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» 2012年10月06日 10時40分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(9月24日〜10月5日):イー・アクセス買収の狙いと疑問/低価格で攻めるNexus 7/ドコモ冬の注目機種 (1/2)

iPhone 5発売の余韻が冷めやらぬ中、ソフトバンクがイー・アクセスを完全子会社化するという衝撃的なニュースが発表された。業界はどう変わっていくのだろうか? 今回はこれに加え、Android 4.1搭載のタブレット「Nexus 7」と、CEATECで先行展示されたドコモの冬モデルについて解説する。

[石野純也,ITmedia]

 重大ニュースがめまぐるしく続いた、9月24日から10月5日にかけての2週間。中でも、ソフトバンクによるイー・アクセスの買収は業界構造を大きく変えるという点でインパクトがあった。新端末の発表も相次いだ。Googleは9月25日に自社ブランドの7インチタブレット「Nexus 7」を発表。同日からオンラインで注文を受け付けるとともに、量販店での販売も10月1日に開始した。また、10月2日から6日にかけては、日本最大規模の家電見本市「CEATEC」が開催されている。ここでは、ドコモが冬モデルの一部を先行公開。導入が予想されていた「GALAXY Note II」や「Xperia V(日本ではXperia AX)」のほか、コラボモデルも展示。「Disney Mobile on docomo」の新機種や、ワンピースとのコラボモデルも披露した。これらのニュースを、まとめて振り返っていこう。


ソフトバンクがイー・アクセスを完全子会社化、電波の相互利用も視野に

photo ソフトバンク 代表取締役兼CEO 孫正義氏(左)は、「DNAが似ている」というイー・アクセスの千本倖生会長とガッチリ握手を交わした

 ソフトバンクは10月1日、株式交換によるイー・アクセスの完全子会社化を発表。2013年1月にイー・アクセスの臨時株主総会で承認されたのち、経営統合が実現する。ソフトバンクが取得するイー・アクセスの株式価格は、1株5万2000円。トータルでの金額は、ソフトバンクが引き受ける有利子負債も合わせて、3651億円になる。ソフトバンクの代表取締役兼CEO、孫正義氏によると、ソフトバンクモバイルとウィルコム、イー・アクセスを合算したユーザー数は「9月末時点で3940万を超えている」とのこと。2010年にコミットした4000万ユーザーという数値は、今年度中に達成できるとした。事実上、日本のキャリアは3社に集約される形となり、PHSまで合算した場合、ソフトバンクグループのユーザー数はKDDIを超えて業界2位に躍り出ることとなる。

photophoto 買収額の根拠を説明する孫氏。ソフトバンクとのシナジー効果も高く評価しているという
photo PHS事業を展開するウィルコムまで合算すると、現時点で業界第2位に躍り出るという。なお、いわゆる携帯電話事業だけでは僅差で3位という見方もできる

 買収は「ソフトバンクが強烈なラブコールをした」(孫氏)という。なぜ、ソフトバンクがイー・アクセスを必要としたのか。その答は非常にシンプルで、スマートフォン用の周波数が必要だったということに尽きる。孫氏は「1.7GHz、これが鍵だ」と述べ、イー・アクセスの持つ周波数帯の重要性を次のように力説した。

 「LTEを受けられる周波数帯として、すでに(iPhone 5には1.7GHz帯が)入っている。これは国際バンド。これから世界的な機種を品ぞろえする中で、LTEの対応(周波数)として、入っている場合も多い。LTE以前の1.7GHzと、LTE以降の1.7GHzでは全然価値が違う」

 イー・アクセスは、開業当初から3Gサービスを1.7GHz帯で展開していた。この周波数は日本独特のもので、海外メーカーの端末をそのまま導入することができないというネックがあった。一方で、LTEについては、同じ周波数帯が1.8GHz帯の「Band 3」として標準化されている。本連載でも触れているが、欧州などで一般的な1.8GHz帯のLTEであれば端末も調達しやすくなる。このメリットを生かし、イー・アクセスは年度内にLTE対応スマートフォンを投入する構想を打ち出していた。ソフトバンクモバイルが販売する「iPhone 5 GSMモデルA1429」も、スペック上はLTEの「Band 3」対応がうたわれている。

 イー・アクセスは、LTEの人口カバー率を2013年3月末までに約70%まで広げる計画だ。このネットワークに、iPhone 5をはじめとするソフトバンクのスマートフォンが接続できるようになるというわけだ。一方で「イー・モバイルブランドのスマートフォンは、全国にカバーされたソフトバンクの音声網を利用できる」(孫氏)というメリットもある。孫氏が「まさにWIN・WINの業務提携」というのは、このような理由からだ。あわせて、基地局用地の共同利用も行っていく。「イー・モバイルの基地局に2.1GHzを、ソフトバンクの基地局に1.7GHzを載せる」(孫氏)といい、エリアの拡大を図る。

photophotophoto iPhone 5を導入したソフトバンクにとって、LTEでは1.8GHz帯のBand 3となる1.7GHz帯は非常に重要だった。孫氏はau向けiPhone 5の対応周波数帯とも比較し、優位性を語った
photo 一方で、イー・モバイルブランドのLTE対応スマートフォンでは、ソフトバンクの音声ネットワークに接続できるようになるといったメリットがある

