「最高の瞬間を最高の画質で」――シャープ、光学式手ブレ補正搭載CMOSカメラモジュールを発売

» 2011年12月01日 13時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 シャープが12月1日、スマートフォンなどのモバイル機器向けに光学式手ブレ補正を搭載した1210万画素CMOSカメラモジュール「RJ63YC100」を発表。12月2日にサンプル出荷を開始する。サンプル価格は1万2000円。月産個数は10万。

 同モジュールのサイズ(フレキシブル基板を含む)は11(幅)×11(高さ)×5.47(厚さ)ミリ、光学サイズは1/3.2型。オートフォーカス付きの光学式手ブレ補正機能を搭載するのが特長で、フルハイビジョン(1080p)動画の撮影にも対応している。同モジュールは、NTTドコモの「AQUOS PHONE SH-01D」と、ソフトバンクモバイルの「AQUOS PHONE 102SH」に採用されている。

photophoto 光学式手振れ補正機能搭載の1/3.2型1210万画素 CMOSカメラモジュール「RJ63YC100」(写真=左)。光学式手ブレ補正搭載のカメラモジュールは「AQUOS PHONE SH-01D」と「AQUOS PHONE 102SH」に採用されている(写真=右)
photo 新しいカメラモジュールを手にするシャープの本道昇宏氏

 発表に先立ちシャープは説明会を開催。シャープ 電子デバイス事業本部 副本部長の本道昇宏氏がカメラモジュールの取り組みについて説明した。

 カメラモジュールは、レンズ、AFユニット、リッドガラス、センサーカバー、イメージセンサー、基板、FPC(フレキシブル基板)で構成されている。個々の部品は他社に発注しているケースが多く、シャープがこれらの部品を組み立ててモジュールとして完成させている。携帯電話向けカメラの進化に伴い、これらのカメラ部材も高密度化されて大量生産が容易ではなくなってきた。初期のVGAサイズ/固定焦点のカメラはレンズは2枚で済んだが、現在はオートフォーカス対応の5メガ〜8メガが主流となり、カメラレンズは5枚構成の複雑な作りになっている。「5枚のレンズの光軸や角度を合わせないといけないので、開発が難しくなってきた」と本道氏は話す。また、画素が大きくなると小さなゴミでも目立つため、「ゴミが発生しない部材を作る」「ゴミが乗らない行程で製造する」「発生したゴミを取り除く」必要がある。「VGAサイズのカメラモジュールを作れるメーカーは多かったが、5メガや8メガのカメラモジュールを作るのは難しい」(本道氏)のが現状だ。

photophoto カメラモジュールの構成。指先に乗るほどの小型サイズを目指してきた
photo 固定焦点からオートフォーカス対応になるにつれ、モジュールの構成も複雑になった(写真=右)

 このようにカメラの高画素化が進む中、シャープは携帯電話向けカメラモジュール業界をリードしてきた。携帯電話向けに初めて搭載したカメラモジュールもシャープが手がけ、固定焦点、オートフォーカス、光学ズームなどの技術を他社に先駆けて取り入れてきた。画素数はCIF(352×288ピクセル)やVGA(640×480ピクセル)から始まり、2メガピクセル、8メガピクセル、そして16メガピクセルへと増加していった。2011年夏モデルでは、3D撮影が可能な2眼カメラを搭載したモデルを投入したことも記憶に新しい。シャープが開発したカメラモジュールの累計出荷数は2011年8月で6億台を突破し、うち海外への出荷数が7割を占める。同社の調べでは、携帯電話向けカメラモジュールの出荷数はシャープが約17%を占め、世界シェア1位を獲得した。

