NFC/FeliCaの世界標準化を推進、LTEスマホの消費電力を下げるチップも――ドコモMobile World Congress 2012

» 2012年03月01日 08時00分 公開
[田中聡,ITmedia]
photo NTTドコモブース

 MWCのNTTドコモブースでは、同社の最新技術やサービスが披露されている。

 今回初めて参考出展した取り組みの1つが、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、富士通と共同開発しているモデム技術を用いたベースバンドチップ。現行モデルは3GとLTEで個別にチップセットを搭載しているが、この新技術によって3GとLTEを1チップに集約できるようになる。実装面積を減らせるのはもちろん、低価格化や(回路が減るため)消費電力の低減にも貢献する。ドコモの調べによると、2チップに比べて連続待受時間(LTE)が約1.25倍、連続通話/通信時間は3Gが約1.25倍、LTEが約1.45倍伸びるという。特にLTE対応スマートフォンは消費電力がネックと言われているだけに、大いに歓迎される技術といえる。この新しいチップを搭載した製品は「2012年夏以降、12年度内には発売される」(説明員)見通しだ。通信方式はGSM/W-CDMA/HSPA+/LTEに対応。LTEについては日本で採用されているFDD-LTEのほか、中国などで採用されているTD-LTEもサポートし、海外の端末メーカーへの提供も期待される。

photophoto 新たに開発しているGSM/W-CDMA/HSPA+/LTE対応チップセット(写真=左)。3GとLTEモデムを1枚のチップに内蔵できる(写真=右)
photophoto 3G+LTEの2チップよりも1チップの方が連続待受時間や連続通話/通信時間が向上する(写真=左)。新しいチップセットを搭載した端末でTD-LTEのデモを実施(写真=右)

 NFCについては、国内外でNFC/FeliCaをシームレスに利用可能とする取り組みの紹介や、国内で提供予定のサービスのデモを行っている。海外との連携についてドコモは韓KTと協業し、現在韓国で提供されているNFCサービス「T-Money」を日本でも利用可能にするテストマーケティング(3〜4店舗が対象)を2012年4月に開始する。

 国内外でNFC/FeliCaをシームレスに利用するには、端末側が共通のチップを備えている必要がある。ドコモはFeliCaのSE(Secure Element)とNFCチップを搭載、SIMにNFCアプリを内蔵させることで、NFCとFeliCaを両立させる取り組みを進めており、2012年度内の商品化を目指している。海外の通信事業者にもこの仕組みを取り入れてくれるよう働きかけている。リーダライターもFeliCa、TypeA、TypeB、NFCなど幅広くサポートする。さらに、Samsung電子とフェリカネットワークスが提携し、日本のFeliCaサービスとも互換性のあるNFCチップを開発する旨が2月27日に発表された(外部リンク※PDF参照)。こちらは2013年の商品化を目標としており、ドコモが搭載予定のチップの次世代版となる。このようにNFCとFeliCaの世界標準化が実現すれば、例えば海外でモバイルSuicaやEdyを使うといったことも可能になる。「もちろん、NFCが提供されていない国の事業者にいきなり日本との相互利用を提案しても意味がない。まずは各国でNFCサービスを普及させる必要があるので、そのためのノウハウや技術は積極的に提供する」(説明員)。

 国内におけるNFCサービスの準備も進めており、ブースではコンサートのチケットやクーポンなどのNFCサービスをデモしていた。ただ「対応機種だけを出しても意味がない。端末とサービスをセットで提供できるようにしたい」と説明員は話していた。国内ではKDDIが先行する形でモバイルNFCサービスを発表しているが、将来的にはおサイフケータイのように、NFCサービスもキャリア間での差はなくなっていくのではないだろうか。

photophoto 世界各国でNFCサービスを使える取り組みも推進している(写真=左)。2012年内の商品化を目指すNFCチップ。これはGSMAによって世界標準規格とされている(写真=右)
photophoto コンサートの入場券として使えるもの(写真=左)と、あらかじめ読み取ったクーポンを店舗で利用できるNFCサービス(写真=右)のデモを実施

 ナビゲーションの展示コーナーでは、スマートフォン向けに提供中の「ドコモドライブネット」に加え、自転車用のサイクルナビゲーション「ポタナビ」も紹介している。パイオニア製の端末を自転車に装着し、GPSやドコモの通信網を利用して地図を見たり、走行距離や消費カロリーなどの情報をPCやスマートフォンに送ったりできる。仕組みとしては、パイオニアのサーバとドコモの専用基地局を有線で接続して端末と通信をする。通信はLTEと3Gに対応し、防水性能(IPX5)や耐衝撃性も備えている。ディスプレイは2.4インチ。スマートフォン向けアプリではなくあえて専用端末を用意したのは、GPSはアンテナの感度が端末ごとにバラツキがあり、安定して位置測位ができるようにするため。通話はできないが、あらかじめ登録した定型文を使ってSMSの送信はできる。

 料金は「現在検討中だが、2年間の通信費込みで販売する予定」とのこと。地図は1度ダウンロードすれば以後は通信料は発生しない。販売時期は現時点では未定で、国内のほかに海外での展開も視野に入れている。「海外では健康志向が強い国もあり、レンタルサイクルが増えている。自転車通学を推奨する学校もある」という。

photophoto ドコモのネットワークを利用して自転車の走行記録や消費カロリーなどを残せる「ポタナビ」。自転車に取り付けて利用する
photophotophoto 消費カロリー数に応じてグラフィックが変化する(写真=左)。やや厚さがあるが、持ちやすいコンパクトサイズだ(写真=中)。こちらは裏面(写真=右)
photophotophoto 自転車に取り付ける器具も用意する(写真=左)。SIMスロット(写真=中)。メニュー画面。定型文を用いたSMS送信も可能(写真=右)
photophotophoto 地図や渋滞状況などがリアルタイムに分かる「ドコモドライブネット」は、タブレット向けのサービスも披露されていた(写真=中)

 3月1日にサービスを開始する音声エージェント「しゃべってコンシェル」のデモも実施(日本語のみだが)。「○○さんにメールを送りたい」「明日の天気は?」などを端末に話しかけると、○○さんへのメール送信画面を起動、天気予報が分かるサイトにアクセスするといったことを自動で操作してくれる。明確な目標がなく、ただ会話をするだけでも使えるそうだ。雑音の多い会場では正確に認識できないことが多く、認識精度はまだ改善の余地がありそうだ。このサービスにはフュートレックの音声認識エンジンと、ドコモの言語解析エンジンを用いている。

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photophoto ドコモの音声エージェント「しゃべってコンシェル」。佐藤さんにメールを送る/明日の天気予報を調べるデモを実施
photophotophoto 4月1日から開始される携帯端末向けマルチメディア放送「モバキャス」も紹介
photophoto CEATEC JAPAN 2011でも紹介された着せ替えセンサージャケット。息を吹きかけることで、口臭やアルコール量などを測定できる(写真=左)。こちらもCEATEC JAPAN 2011で紹介されていた「超速充電バッテリ」内蔵ジャケット。チタン酸リチウムバッテリーを用いることで、従来の10倍速く充電できるようになる(写真=右)
photo ドコモの災害時における取り組みについても紹介。こちらに関心を示す海外メディアも多いとのこと

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