新iPadの高速通信に期待/EMOBILE LTE好調の理由/「W-VALUE割引」対象変更に要注意石野純也のMobile Eye(3月11日〜3月23日)(1/2 ページ)

» 2012年03月23日 19時51分 公開
[石野純也,ITmedia]

 春分の日があったためか、3月11日から23日までの2週間は、比較的前半にニュースが集中していた。中でも注目度が高かったのは、16日に発売された「新しいiPad」(以下、新型iPad)のイベントだろう。ソフトバンクモバイルからは代表取締役社長兼CEOの孫正義氏が駆けつけ、店頭でイベントを行った。また、その前日にはイー・アクセスがLTEのサービスを開始している。こちらも販売は好調だったようで、ユーザーの高速通信に対する期待感がうかがえる。日曜日と祝日の間に発表されたためか、あまり大きいな話題にはなっていなかったが、19日にはウィルコムの「W-VALUE割引」の対象費目が変更になった件も、これから契約をするユーザーには影響が大きい。ここでもう一度取り上げ、仕組みを解説していきたい。

「新しいiPad」が発売、孫氏は将来的なLTE対応に言及

photo セレモニーで新型iPadの魅力を語る孫正義氏

 3月16日に新型iPadが発売された。Appleからの発表があったように、新型iPadはすでに世界で300万台の販売を達成している。発売日には、新型iPadを取り扱うソフトバンクモバイルが、オープンしたばかりの「ソフトバンク銀座」で店頭セレモニーを開催。同社代表取締役社長兼CEOの孫正義氏が登壇したほか、CMでおなじみのトリンドル玲奈さんも駆けつけイベントに花を添えた。同店舗には最大で約70人が行列を作っていた。イベントでは、孫氏が新型iPadのRetinaディスプレイを称賛。「ドット数が少ないと人間の目が補正しようとする。iPadのディスプレイはフォントもきれいなので目が疲れない」などと語った。

photophoto トリンドルさんを動画で撮影して、カメラの性能を披露(写真=左)。販売開始の瞬間。銀座という土地柄のためか、くす玉が割られるような派手な演出はなかった(写真=右)
photophoto 右が新型iPadで、左がiPad 2。写真では分かりにくいが、目で見ると画面の精細さが一目瞭然だ(写真=左)。カメラのサイズの違いが、外観で最もiPad 2と異なるところかもしれない(写真=右)
photo ソフトバンク銀座店内で、報道陣の囲み取材に応じる孫正義氏

 セレモニー開催後には、孫氏が報道陣の囲み取材に応じた。質問は主に通信関連に集中。新型iPadの売りの1つはLTEへの対応だが、北米やカナダ限定で日本や欧州などの周波数では利用できない。孫氏は「積極的にやっていきたい」とLTEのサービス開始に前向きの姿勢を見せたが、新型iPadについては「アメリカのLTEで設計されている」と述べるにとどまった。仮に既存の周波数帯でLTEを展開しても、ハードウェア的に対応はできないようだ。900MHz帯に関してはすでにアナウンスがあったとおりで、7月25日から新型iPadでも利用可能になるという。取材時には「速度はそんなに変わらない」と述べていた孫氏だが、実際は下り最大21MbpsのHSPA+に接続できる。HSPA+はiPadやiPad 2が搭載していたHSDPAに比べると理論上の速度が速く、MIMOや64QAMなどの方式を採用しているためスループットも上がる可能性は高い。900MHzの通信方式を「W-CDMA」と答えてしまった孫氏だが、どうやらHSPA+に対応する件を忘れていたようだ。囲み取材後、広報担当があわてて訂正を入れる一幕もあった。

 ド忘れは誰にでもあることなので、この発言だけをもって揚げ足取りをするつもりはないが、通信速度の向上は、RetinaディスプレイやA5X、iSightカメラなどと並ぶ新型iPadの特徴の1つ。900MHz帯の獲得も、ソフトバンクモバイルにとっては念願だったはずだ。その周波数帯の上で始めるサービスの通信方式や速度を間違えるのは、新端末の発表会では細かなスペックまでそらんずる孫氏らしくないと感じた。新型iPadのRetinaディスプレイは2048×1536ピクセルというPCよりも高い解像度を持ち、これに対応したアプリやサイトの容量は結果的に以前よりも増加する可能性がある。逆に考えると、通信速度が今までと同じだと、アプリのダウンロードやサイトの表示は遅くなってしまう。新型iPadが高速通信サービスのLTEやHSPA+に対応したのも、こうしたバランスを考慮した上でのことだろう。iPadの魅力を「トータルバランス」と評する孫氏だけに、本業である通信も含めての見解を披露してほしかったというのが筆者の本音だ。

 なお、行列はできていたものの、新型iPadは当日であれば予約なしでも購入できた。取材後、いくつかの量販店を回ってみた限りでは、Wi-Fi版の一部容量やカラーが品切れになっていたが、Wi-Fi+4G版は比較的余裕がある様子だった。発売後の土日にも当日販売されていたことを確認しているので、容量やカラー、通信方式に強いこだわりがなければ、それほど待たずに入手できそうだ。

イー・アクセスがLTEサービスを開始、予約数も「予想以上」

下り最大75Mbps「EMOBILE LTE」開始──「速い、広い、安い。とにかく最高の“世界標準”LTEサービス」と千本会長

photo 販売開始イベントには、板野友美さんもCMの衣装で駆けつけた。写真はビックカメラ店頭での様子

 新型iPad発売の前日にあたる15日には、イー・アクセスがLTEのサービスを開始した。同社は都内の家電量販店でイベントを開催。代表取締役会長の千本倖生氏や、代表取締役社長のエリック・ガン氏が登壇し、新サービスへの期待感を語った。イベントには同社のCMキャラクターであるAKB48の板野友美さんも駆けつけた。

 予約の状況については千本氏は「予想以上に入っている。ありがたい」、ガン氏は「新規だけでなく、既存のお客様の機種変も多い」と話していた。あまり大々的にはうたわれていないが、既存のサービスからEMOBILE LTEに機種変更すると、5月31日までは契約解除料が1万円割引になる。こうしたマイグレーションのための施策も、功を奏しているようだ。実際、イベント開催時は早朝だったため客足はまばらだったが、当日はシステムの都合で契約に通常以上の時間がかかっていた。「速い、広い、安い」(千本氏)というEMOBILE LTEの特徴が、着実にユーザーに浸透していることがうかがえる。

photophoto ビックカメラには、EMOBILE LTEのコーナーに、価格や速度などをまとめた表が掲載されていた(写真=左)。販売開始直後の店内の様子。客足はまばらに見えたが、実際にはその後、契約が殺到していたようだ(写真=右)
photo イベント後、囲み取材に応じる千本会長(奥)とガン社長(手前)

 以前から述べているように、イー・アクセスはLTE対応スマートフォンを2012年度末までに投入する予定。イベント終了後の囲み取材では、この件についてガン氏があらためて言及した。端末調達にあたってはFDD-LTEが強みになるという。2月に開催されたMobile World Congressでは「(発表された新機種の)全部がLTE中心で、TD-LTEやWiMAXは何もない」という千本氏。こうした世界的な潮流を取り込みやすいのが、FDD-LTEの強みになるという。エリアが十分になったからだが、LTEのデータ通信網で音声通話を行う「VoLTE」の導入も検討しているという。

 一方で、同社はソフトバンクモバイルが獲得した900MHz帯を逃している。これについての見解を求められた千本氏は「少し残念だったが、(ソフトバンクモバイルとの)点数も1点差。700MHz帯で3枠については、可能性が大きく出たので大歓迎」と語った。また、ガン氏によると、700MHz帯の方が国内では端末の調達もしやすくなるという。「3社で一緒にできるので、端末の開発も早くなる」(ガン)というのが、その理由だ。千本氏も「ドコモさん、KDDIさんと一緒になってやれば、ベンダーも色々と出てくる。端末やチップセットは3社で大きな市場になる。900MHz帯を1社でやるよりいいのでは」と述べ、今後の周波数帯獲得に意欲を示した。

photo 75Mbps対応のエリアは、イー・アクセスのサイトで確認できる

 ちなみに、EMOBILE LTEの速度は下り最大75Mbpsとうたわれているが、これはドコモと同様、一部のエリアに限った話であることには注意したい。EMOBILE LTEは1.7GHzの周波数帯を使用しており、この帯域は既存サービスのDC-HSDPAと共通で合計15MHzとなる。LTEで75Mbpsを達成するためには10MHz幅が必要だが、DC-HSDPAにすでに10MHz幅を使っている場所については帯域幅を確保できない。そのため、DC-HSDPAエリアではLTEの速度が37.5Mbpsとなる。逆にDC-HSDPAを5MHz幅のHSPA+にダウングレードすれば、LTEを75Mbpsでサービスできるというわけだ。同社によると、すでに都市部ではDC-HSDPAエリアが広がっているため、HSPA+化はLTEの普及の様子を見ながら慎重に行っていくという。LTEの75Mbps対応エリアは同社のサイトで公開されている(外部リンク)ため、契約時にあらかじめ確認しておくようにしたい。

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