 カメラモジュールの生産拠点は広島県福山市に構え、ここで生産技術を蓄積する。そして中国の無錫(むしゃく)市とベトナムのホーチミン市の工場で大量生産する。現在は国内外合わせて、月産で1600万のモジュールを生産できる体制を構築している。

photophoto シャープがこれまで開発してきたカメラモジュール(写真=左)。オートフォーカス、光学ズーム、1610万画素カメラ、2眼カメラなど当時最新の技術を搭載したシャープのケータイとスマートフォン(写真=右)
photophotophoto シャープ製カメラモジュールの累計出荷数は6億台を超え、世界シェア1位となった。光学ズームや3D撮影機能などを盛り込んだ“特徴デバイス”のほか、規模を拡大するために“汎用デバイス”も開発している(写真=左、中)。日本で生み出したモジュールを海外で大量生産する(写真=右)
photo 手ブレ補正機能のニーズが高まっている

 携帯電話の小型化・薄型化と、カメラの高画素化・高画質化を果たす一方で、手ブレが起きやすくなってきた。そこでシャープは画質を落とさずに手ブレを抑えられる「光学式手ブレ補正」のニーズが今後高まると考え、今回のモジュールに光学式手ブレ補正機能を盛り込んだ。手ブレ補正機能自体は多くの携帯電話が搭載しているが、電子式を採用する機種がほとんど。電子式手ブレ補正だと、補正時の撮像領域に本来の有効画素をフルに使えず(上下左右10%ほどがダミー撮像領域になる)、画質が劣化しやすい。また、複数の画像を撮影して合成するため、補正の処理に時間がかかるというデメリットもある。

 一方、光学式手ブレ補正は有効画素をフルに使えるほか、補正用の処理が不要なので、スピーディかつ高画質な状態でブレの少ない写真を撮れる。具体的には、手ブレを起こしてモジュールが動いたときに、中のレンズを動かして光軸が中心に来るようにすることで、ブレを抑えられる。なお、光学式手ブレ補正の中には、モジュール内部のレンズを制御する「レンズシフト方式」と、モジュールの外に枠を設けてモジュール全体を制御する「モジュールチルト方式」の2種類がある。モジュールチルト方式は枠が増える分大きくなるため、シャープはレンズシフト方式を採用。「光学式手ブレ補正機能付きの1/3.2型1210万画素CMOSカメラモジュール」としては業界最薄を実現した。光学式手ブレ補正を備えない同じ1/3.2型の12Mモジュールよりも幅と高さは約2.5ミリ増したが、厚さは同じ5.47ミリに抑え、8Mモジュールの5.8ミリよりも薄い。

photophoto 電子式手ブレ補正と光学式手ブレ補正の違い(写真=左)。光学式手ブレ補正のレンズシフト方式とモジュールチルト方式の違い(写真=右)
photophoto 新しいカメラモジュールの特長(写真=左)。8Mモジュールと、光学式手ブレ補正なし12Mモジュールの違い(写真=右)
photophotophoto 手ブレ補正オンとオフで撮影した静止画や動画の違いを紹介

 今回のカメラモジュールは裏面照射型CMOSセンサーを採用しているのも特徴の1つ。配線層の影響を受けずに光を取り込めるので、高感度な写真を撮れる。このCMOSセンサーは他社製。シャープはこれまでCCDモジュールを携帯電話のカメラに積極的に取り入れてきたが、裏面照射型をはじめ「近年はCMOSの技術も発達してきた」(本道氏)ことからCMOSを採用した。

 本道氏が「素人でも最高の瞬間を最高の画質で撮れるカメラモジュール」と自信を見せる今回の新モジュール。光学式手ブレ補正機能あり/なしを比較するデモも実際に見たが、光学式手ブレ補正をオンにした端末の方が、画面上のブレが確かに少なく感じた。また、運転中の後部座席を撮影した光学式手ブレ補正あり/なしの2つの動画を見比べたところ、補正ありの動画の方が揺れが少なかった。今回のカメラモジュールは他社や海外にも販売していく見通しで、シャープの携帯電話向けカメラモジュールのさらなるシェア増加が期待される。


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