スマートフォン時代の新生KDDIは「マルチデバイス」「マルチネットワーク」を目指す――KDDI 田中社長に聞く:新春インタビュー(1/3 ページ)

» 2011年01月03日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2010年はKDDIにとって苦難の年になった。

 Appleの「iPhone」が大ヒットしたことに端を発したスマートフォンの波は、モバイル業界全体の変革を促した。端末販売市場ではiPhoneの快進撃が止まらず、結果としてソフトバンクモバイルの純増が躍進。さらに昨年はNTTドコモもスマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなど“売れ筋商品”を充実させ、持ち前のインフラ品質の高さとセットで訴求した。

 しかし、KDDIのauは、この新たな流れに乗り遅れた。

 前社長の小野寺正氏は当初iPhoneの影響は限定的と判断し、「スマートフォンは時期尚早」と新分野へのいち早い投資よりも、目下の収益源であるフィーチャーフォン分野への投資を優先。結果として、スマートフォンなど新分野の開拓で出遅れてしまった。

 KDDIは一時期モバイル業界のキャスティングボートを握っていたのだが、それを手放してしまったのだ。これは店頭での端末販売・契約獲得での競争力を低下させただけでなく、auのブランド力を落とすことにもなってしまった。

Photo KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 しかし、流れは変わり始めている。

 KDDIは2010年の秋冬商戦で、日本市場向けにしっかりと作り込んだAndroidスマートフォン「IS03」を発売。このISシリーズの拡大に合わせて、「Android au」というキャンペーンを大々的に行い、スマートフォン分野での巻き返しに向けて動き出した。

 そして2011年。auは再び、先進的なブランドイメージを回復し、スマートフォンをはじめとする新分野での競争力を得ることができるのか。そのための戦略やビジョンはあるのか。2010年12月1日に新社長となった田中孝司氏に話を聞いた。

“出遅れたKDDI”の優位性と課題とは?

――(聞き手:神尾寿) 昨年12月1日に田中社長が新社長就任されたわけですが、ご自身の目から見て、今のKDDIの「優位性」と「課題」はどこにあるとご覧になりましたか。

田中孝司氏(以下田中氏) まず優位性という点ですが、これは「複数のネットワーク(インフラ)を持っていること」。これに尽きると思っています。2011年以降を見据えますと、モバイルのトラフィック(通信量)は確実にオーバーフローする。そうしたときにFTTHなど固定網をしっかりと持っている。そして子会社でCATVやモバイルWiMAXなどのインフラも所有しているわけです。つまり、いちばん快適なネットワークを提供できる立場にあるのではないかと考えています。今後は、(サービスや端末の面で)これら複数のネットワークがスムーズに連携するようにしていかなければなりません。

―― おっしゃるとおり、スマートフォンが前提になる時代では、トラフィックをどう分散していくかが重要になります。特に屋内でのトラフィックは基地局の収容力への負担が大きいため、これをどうやって固定網に逃がすかという施策が重要になりますが、ここに「自前のFTTH/CATVインフラを持つ」KDDIのメリットがある、と。

田中氏 ええ。オフロードが重要です。ここでは端末側はWi-Fi(無線LAN)を使っていきます。その家庭内でのバックボーンとして、我々のFTTHやCATVサービスを位置づけます。

 この展開においては、多くのお客さまに簡単に利用できることも大切です。ですから我々は、セットトップボックス(STB)にWi-Fiルーター機能を内蔵し、お客さまが細かな初期設定をしなくてもいいような仕組みを目指しています。

―― まずは確実に家庭内のデータトラフィックを固定網に逃がすわけですね。

Photo

田中氏 そうです。また屋外でも、(iPhoneが売れている)ソフトバンクモバイルの現状を見れば分かるとおり、3Gインフラだけで爆発的に増えるデータトラフィックをさばくのは厳しい。ですから我々は2011年度に、モバイルWiMAX内蔵のスマートフォンを投入します。スマートフォンに本腰を入れるからには、ネットワーク側の混雑でお客さまにご迷惑をおかけすることはないようにしたいと考えています。

―― スマートフォンをやるならば、それを支えるインフラをしっかりと構築する。これまではKDDIの3Gサービス(CDMA 1X WIN)とUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXは若干距離を置く形で展開されてきましたが、その融合が進むと考えてよいのでしょうか。

田中氏 そうですね。3GとモバイルWiMAXがデュアルのネットワークになっていきます。その後、2012年にはLTEのネットワークを開始しますので、モバイル側はこの3つのネットワークを組み合わせて使えるようにしていきます。

―― 公衆無線LANアクセスはいかがでしょうか。この分野はドコモがMzone、ソフトバンクモバイルがソフトバンクWi-Fiスポットという形で独自にエリア展開しているのに対して、KDDIは手つかずでしたが。

田中氏 そこも力を入れていきます。昨年10月にワイヤ・アンド・ワイヤレスとの資本提携を行いましたが、こういった資産の活用を考えていますし、(KDDI自前の)固定網をうまく使いながら公衆無線LANアクセスのスポットを増やしていくことも検討しています。

―― 総合通信キャリアとしての複合的なネットワーク。これがKDDIの優位性として、現在の課題はどこにあるのでしょうか。

田中氏 会社の中の「縦割り」が強すぎるところです。構造的・組織的なところに弱点がありますので、早急に改善いたします。

 そして、もう1つ重要な課題として、権限を持つ人間がいっぱいいるのに、意思決定や連携がうまくできていない。ここを改善しなければなりません。社員1人1人が、自ら問題意識を持って動ける会社にしていこうと思います。

―― 今後のモバイル業界のトレンドを鑑みますと、複数のネットワークだけでなく、端末やサービスも「連携」が重要なキーワードになる。“not my job(それは自分の仕事ではない)”という考えで物事やビジネスをとらえるようでは、今後のモバイル業界の急激な変化を乗り切れないでしょう。通信キャリアとしては縦横無尽な連携がしやすい体制が重要になってきますが、それに合わせた組織の改編・改革や、社員のマインドセットの変革は進めているのでしょうか。

田中氏 すでに進めています。私の考えとしては、2011年3月中に社員のマインドセットを変えていき、4月の組織改編で新たな体制作りをしたい。そういうシナリオで考えています。今後のマルチデバイス・マルチネットワーク時代に合った形に、KDDIを変えていきます。

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