スマートフォンで今度こそ変わる、“モバイルワーカー”の仕事スタイル(2/2 ページ)

» 2010年06月30日 10時40分 公開
[日高彰,ITmedia]
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禁止する管理から効率的・生産的な管理へ

越川 日本企業の幹部の方とお話ししていて少し残念に感じるのは、例えば情報漏えいを防ぐためにノートPCは持ち出し禁止とか、スマートフォンは個人情報が入るのでダメだとか、ネガティブな部分をどう取り除くかだけに力を入れてしまいがちで、IT投資もそちらに寄っていると思うのです。でも、それを上回る生産性や利益の向上があるということにもう少し目を向けていただけると、一般のケータイではなくWindows phoneを選んでいただけるのではないかと思っています。

―― 「法人向けケータイ」と呼ばれるカテゴリーの機種では、機能をわざわざ削って音声通話くらいしかできなくしているものもありますね。

青野 あるメーカーに勤務している人の携帯を見たら、はがしたら跡が残るシールをカメラのレンズに貼って、使えないようにされていたんです。日本の労働者はこんなことをしないとケータイを会社に持ち込むことすらできないのかと。カメラに大きなシールが貼ってある携帯なんて、かっこ悪くて持ち歩くのも嫌ですよ。だったら、システムで管理してくれたほうがまだいい。KUNAIを使えば、カメラ機能だけ禁止するといった設定も可能です。

―― それはKUNAIとWindows phoneの端末管理機能が連動していて、KUNAI側のユーザーインタフェースを操作すると、端末の設定が変わるということですか?

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青野 そうです。これは端末のだいぶ根っこのほうに触れるので、そのためのコンポーネントを弊社にOEM供給していただいて実現しています。「端末をなくしたときは遠隔で全部初期化できないと、スマートフォンは怖くて持てない」というニーズが必ずありますので、KUNAIの管理機能もKUNAI上のデータを消せるだけではダメで、端末に入っているほかのデータや機能も含めて、全部管理できるようにしました。将来は、例えばRFIDやGPSなどと連携させて、研究開発の部署に入るとカメラが自動的に使えなくなるというところまでいければ理想的です。

越川 私の場合、メンバーがいま何をしているかを基本的にはスマートフォンで管理して把握しています。端末とOffice Communications Serverを連動させて、「会議中」「外出中」「取り込み中」といったステータスを知ることができて、そこからActive Directory連携で電話をかけたりメッセージを送ったりしています。

青野 かっこいい(笑) 位置情報は使えそうですね。

越川 位置情報やプレゼンス情報(ユーザーの状態)との連動はこれからさらに可能性があると思います。例えばプレゼンス情報とKUNAIやSharePointが連動して、そのときオンラインのメンバーに連絡や決裁依頼が行くようなソリューションも実現できると思います。席にいない人に連絡を取ろうとして、いつまで経っても返事がないということがなくなりますし、例えば会議中はメールや電話が着信しないようにして、自分の部屋に戻ってきたら決裁承認依頼がまず届くといったことも可能になります。海外出張の間も、現地が夜の間は電話がかかっても自動的に留守電につながってくれるといいですよね。

スマートフォン一般化のカギは多様化

―― 今後スマートフォンを使ったワークスタイルを、中小企業を含め企業の規模や業種を問わず広げていくには、どのような道筋が考えられるでしょうか。

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青野 Windows phoneがそうだったように、スマートフォン市場で一番最初に火が付くのは先進的なコンシューマーで、その次にビジネスユーザーが来るわけですが、最初はビジネスユーザーの中でも投資と割り切って端末を買える、毎月使っても通信料金くらいの元は取れてしまう、エグゼクティブ層がまずは使い始めます。今、スマートフォンを持つ人はいわゆるナレッジワーカーと呼ばれる方々だと思います。

 その次の段階は(端末、使い方、ユーザーなどの)多様化です。例えば、ある企業では店舗にPOS端末を置く代わりに、スマートフォンに業務アプリを入れて、タグを読み取れば売上が登録されて在庫が1個減るというように、スマートフォンをレジの代わりに使っています。このように、その端末がスマートフォンかどうかすら意識していない人たちが持ち始める。こういう多様化が進むことで、スマートフォン導入のすそ野が広がっていくと思います。我々がマイクロソフトさんに期待したいのは、端末の多様化です。

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越川 マイクロソフトは全キャリアからWindows phoneを出すことができました。今後は、この業務に合うものはこの形の端末、といったように、さまざまなモデルが出てくると思います。特に形状とか、入力のしやすさといったところでは、OS側でも端末メーカーさん側でもいろいろ工夫できるところだと思います。KUNAIの素晴らしいところは、PCとはまったく異なる、指で操作できるユーザーインタフェースを、しっかりスマートフォンのスクリーンサイズに収めているという点だと思います。今後、スマートフォンを使う層をナレッジワーカーから広げていくとなると、このスクリーンサイズに合わせた最適なUIというものがより重要になっていくと思います。マイクロソフトとしてもUIのベース部分は改善していきたいと思いますし、我々だけでできない部分は、ぜひパートナーさんと取り組んでいきたいと思います。