 ただし、現時点では両社のネットワークは、相互に接続されていない。また、LTEに接続しながら音声通話ができないため、発着信時に3G接続に切り替える「CSフォールバック」という技術の導入が必要だ。イー・アクセスのLTEとソフトバンクの3Gは、エリアが完全にオーバーレイしていないため、場合によってはデータ通信しか利用できないエリアが出てしまう可能性もある。両社はこうしたネットワーク側の対応を急ピッチで進めていき、春ごろには1台の端末でどちらにも接続できるようになる見通しだ。

photo ネットワークの見通しが立ったことから、テザリングの開始を前倒しにすることができた

 このような状況を受け、ソフトバンクはiPhone 5のテザリング開始を、当初の2013年1月15日から、2012年12月15日へと1カ月前倒しにする。12月時点ではまだ1.7GHz帯には接続できないが、周波数の見通しが立ち、導入時期の変更が可能になったようだ。「イー・モバイルのブランドは残していく」(孫氏)とのことで、ソフトバンク傘下に、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル、ウィルコムの3ブランドが並ぶ形となる。

 ちなみに、イー・アクセスは6月27日に、総務省から700MHz帯の免許を交付されている。同社は当時、「務省の電波監理審議会から適当である旨の答申を受けたことを、大変喜ばしく思っています。当社にとって初のプラチナバンドの割当となりますので、700MHz帯を有効活用し、LTEの更なる普及に努めていく所存です」とコメントしている。この700MHz帯も、今後、ソフトバンクが活用していくことになる。ただ、700MHz帯は免許交付時に、900MHz帯とセットで議論されていた。先に900MHzの割り当てが決まったソフトバンクを外し、NTTドコモ、KDDI、イー・アクセスの3社に各10MHz幅ずつ割り当てられたという経緯もある。会見で700MHz帯の方針について問われた孫氏は、次のように回答している。

 「ドコモやKDDIは、800MHz帯を15MHz幅、それぞれ持っている。今回、我々は大変苦労して、やっと900MHz帯を5MHz幅だけ使える許認可を得た。残りの10MHz幅は、電波の地上げのようなことをして譲り受ける。あちらは15MHz幅なのに、我々は5MHz幅しか持っていない。900MHzをもらって、やっと5MHz幅。700MHzについては、ドコモとKDDIは10MHzずつ。ソフトバンクも、イー・モバイルと一緒になったので、同じく10MHz。やっと、初めてイコールフッティングになったが、それでもまだ足りないと申し上げたい。せっかくのイー・モバイルの10MHz幅をギブアップしなさいというのは、決して公平ではない」

 買収した会社の持っていた周波数を、返上するのは公平ではない――この主張は確かに正論で、ソフトバンクが結果として700MHz帯を獲得するのも法にそむくようなことではない。一方で、当初と前提条件が大幅に変わっているのも事実。700MHzの割り当てにあたっては、ドコモ、KDDI、イー・アクセスの比較審査が行われ、それぞれに5.5点、3.5点、3.5点という得点がつけられていた。基準の中にはすでに所有している周波数帯や、加入者数なども含まれている。この審査は、本当に適切だったのか。似たような議論は、2.5GHz帯が割り当てられたウィルコムがソフトバンク傘下になった際にも起こったが、度重なる事態に総務省の審査能力はもちろん、審査という方式そのものにも疑問の声が上がりそうだ。

1万9800円のGoogle純正タブレット「Nexus 7」、ついに日本上陸

 9月25日、GoogleはAndroid 4.1を採用した7インチのASUS(エイスース)製タブレット「Nexus 7」を発表した。会見当日の朝にはGoogle Playで予約可能になっており、取材前に注文を入れた筆者の下には、9月26日に配送が完了している。家電量販店での販売は10月1日に開始され、現在は軒並み完売状態となっているようだ。

photo 会見にはGoogleの会長、エリック・シュミット氏も登壇した

 会見に合わせ、Googleの会長、エリック・シュミット氏も来日。現在の技術革新は、ハードウェア、ソフトウェアに続く第3の段階にあるとし、「ネットワークの時代でプラットフォームが重要。クラウド、サーバーでネットの反対側にいながなら、物理的制約を超える形で継続的な体験ができる」と語った。シュミット氏によると、Androidはこうした流れを受け、登場したプラットフォームだという。現在は「130万台のデバイスが毎日、新規にアクティベーションされている」といい、モバイル向けOSでシェア1位を獲得していることを強調。その理由として「オープン性」を挙げ、フィーチャーフォンのようなテンキー搭載クラムシェル型スマートフォンや、Android採用ウォークマンが登場している日本の状況を「非常にいいこと」と評した。

