グーグルが10月25日、Androidの新しいOS「Android 4.0」の記者説明会を開催。Androidグローバルパートナーシップ ディレクターのジョン・ラーゲリン氏が、新OSの主な特徴を説明した。
Android 4.0は、コードネーム「Ice Cream Sandwich(ICS)」で知られる、スマートフォンやタブレット向けの新しいOS。すでに10月19日に香港で発表済みであり、Android 4.0搭載のリードデバイス(OSの見本となる端末、リファレンスモデル)として、Samsung電子製の「Galaxy Nexus」も同日に発表された。Android 2.1ではHTC製の「Nexus One」、Android 2.3ではSamsung電子製の「Nexus S」がリードデバイスとして投入されたが、日本では(キャリアが採用したモデルとしては)発売されなかった。Galaxy NexusはNTTドコモから「GALAXY NEXUS SC-04D」として11月に発売予定。Googleのリードデバイスとしては初めて日本で正式発売されることになった。
Android搭載の初号機「G1」が登場したのは、2008年10月22日。それから着実に端末のバリエーションを拡大し、3年がたった現在は「世界で毎日約55万台のAndroid端末が開通している」(ラーゲリン氏)ほど普及している。Googleの調べによると、デバイスは410種類、製造元は30社、通信事業者は231社まで増え、そして123カ国でAndroid端末が発売されている。「スマートフォンやタブレット、テレビ画面サイズの端末、さらに(Android 4.0の)タッチキーを搭載していない端末でも互換性を保てるようOSを工夫している。今後さらに豊かなデバイスが出てくるだろう」とラーゲリン氏は力を込める。
Androidが普及するにあたってラーゲリン氏が「誇りに思う」と話すのが端末コストだ。「今までは(モバイルで)インターネットに接続するためには数百ドル、数万円を出す必要があったが、今は100ドル前後の端末も出ている。インターネットに全く触れる機会のなかった方々にリーチできるようになったのは、Androidとそのエコシステムのお陰だ」と胸を張る。
ラーゲリン氏が「OSの上で何が行われているかが重要」と話すように、端末だけでなく、対応アプリケーションがどれだけ増えるのかも欠かせない要素だ。2011年10月現在、Android マーケットに登録されているアプリは30万件以上。膨大ともいえる数字だが、ラーゲリン氏は「数だけの問題ではない」と考える。「日本の開発者がいかに参加しているかが重要。海外に向けても投資して、Androidを生かしたビジネス展開も緊密にフォローしている。ソーシャルゲームを手がける日本の優秀な企業が、海外でもスマートフォン向けビジネスを展開している。世界につながる基盤を日本で作れたことも喜んでいる」と語った。
これらの流れをくんで開発されたAndroid 4.0とはどんなOSなのか。ラーゲリン氏は「(スマートフォンの利用について)モチベーションが高いユーザーだけでなく、皆さんが気持ちよく使えるOSをどうやって作れるかを中心に考えた。“これ1つ”という特徴は言いにくいが、開発チーム全員が一緒になって時間をかけ、操作感の優れたものに仕上がった」と話す。
アップデート内容は一言では説明できないほど多岐にわたり、ホームUI、ブラウザ、カメラ、電話、メールなど、スマートフォンの主要な機能がトータルで進化している。Android 4.0の詳細はこちらの記事でも紹介しているので参考にしてほしい。
ホーム画面では「戻る」「ホーム」「タスク」ボタンがソフトキーとして画面下部に配置され、Galaxy Nexusは電源/音量キー以外の物理キーは搭載していない。タスクボタンから最近使ったアプリをサムネイル表示、ウィジェットのサイズ変更、通知バーでは項目の個別消去が可能になるなど、ホーム画面の操作性が向上した。ホーム画面に移る前のロック解除には顔認証も利用できるようになった。さらに、この顔認証では写真からは認証ができなくなるようアップデートも予定している。「筋肉の細かい動きなど、写真では分からないところを見る」(ラーゲリン氏)という。これまでSDKを使うかメーカーが個別に対応していた「スクリーンショット」にOS標準で対応したのもうれしい点だ。Android 4.0では電源キーと音量キーを同時に押すと、スクリーンショットが撮れる。記者やブロガーなどが記事を作成する際はもちろん、ちょっとしたメモを取るのにも重宝するだろう。
カメラ機能も強化し、画面をタップしてのフォーカスロックやシャッタータイムラグのない撮影が可能になった。シャッタータイムラグが短縮されたお陰で、画面をタッチした瞬間に撮影され、タッチし続けると連写しているような感覚で次々と撮影できる。また、ホーム画面でロックアイコンを左にフリックすると、(ロック解除せずに)即座にカメラが起動するので、シャッターチャンスを逃さず撮影できそうだ。
ユニークな機能として注目したいのが「Android Beam」だ。これはNFCチップを用いた通信機能で、NFC搭載端末同士でアドレス帳やURLなどのデータを送受信できる。アプリをダウンロードするための情報も手軽にやり取りできる。例えば、プレイ中のAndroidゲームを他の人に紹介する場合、ゲーム起動中に端末をかざすと、受信側にAndroid マーケットのダウンロード先が表示される。送受信をするのに専用アプリを立ち上げる、設定を呼び出すなどの操作は必要なく、受け手側の端末がホーム画面を表示した状態で端末を重ね合わすだけでよい。なお、Android Beamはインテントの仕組みを利用したものなので、Webサイトにアップした画像のURLを送受信することはできるが、画像や動画のデータそのものは送受信できない。データをやり取りする際は「少なくとも3センチくらいは端末を近づける必要がある」(グーグル説明員)とのこと。
Android Beamのデモを見て気になったのが、Galaxy NexusにNFCチップを示すマークが記されていないこと。FeliCa対応機でiC通信をする際はFeliCaマークが目印になるが、Galaxy Nexusは分かりにくい。ロゴを入れるなどの対応はGoogleがコントロールするところではなく「メーカーの判断になる」という。
ラーゲリン氏が「日本に特化した工夫を施した」と強調するのが「フォントの変更」と「緊急地震速報の標準対応」だ。フォントはより視認性の優れたモトヤフォントをAndroid 4.0では取り入れた。「今までのフォントは中華風で日本の文字ではなかったのでは? と感じていたのでようやく改善できた」と同氏も満足するクオリティだ。緊急地震速報は「標準化させたかった」というラーゲリン氏の意向もあり、SC-04Dは「エリアメール」をプリインストールしている。
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