モバイルではUIが生産性を決定する

青野 (サイボウズモバイル KUNAIの)UIは相当ダメ出ししましたね。試作のときは文字が小さくて「こんなの、年配の社長さんは読めない」とか。

越川 動きの“ヌルヌル”感、文字の大きさ、ボタンの大きさとか、本当に秀逸ですよね。

青野 あと、外にいる人がどの優先度のワークフローを処理したいかを考えるのも大事です。例えば、承認依頼通知の画面を何も考えずに設計すると、早く来た順に並べてしまいますが、外に出てすぐにやらなければいけないのは、その人がただ「確認」すればいい処理ではなくて、その人が「決裁」しないと先に進まないものです。しかも至急マークが付いているとさらに優先度が高い。KUNAIでは、それがUIに反映されていて、下のほうに表示されている承認依頼のほうが早く届いている場合もありますが、上から見ていけばとりあえず至急ものは片付けられます。

越川 外出先になると社内にいるときより業務の優先順位が分かりにくくなるのを、UIでカバーしている。こういうところは、確実にビジネスのスピードアップにつながりますね。ユーザーの視点に立った心地よさという点が、実際に使ってみると大きいと思います。

青野 使っている人でないと分からない便利なUIを作り込めると、ユーザーからすると「こいつ、分かってるなあ」という感動にもつながります。逆だと「なんでここにこのボタンがないかなあ」とかいうことになる。

―― 情報機器もこれだけ進化してくると、デバイスが変わっても「できること/できないこと」はそんなに大きくは違わない。でも、使いやすくないと生産性は上がらない。ビジネスシーンにおいても、機能自体よりむしろUIのほうが重要かもしれませんね。

青野 サイボウズが創業したときも、グループウェアではLotus Notesが半分以上シェアを持っていて、機能では圧倒的に負けていましたが、機能はいっぱいあっても、なかなか全員が使えるものではなかったんです。やはりUIが生産性の高さを決めるような気がします。ガルーンを使っているユーザーさん――大企業の50代くらいの幹部の方というイメージですが――にとっては、メニューからアプリを選んで立ち上げるということすら分かりにくいかもしれない。それがWindows phoneなら(スリープから復帰直後に表示する画面までカスタマイズ可能なので)「電源ボタンを押してください」だけですから。

スマートフォンでビジネスシーンが変わり、早く帰れる

越川 「KUNAI」という名前も、かっこよくていいですよね。

青野 名前はかなり考えましたね。最初は「モバイルなんとか」といった名前を考えていたんですけど、ほとんど商標を取られているし、それを聞いてもいわゆる“日本の一般的なケータイ”であったようなサービスの延長のような感じで変わり映えがしないので、全然違う路線で行こうということになりました。その中で、ビジネス戦士として戦うための武器のようなイメージのものがないかと探していたら、「苦無(くない)」という道具があると知りました。調べてみると、ただ武器になるだけじゃくて、壁を上るときにも使えたり、ナイフにも使えたりする。この万能感がいい。現代のビジネスパーソンの、万能の武器です。

―― これまでよく見かける「モバイルなんとか」は、PC版の「なんとか」の機能限定版ということが多かったですが、今回はそうではない、ということですね。

青野 スマートフォンで使うKUNAIをブランディングしたいんです。僕が使っている感覚からすると、スマートフォンはケータイの延長ではなくPCに近いですね。スマートフォンって何ですかと聞かれたら、「ポケットに入るPCです。そのPCは、常にインターネットにつながっていて、瞬時に起動します」というイメージです。それくらい便利なもの。この先10年でビジネスシーンが大きく変わると思うんです。でも、今この変化に気づいている人はあまりいないのではないでしょうか。

越川 米国では「できるビジネスパーソンはスマートフォン」という認知がかなり進んでいます。今後は日本でも「スマートフォンを使っていると早く帰れる」といったメリットを伝えていきたいです。移動中にメールを見ていれば、外から会社に戻る必要もなくなりますから。僕も最近はなるべく早く帰って、帰る途中に映画を見たりしようとしているのですけど、そういうワークスタイルになると、日本はもっと明るくなるのではないかと思います。

 スマートフォンで、仕事のスタイルがより快適で便利に――。こうした言葉はすでに使い古された感もあるが、本当に仕事のスタイルを快適で便利に変えてきたソリューションはまだそれほど多くない。単に「メールが外で読める」「PC用のWebサイトが外で見られる」というレベルの効率化にとどまらず、これから広がっていく無限の可能性の入り口として、Windows phoneとサイボウズモバイル KUNAIは強力なタッグと言えそうだ。

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