スマートフォン時代の新生KDDIは「マルチデバイス」「マルチネットワーク」を目指す――KDDI 田中社長に聞く新春インタビュー(2/3 ページ)

» 2011年01月03日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

2011年、auの主力は「スマートフォン」に

―― 2011年の重要分野で見ますと、その筆頭に「スマートフォン」が挙げられます。KDDIはこの分野で後れを取りましたが、昨年末に投入したIS03以降のIS seriesは市場での反応もいい。田中社長として、現在のスマートフォン市場における手応えをどう評価されていますか。

田中氏 IS03は本当に多くのお客さまにご評価いただきました。昨年12月の段階ではデリバリーの部分でお待ちいただいた方もおりましたけれども、購入宣言・予約をしていただいたお客さまだけでなく、新規顧客の獲得にもつながってきたと手応えを感じています。

―― 昨年のIS01からIS06までの第一弾は、ひとまず市場で評価されつつある。その上で、今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか。

田中氏 すでに来年度(2011年度)は新製品ラインアップの半分以上をスマートフォンにするとお話ししていますが、10機種以上のスマートフォンを市場投入することになると思います。IS03がかなり売れましたので、生産計画も含めて、“どこまで上ブレさせるか”という姿勢で検討しているところです。

―― スマートフォン市場の拡大が予想以上に早い、というのが前提になるわけですね。となると、ラインアップ拡充も重要になりますので、開発・調達計画をどこまでスピードアップできるかが課題になる。

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田中氏 我々がスマートフォン戦略で遅れてしまった背景としては、“日本人向け1台持ちケータイ”にこだわり抜いたことがあります。(IS03で)日本のお客さまにとって使いやすいスマートフォンの形が提案できたという自負がある一方で、開発に時間がかかりすぎてしまったという反省もあります。

 日本のケータイユーザーにも使いやすいスマートフォンの提案は今回のIS seriesである程度できたので、次は最新のハードウェア・OSを搭載したモデルの導入にも注力します。来年度は、日本人向けのスマートフォンと、グローバル仕様のスマートフォンをうまく組み合わせていきたいと考えています。

―― 日本の一般ユーザー向けのローカライズモデルと、グローバルモデルの両方をやっていく、と。

田中氏 そうです。ハイエンドユーザー向けは(最先端のハードウェアとOSを搭載した)グローバル仕様のスマートフォンを買っていただく。ミドルレンジや1台持ちをしたいお客さまには、現在のIS03のように日本市場向けにローカライズされたスマートフォンを提案する。来年度のauのスマートフォン戦略は、二本立てでやっていきます。

―― なるほど。そこで重要になるのは、市場の中核である一般ユーザー向け・日本市場に合わせたローカライズ型のスマートフォンをどれだけ使いやすく競争力のあるものにできるか、ですね。

田中氏 ローカライズされたスマートフォンは1台持ちが前提になりますので、どれだけ日本市場のニーズを取り込むかという見極めが重要ですね。その大きな要素(おサイフケータイ・赤外線通信・ワンセグなど)は入れたのですが、細かな部分の改善の余地はたくさん残っています。これを地道にやっていく。またデザイン面では(KDDIは)iidaブランドを持っていますので、iidaでのスマートフォン展開も検討しています。

 それから今回のIS03では「jibe」や「Skype au」を導入しましたけれども、こういった新たなサービスへの対応では、まだまだおもしろいことができると考えています。ここは気合いを入れてやっていきたい。

―― グローバル型スマートフォンですが、こちらは最新のハードウェアとOS対応をしていく。さらにKDDIの場合はモバイルWiMAXとのデュアル対応機を導入することができますので、ハイエンド市場で魅力的なラインアップを構築できるのではないかな、と期待しています。

 しかしその一方で、グローバル型スマートフォンの導入では、キャリアのコンテンツサービスをどう取り扱うかが課題になります。これがうまく融合していけないと、グローバル型スマートフォンでは、キャリアのコンテンツARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)が下がってしまうリスクもあります。今後、KDDIのグローバル型スマートフォンではLISMOなどauのコンテンツサービスを搭載していく考えはあるのでしょうか。

田中氏 対応に時間差はあると思いますが、ユーザーニーズのある(キャリアの)アプリやサービスは入れていかなければならないでしょう。そこはやっていくのが、むしろ自然と言えます。

―― グローバル型とローカライズ型の違いは、UIやハードウェア依存サービスの部分で、コンテンツサービスの部分ではない、と。

田中氏 そうですね。UIの部分なども、フォントを変える程度のことはグローバル型のスマートフォンでもそれほど難しくはありません。日本市場に特化したデバイスが必要な部分は難しいですが、ソフトウェア側でできる範囲であれば、グローバル型とローカル型の違いはあまりないでしょう。(キャリアのコンテンツサービスなど)共用できる部分は、あまり境はないのではないかと思います。

―― KDDIは今後スマートフォンに注力することは分かりました。それではフィーチャーフォンへの投資は、今後どのようになさるのでしょうか。

田中氏 販売台数で見ますと、フィーチャーフォンで売れているのは「簡単ケータイ K008」のような“かんたん系”です。フィーチャーフォンもいろいろな機能を入れているのですけれども、スマートフォンの迫力に押されて差別化がうまくできていない。

 フィーチャーフォンもいまだにお客さまがいらっしゃるのでやってはいきますけれども、差別化ということを考えますと、今後はスマートフォン中心にシフトしていくと見ていただいた方がいいでしょう。

―― スマートフォンとフィーチャーフォンのフルラインアップではなく、スマートフォンに重心を置く、と。

田中氏 その通りです。スマートフォンにシフトしてきます。

キャリアのリソースをオープン系サービスに解放していく

―― 一方、今後スマートフォンが主流となる中で、“キャリアの独自性をどう出すか”というのも重要になります。

 その1つは過去10年に蓄積したケータイ向けコンテンツ/サービスのエコシステムを移植し、スマートフォンで活用することです。そして、もう1つがスマートフォンらしくオープンなインターネットサービスを取り込んでいくこと。この分野においてSkype auでは、オープンなサービスをキャリアのネットワークサービスと密結合させるという試みをされていますね。

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田中氏 Skype auの手法は、(スマートフォン時代における)差別化のポイントだと考えています。スマートフォン時代が到来したといっても、キャリアにしか持ち得ない機能というものがあります。例えば、ルーティングや(スマートフォン内の)アドレス帳の機能などは、キャリアが持っている機能と連携させると、より高度なサービスが構築できるのです。膨大な顧客情報や決済・回収代行の仕組みを持っていることなども、キャリアならではの部分です。これらは(スマートフォン上のサービスと組み合わせることで)差別化になります。

 スマートフォン時代になっても、キャリアが保有する機能や情報、サービスの強みはあるのです。これをいかに活用して、差別化につなげていくことが重要になります。何よりも、それらをオープンなサービスでも活用してもらえると楽しいじゃないですか。

―― これまでキャリアが持つ膨大なリソースはキャリアの中で、キャリアが構築・提供するサービスでのみ使用されていました。しかし、KDDIとしては、これらをインターネットのオープン系のサービスにも解放していき、活用を促すということでしょうか。

田中氏 そうです。それこそ本当の意味での、オープン時代らしい連携と言えるのではないしょうか。昨年まではAppleのiPhoneのように、(キャリアのネットワークを、データを流すための土管として利用するだけの)サンドウィッチモデルが注目されていましたが、実際はキャリアの持つプラットフォームをスマートフォンとオープン系サービスとうまく組み合わせることでも新しい価値が生み出せるのです。

―― Skype auはその好例ですね。あれはキャリアの“電話インフラ構築”のノウハウやリソースと組み合わされたことで、従来のスマートフォン上で動く「Skypeアプリ」とは別物の使い勝手と品質になりました。

田中氏 ありがとうございます。我々はキャリアとして、今後もさまざまなオープン系サービスと連携していきますので、引き続き、ユーザーの皆さまにも楽しみにしていただければと考えています。

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