでは現時点で果たせない。
写真についてはもう1つ難しい問題がある。印刷だ。両親が使うプリンタ(エプソンのPM-T990)は無線LANに対応しているため、接続自体は問題ないのだが、印刷する方法が思い浮かばない。ところが調べたところ、エプソンが「Epson iPrint」という印刷用アプリを出しており(ただしiPhone用のみ)、アルバムなどに記録された写真をプリンタで印刷できるようだ。試してみたところ、L版、A4と複数のサイズを指定して印刷できる。使い方しだいでは、例えばGoogle MapsやSafariのWebブラウズ画面をスクリーンキャプチャし(ホームボタンと電源オフボタンを同時押し)、それをA4用紙に印刷すれば画面イメージをそのまま出力して資料にすることもできる。もっとも、本来の写真整理という目的が果たせていないので印刷機能自体は意味ないのだが、両親のおかげでプリンタ活用法が分かった気がする。
結論として、PCがそこそこ使える高齢者にiPadを勧めるのはまだ若干ハードルが高いように感じた。その理由の1つは、iPadを使うモチベーションになるようなコンテンツが圧倒的に不足していること、2つめは意外に用途が限定されており、iPadが持つ「操作性のよさ」を上回るデメリットが存在することが挙げられる。
あとは個人的感想だが、iPadはまだまだ価格が高い。前述のスペックのVAIOだが、いまであれば8〜9万円程度で購入できる(筆者が買ったときは2年前に13万円だった)。iPadのWi-Fi版がいちばん安価なモデルで499ドル(税金を入れると約550ドル)、これが最上位モデルになると+200ドル以上となり、価格面の大きな差はなくなる。では、いま筆者が両親にこうしたデバイスをプレゼントしようとしたとき、ノートPCとiPadのどちらを選ぶかといえば、おそらく前者だろう。先に挙げた2つの問題が解決されるまでには、まだ時間がかかりそうだ。
バックアップも大きな問題だろう。筆者は両親のノートPC(Windows Vista)をWindows Home Serverで自動バックアップするようシステムを組んでいる。一方、iPadのバックアップは母艦となるPCと同期する際に自動で行われるが、これにはPCが必要になる。大切なデータ(特に写真)を保持していくことが両親のPCを使うモチベーションになっているので、もしiPadを本格的に導入するのであれば、その内部データを守る簡単な仕組みを用意したい。
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