 日本はGoogle、そしてAndroidにとっても有望な市場となっている。シュミット氏は、日本のスマートフォンユーザーの82%が、1日に1回以上ネットにアクセスし、82%が外出中に、75%が店舗内で利用しているというデータを披露。アプリのダウンロード数も世界第3位になる。スマートフォン普及率は20%を超えたところという数値をあわせて考えると、ユーザーのスキルの高さがうかがえる。

 Nexus 7については、「ハードとソフトを組み合わせると、何ができるのかを示すもの」で、GoogleがGoogle Playで提供しているコンテンツ、サービスを生かすための端末という位置づけだ。OSには、最新のAndroid 4.1が採用され、Google Playからアプリはもちろん、動画や同日開始された電子書籍をダウンロードできる。もちろん、Googleマップ、YouTube、GmailといったGoogleアプリも他のAndroid端末と同様にプリインストールされる。このバージョンから標準ブラウザも「Chrome」になった。チップセットはクアッドコアCPUを持つ「Tegra 3」を搭載。1Gバイトメモリや、1280×800ピクセルのワイドXGAディスプレイ、Androidビーム用のNFCなどを内蔵し、レスポンスも非常にいい。7インチというサイズも相まって、外出先で移動しながらの利用も快適だ。

photo 「Nexus 7」の主なスペック。クアッドコアCPUや7インチのワイドXGAディスプレイなどが特徴。OSにはAndroid 4.1を採用する
photophoto 端末の外観。側面はマットな仕上がりで、細かなドット加工が施されているが、技適マークは残念ながらシール張りでやや安っぽい
photophotophoto 向かって右側面に電源ボタンと音量ボタンが、左側面にはクレードル接続用の接点がある。Micro USB端子とイヤフォンジャックは、本体下部に搭載されている

 一方で、一般的なタブレット端末が搭載する背面カメラや、バイブレーションといった仕様は省かれている。通信方式もWi-Fiのみで、3GやLTEには非対応だ。ある意味、潔く割り切ったタブレットといえるだろう。その代わり、価格は1万9800円でディスプレイやチップセットの性能を考えると割安だと断言できる。その上で、アクティベーションするとGoogle Playで利用できる2000円分のクーポンが手に入る。さらに、「Google Play ムービー」では、SD画質でレンタル300円、購入1250円の「トランスフォーマー/ダークインサイド・ムーン」が視聴可能な状態になっている。Google関係者によると、ハードウェアとしての利益は狙っていないからこその価格設定だという。ハードウェアには、赤字にはならないギリギリの価格を設定しているようだ。3GやLTEなどのモバイルデータ通信に対応していないのも理由は同じで、コストアップを避ける狙いがある。

photophotophoto Nexus 7の投入に合わせ、Google Playで電子書籍の配信も開始した。ただし、まだラインアップには少々偏りがある。クラウド同期が特徴で、しおりを別のデバイスに引き継ぐことも可能。蛇足なことに加えてただの宣伝だが、拙著も配信されている
photophoto 「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」もプリセットされており、お得感がある(写真=左)。位置情報、検索履歴、スケジュールなどを利用して、最適な情報をオススメする「Google Now」。Android 4.1に導入された目玉の機能だ(写真=右)
photophoto 標準ブラウザは「Chrome」になった。UIの細かな変更も多い。画面右はインテント時のアプリ選択画面
photo アウトカメラは非搭載など、ハードウェアには割り切った部分も多いが、NFCには対応。Androidビームで、データの交換などを行える

 ユーザーにとっては非常にうれしい価格設定だが、メーカーの目にはNexus 7が脅威に映っていることも事実だ。タブレットを製造するあるメーカーの関係者は、「これからはプレミアムのある高価格のタブレットと、機能を絞った低価格のタブレットに二極化する」との見通しを述べていた。前者を選んだメーカーは、機能やサイズ、軽さ、デザインなどで勝負するというわけだ。ただ、Nexus 7も、価格は安いが決して性能が悪いわけではない。日本では、Androidタブレットが全般的に苦戦を強いられているが、今後はプラットフォーム提供者そのものがライバルということにもなる。結果として、Androidタブレットを投入するメーカーが減ってしまう恐れもあり、Googleが強調していたエコシステムが縮小しかねない。自社ブランドのタブレット投入がGoogleにとって正しい選択だったのかは、もう少し長い目で評価する必要がありそうだ。

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