2月27日から3月1日にかけ、携帯電話業界最大の展示会「Mobile World Congress 2012」(以下、MWC)が、スペイン・バルセロナで開催された。会期前日からHuawei、Sony Mobile Communications、HTC、LGエレクトロニクスといったメーカー各社が新端末を発表。展示ブースでも、数多くの端末やサービス、ソリューションが紹介されていた。そのような状況の中、富士通やパナソニック モバイルなど、国内メーカーが例年以上に注目を集めていたのは今年ならではの傾向といえるだろう。富士通のクアッドコア搭載試作機や、パナソニック モバイルの「ELUGA」を海外メディアの記者が興味深そうに触っている光景は、今までのMWCでは見られなかったものだ。一方で、マーケットとして日本が以前よりも海外メーカーに重視されているようにも感じた。

Tegra 3搭載で指紋センサーや防水、おサイフケータイなどに対応する富士通の試作機を使って行われた、ゲームのデモ(写真=左)。パナソニックは「ELUGA」のほか、5インチディスプレイを採用した「ELUGA power」も出展(写真=右)例えば、上述したHuaweiの記者会見では、LTEに対応した「Ascend D1」を日本に投入していきたい方針が語られたほか、重要なマーケットとしてYu氏は中国、米国、日本を挙げている。一方で同じ中国に本拠地を構えるZTEも、MWCの記者会見で廉価なモデルに加えてハイエンドモデルもポートフォリオに加えていく計画を語り、「ZTE Era」など多数の機種を発表。こうしたハイエンドモデルを受け入れられる市場として欧州、米国、日本、中国を挙げている。ZTEのVice President、EropeのFan Jiongyi氏は「日本でもLTE端末を出していきたい」と述べており、TD-LTE版のスマートフォンも、ソフトバンクモバイル次第で導入できる準備があることを明かした。
また、HTCのCEO ピーター・チョウ氏も筆者の取材に対して「今年はさらに日本に深くコミットしていく」と述べており、MWC会期中にKDDIと共同で日本に特化した端末を開発するという発表を行っている。ソニーの100%子会社という意味では日本勢に含まれるのかもしれないが、Sony Mobileも記者会見やラウンドテーブルで、あえて「Xperia acro HD」に言及。同社のCEO、バート・ノルドベリ氏や、CMOのスティーブ・ウォーカー氏が、国内外のメディアに向けて日本では一定の成功を収めていることを語った。

新ブランドの「HTC One」を発表したピーター・チョウ氏。会見では触れられなかったが、KDDIと共同でスマートフォンを開発していくことが会期中明らかになった(写真=左)。NTTドコモから発売中の「Xperia NX」や、発売予定の「Xperia acro HD」に言及するSony MobileのCEO、バート・ノルドベリ氏(写真=右)MWCは2009年から取材しているが、ここまで日本市場についての言及が多かったのは初めてだ。フィーチャーフォン全盛の時代とは異なり、海外で販売したベースモデルをローカライズするだけで端末が開発でき、ゼロから開発するよりコストが抑えられるというのが理由の1つだろう。また、日本では特にハイエンド端末の売れ行きが伸びやすい傾向がある。メーカーにとっては1台あたりの単価が上がることになり、トレンドを先取りする意味でもテストマーケティング的に端末を投入しやすい。スマートフォンシフトによって、海外メーカーにとっても日本市場が魅力的に映るようになったようだ。通信環境も海外と歩調が合っている。LTEはあくまで“世界の先頭集団”として導入され、“世界を大きく引き離した”3G導入時のような独走はしていない。こうした事情も、海外メーカーの端末投入を容易にしている原因だと考えられる。日本と世界の距離がスマートフォンやLTEによって一気に縮まった――地理的には遠く離れたスペインで開催されたMWCだが、以前より世界が近くに感じられるようになった。
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