OSとプロダクトのさらなる進化 Appleが創りだすポストPC時代の新基準神尾寿のMobile+Views(3/4 ページ)

» 2012年06月12日 22時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

基本機能からSNSまで 強化されるコミュニケーション

 コミュニケーション機能の強化も、iOS 6の特長だ。

 まず、基本的なところでは「電話」「メール」などが強化される。

 電話機能では電話がかかってきたときに、電話を取らずにSMSでメッセージを送る「Reply with Message」機能を新たに搭載。これは電話相手に定型文で返信するだけでなく、折り返しで電話をかけるタイミングをリマインダーで登録までしてくれる優れものだ。また、電話などの通知を受けたくない時間帯を設定する「Do Not Disturb」機能も用意された。

 メール機能では、特別な相手からのメールを優先的に知らせる「VIPメールボックス」機能を搭載。VIPメールは優先的に通知され、専用のメールボックスに仕分けされるため、メールを取り逃すことを予防してくれる。

PhotoPhoto
PhotoPhoto コミュニケーション関連では、「電話」や「メール」のようにベーシックな部分も進化した

 iOS 6では、Apple独自のビデオ電話サービス「FaceTime」の進化にも注目だ。FaceTimeはiOSとOS Xのどちらからも使うことができ、新たなコミュニケーションサービスとして利用者が増えているが、これまでiOSでは“Wi-Fi環境でしか使えない”ことが難点だった。しかし、iOS 6では「FaceTime over cellular」機能が搭載され、携帯電話ネットワークでも利用できるようになる。

PhotoPhoto FaceTimeは携帯電話ネットワークでも利用可能に。日本でもKDDIとソフトバンクモバイルの対応に強く期待したいところだ

 なお、この機能は通信キャリア側が“受け入れるかどうか”という課題がある。日本でFaceTime over cellularが利用可能になるには、iPhoneの取り扱いキャリアであるKDDIとソフトバンクモバイルが受け入れる必要があるのだ。FaceTimeはとても優れたユーザー体験を実現しており、家族や親しい友人・恋人同士のコミュニケーションツールとして最適なものだ。日本の両キャリアにはぜひ、FaceTime over cellularの受け入れをしてもらいたいところである。

 そして、コミュニケーション関連でもう1つ重要な進化がある。それがかねてより噂のあった「Facebook」の内包だ。

 このFacebookの内包は、iOS 5のTwiiterの時と同じく、OSレベルで行われる。ユーザーはiOS側でFacebookにシングル・サインオンするだけで、カメラロールやアルバムの写真、Safariで閲覧しているWebサイトの情報、マップの位置情報などさまざまな情報を1タップで簡単にFacebookで共有できる。さらにApp StoreやiTunes StoreでもFacebookでコンテンツ情報の共有ができるようになるため、iPhone/iPadユーザーにとってFacebookがさらに身近で使いやすいものになりそうだ。

PhotoPhoto iOS 6ではOSレベルでFacebookに対応。いろいろな場面でFacebook連携が利用できる

「Passbook」と「Guided Acces」のインパクト

 既存機能の進化や洗練ではなく、新たな機能としてiOS 6に実装されるのが「Passbook」と「Guided Acces」である。

 前者のPassbookは、さまざまな電子バーコード付きチケットやクーポンをひとまとめにする機能だ。今までもiPhoneの画面上に表示された2次元/1次元バーコードを専用の読み取り機にかざすことでリアル連携をするアプリがいくつか登場していたが、それらの仕様をAppleがまとめてPassbookの機能として提供することで、バーコード連携の使い勝手の向上とサービス拡大を図る。

 このPassbook、日本のケータイ/スマートフォンユーザーであればピンと来た人もいると思うが、コンセプト的にはNTTドコモの展開する「トルカ」に近い。トルカでは、おサイフケータイによる非接触IC連携のほか、画面上に表示した内容を見せてクーポンやチケットとすることができるが、Passbookはこの部分を2次元/1次元バーコードにしたもの、と考えればいいだろう。

PhotoPhoto
PhotoPhoto バーコードを用いた電子チケットやクーポンで、多様な“リアル連携”を実現する「Passbook」。日本での展開は不分明だが、NFC時代への布石とも見ることができる

 AppleではPassbookの仕様を公開し、すでに画面表示バーコードによる連携サービスがある米国以外でも、サービスの拡大を図る計画だ。日本でのPassbook普及がどうなるかはいまだ不分明だが、すでに航空会社などがiPhoneアプリに2次元バーコードを表示してチケット代わりにするサービスを展開している。それらがPassbookに対応することは十分に考えられる。また、さらに踏み込んで予測すると、このPassbookが将来的に「NFC搭載のiPhone」のキラーサービスに位置づけられることは十分に考えられる。その点でも、海外、そして日本でのPassbook普及がどうなるかは、特に注目である。

 一方、Guided Accesは、“指定した特定のアプリだけ”を利用する機能である。これが起動しているときはホームボタンも効かず、特定のアプリの専用機になる。この機能は一般ユーザーだと、iPadを子どもに使わせるときなど、かなり用途が限られるが、iPadの法人市場への展開などでは重要になる。例えばiPadを学校で生徒に貸し出したり、美術館のガイド端末にする、特定の業務用端末にするといったことが容易にできるからだ。iPadは現在、法人市場で急速に伸びているが、Guided Accesの実装は、ここでのインパクトが大きそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー