ソニーモバイルコミュニケーションズ製の新型Xperiaが好調だ。8月9日に発売された「Xperia GX SO-04D」、10日に発売された「Xperia SX SO-05D」ともに発売直後から品切れとなる店舗が多く、事前予約をしていないユーザーが入手することが困難な状況が続いている。今回取材をしたXperia SXは、Xi(LTE)やデュアルコアCPU(MSM8960)に加え、FeliCa、赤外線通信、ワンセグにも対応するなど、幅54ミリ、約95グラムという小型軽量ボディに多彩な機能やサービスが凝縮されている。
Xperia SXではどのようなユーザーをターゲットにしているのか。LTEスマホ最軽量といわれるボディや4ブロックのデザインは、どのような経緯で完成したのか――。Xperia SXの開発に携わった、ソニーモバイルの商品企画担当の内田氏、デザイン担当の日比氏とリンダ氏に話を聞いた。
これまで、ソニーモバイル(旧ソニー・エリクソン含む)が日本市場向けに投入してきたXperiaシリーズは、すでに海外で発表または発売されたモデルがベースになっていることが多かった。しかしNTTドコモが2012年夏モデルとして発売したXperia GXとXperia SXは、ベースモデルのない、完全な“日本向け”のモデルだ。そのため、「ドコモさんとやり取りも含め、完全にゼロから企画がスタートしました」と内田氏は振り返る。
小型のXperiaといえば、日本では2011年8月に発売された「Xperia ray SO-03C」が思い浮かぶ。Xperia SXも、どちらかといえばこのrayと同じ系譜に属するモデルといえる。ただしrayはFeliCa、ワンセグ、赤外線通信はサポートしておらず、これらの「3種の神器がないのが惜しい」という声が多く挙がったという。そこで「まずFeliCa、ワンセグ、赤外線通信の搭載は必須としました。だからといってサイズが大きくなると、“コンパクトでプレミアム”というコンセプトは維持できません。rayの発売から1年が経ったので、同じサイズで機能を拡張しようと頑張りました」と内田氏は説明する。SXを開発するにあたり、ray開発時の技術が生かされていることに加え、ソニーモバイルはフィーチャーフォンでは「premini」などの小型モデルの開発も得意としており、“小型”と“プレミアム”を両立させるノウハウが蓄積されていることも大きかったようだ。
Xperia SXのLTE対応も早い段階から決まっていたという。「Xiがドコモさんの主流になりつつある中で、3Gのみだと、その時点でプレミアムと言うのは辛いので、妥協なく最先端のスペックを搭載しました」と内田氏。ソニーモバイルが考えるプレミアムとは何か。「いろいろな切り口があると思いますけど、デザイン、色、機能、パフォーマンス――すべてを高い次元で包括するものですね」と内田氏は答える。
惜しいのが防水には対応していないこと。「もちろん防水対応を望む声もありますが、商品の特性やサイズを検討すると、防水にしない方が、我々が望む形を実現できました」と内田氏は話す。ワンセグのアンテナを完全に内蔵しておらず、付属のアンテナケーブルを装着する必要があるのも惜しい点だが、「ワンセグを載せないという瀬戸際の選択もあった」(内田氏)ことを考えると、搭載できたことを評価したい。
このほか、「Xperia mini」や「Xperia U」も小型ボディを特長としているが、Xperia SXと比べると、相対的に低い価格帯に位置づけられ、スペックは抑えられている。日本市場を強く意識した今作では「コンパクトだけど高品質なものにこだわりました」と内田氏は力を込める。「小型モデルへのニーズは海外にもありますが、海外のローエンドモデルが日本で受け入れられるかというと、必ずしもそうではないと思います」(内田氏)
Xperia SXとXperia rayを比べると、サイズはrayの約53(幅)×111(高さ)×9.4(厚さ)から、SXは約54(幅)×115(高さ)×9.4(厚さ)ミリで幅と高さが若干増しているが、重さはrayの約100グラムから95グラムに軽くなっている。これは2012年6月26日時点(ソニーモバイル調べ)におけるLTE対応スマートフォンでは世界最軽量だ。rayから機能向上を果たしながらさらに軽くできたのは、部品を見直して効率よく配置したため。また、これまでフィーチャーフォンを使っていた女性が片手で使えることにも配慮した。「スマートフォンは大画面化に向かっていますが、SXは違うポジションを目指しました。胸ポケットにも簡単に収まるので、Blackはビジネスマンにも使っていただけるのではないでしょうか」(内田氏)
rayとほぼ同サイズを維持しながら、ディスプレイがrayの3.3インチ(480×854ピクセルのフルワイドVGA)から3.7インチ(540×960ピクセルのQHD)へと大型化(と高解像度化)できたのも特筆すべき点だ。「rayは若干解像度が低いよねという声もありました。そこで、rayと同等のサイズにディスプレイを最大限収められるよう、側面をギリギリまで攻めて狭額縁設計を施しました」(内田氏)
「Xperia rayは日本市場においては女性をメインターゲットに据えていましたが、Xperia SXでは男性と女性を半々くらい取ることを目指しました」と内田氏はターゲットの違いを説明する。そこでSXのプロモーションカラーはBlackとし、当初からBlackありきで開発を進めてきたという。一方でXperia GXとの棲み分けは以下のとおりに考えているという。「『スマートフォンは画面が大きくないと』という人もけっこういらっしゃいます。GXはXperiaとして最大クラスの4.6インチ液晶を備えています。SXは手にフィットするサイズ感を重視していますが、機能も妥協したくない、特にフィーチャーフォンから買い替える方を意識しています。(3種の神器のうち)GXはFeliCaのみを載せていますが、SXはワンセグや赤外線もあるので、日本の機能に慣れ親しんだ方にも違和感なく使っていただけると思います」(内田氏)
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