「Mac App Store」はソフトウェア産業を21世紀へと誘う“負の遺産”を断ち切る(5/5 ページ)

» 2011年01月14日 18時14分 公開
[林信行,ITmedia]
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ソフトウェア産業を21世紀へと誘う扉

 Mac App Storeから大きく脱線したが、Mac App Storeの大きなメリットのいくつかは、まさに前の項目の中で述べた。なんといっても重要なのは「発見性」――つまり、質の高いアプリケーションを見つけやすいということだ。

Mac App Storeでは、表示されるアイコンの大きさや文字の大きさとのバランスといった見た目も非常によく吟味されている

 うまく編集された、購買欲を刺激するいくつかの特集ページ(実際には「ニューリリースと注目作品」、「What's Hot」、「スタッフのお気に入り」などのいくつかのセクションに分かれている)。常に変化を感じさせるトップチャート。欲しいアプリケーションのブラウジングを可能にするカテゴリー分け。偽のキーワードによるだましが通用しない検索機能。さらには所有欲をくすぐるアイコン表示や特集コンテンツのグラフィックスといった、デザインとレイアウト的な工夫も、App Storeでの売り上げ向上の重要な要素だと思う。

 スペックシート重視の会社では、「要件を満たした」というだけで満足してしまいがちだが、いかに美しくプレゼンテーションをするかは、売り上げを大きく左右する重要な要素だ。例えば、レストランのメニューなどで写真の質が違えば、それだけで食欲が変わることはすぐに想像がつくだろう。

 さらにApp Storeは、そうした見せ方の工夫をするだけでなく、ブログやTwitter、Facebookなど、ソーシャルメディアを使ったバズも起きやすいように工夫がされている。また、Webブラウザからもコンテンツへのアクセスが可能になっており、各アプリケーションの紹介ページにURLが用意されている。

 また、原稿執筆時点ではまだ始まっていないが、いずれMac App Storeアプリケーションのアフィリエイトサービスも始まることだろう(記事では割愛したが、昨年行ったフィル・シラー氏へのインタビューでこの話題を持ち出したところ、とりあえず肯定もしなかったが否定もしなかった)。

 こうなれば、Macのアプリケーションを積極的に紹介するブログなども増えていくだろう。つまり開発者にとっても、自分のアプリケーションが紹介される機会が増え、露出面で大きな期待が持てるということだ。

 筆者はよく、iPhone関係の講演で、App Storeが「ソフトウェア産業の融合をもたらした」と話している。「元素図鑑」の作者、セオドア・グレイ氏もApp Storeについて、こんなことを言っている。「App Storeは魔法のような流通インフラです。その魔法にかかると、インターネットで無料で手に入るモノに、10ドルや15ドルの値段をつけてもポンポンと売れるようになるのです」。

 これまで携帯電話用アプリ開発者、ゲーム機用アプリ開発者、PC用アプリケーション開発者といったように、ハードウェアプラットフォームで分断されていた開発者が、App Storeという魔法のインフラが登場したことでiPhoneに集まり始めていた。アップルはそれをうまく呼び水として使い、その流れをMac用ソフトにまで広げようとしている。

 拡大するiPhoneアプリ市場に参入しようとすると、開発者は必然的に開発用機材としてMacを買わざるを得ない。そしてMacを使い始めると、iPhone用アプリを開発するのと同じXcodeというツールで、わずかな手間でMac用アプリケーションも作れることに気付かされる。これは企業の規模が小さく、意志決定を行うポストがエンジニアと近い会社ほど影響を受けやすいだろう。そんな点からも今年はMac App Storeが面白くなりそうだ。

 Mac App Storeは今後、ソフトウェア流通の流れを大きく変えていくにちがいない。最新のMacBook Airでは、ついに本体から付属のOSインストールディスク(DVD-ROM)がなくなり、代わりにUSBのフラッシュメモリが付属していた。また、iTunesでの映画の販売/レンタルなども、光学式ディスクの利用を少しずつ減らしていこうとするアップルの思惑にうまく合致しているが、Mac App Storeはそうした流れにもピッタリとフィットする。

 ちなみに、現在アップルの「App Store」という商標登録に対して、マイクロソフトが「アプリケーションを扱う小売店のサービスを表す総称であり、商標登録できない」と意義を申し立てをしているが、これはマイクロソフトがiPhone/iPadを見て、今後のソフトウェアビジネスにおいて、アプリケーション市場の整備が重要だと認めた何よりの証拠だろう。

 マイクロソフトには、是非これをスマートフォンだけのこととして捉えずに、Windows用アプリケーション市場にも用意してほしい。何故ならソフトの不正コピーやウイルスの問題で悩まされるWindowsプラットフォームでこそ、厳正な審査が行われたアプリケーション市場が必要だからだ(そしてもしマイクロソフトが、キチっとデザインされたアプリケーション市場を用意できれば、あまりに多すぎるWindows向けソフトウェアに圧倒されて、良質な製品が埋もれてしまう問題はある程度は改善できるかもしれない)。

 いすれにせよMac App Storeは、「未来に向けた大きな一歩」と感じずにはいられない、革命的サービスだと思う。

「MacBook Air」をApple Storeで購入する
8万8800円から購入可能になったスリムノート。


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