インタビュー
» 2013年04月08日 17時37分 UPDATE

開発陣に聞く「Xperia Z SO-02E」(前編):新しい体験と美しさ――「Xperia Z」の“ガラスの1枚板”に込めたメッセージ (1/2)

スペックの高さはもちろんだが、7.9ミリというスリムなボディと、背面のガラスパネルが大きな存在感を放っている「Xperia Z SO-02E」。開発者インタビュー前編では、企画、プロダクトデザイン、カラー&マテリアルの担当者の話をお届けする。

[田中聡,ITmedia]

 2013 International CESで発表されて以来、世界中で大きな話題を集めてきた、ソニーモバイルコミュニケーションズのスマートフォン「Xperia Z」。日本ではNTTドコモから「Xperia Z SO-02E」として2月9日に発売され、6週連続で販売ランキングトップ1に躍り出るなど、好調に売れている。

photophoto ソニーモバイル製の「Xperia Z SO-02E」。ボディカラーはブラック、パープル、ホワイト

 Xperia Zには、5インチフルHD(1080×1920ピクセル)の高精細なディスプレイ、クアッドコアプロセッサー、ソニーのExmor RS for mobileを用いた1310万画素CMOSカメラを搭載するなど最先端の技術が詰め込まれている。こうしたスペックだけなら同等の他社製品も存在するが、厚さを7.9ミリに抑えたスリムなボディと、表面だけでなく背面にもガラスを使った美しいデザインもXperia Zの価値を高めている。ソニーが“スーパーフォン”と銘打つXperia Zの開発ストーリーを、企画、デザイン、カラー、機構設計、ソフトウェアの担当者に聞いた。

photo 上端左からプロダクトデザイン担当の日比氏、企画担当の柏原氏、機構設計担当の大口氏、下段左からカラー&マテリアル担当の金田氏、ヒューマンインターフェースデザイン担当の秋山氏

世界的なヒットを狙えるモデルに仕上がった

photo 企画担当の柏原氏

 これまでのXperiaは、グローバルで発売したモデルに大きく手を加えず日本に持ち込んだものと、日本向けにカスタマイズしたモデルの2種類が存在した。例えば前者なら「Xperia arc SO-01C」「Xperia NX SO-02D(海外ではXperia S)」、後者なら「Xperia acro SO-02C」や「Xperia acro HD SO-03D」だ。しかし企画担当の柏原氏は、「グローバルで好評だったものが、残念ながら日本ではいまひとつの評価だったモデルもありました」と話す。逆もしかりで、Xperia acro HDの海外版である「Xperia acro S」も、日本ほどの売れ行きではなかったそうだ。しかし今回発売されたXperia Zは、海外でも日本でも好評で、「世界的なヒットを狙えるモデルに仕上がった」と柏原氏は胸を張る。Xperia Z SO-02Eではワンセグや赤外線通信などを新たにサポートしながら、サイズはグローバル版とまったく同じであるのも特筆すべき点だ。

 またXperia Zは、ソニーの完全子会社になってから初めてゼロから開発したスマートフォンでもある。これによってソニー本体とのコミュニケーションがしやすくなり、ソニーの技術がよりスムーズに結集されるようになった。それはWALKMANアプリ、Exmor RS for mobile、モバイルブラビアエンジン2といったもので具現化されている。ソニーモバイルになったことで、開発思想は変わったのだろうか。柏原氏は「Xperiaで培ってきた開発思想は継承しているので、根本的な思想はそれほど変わっていませんが、ソニーとの連携がより強まりました」と話す。

 ちなみに、Xperia Zではタッチパネルに触れたときの音が変更されている。「今までは“チッ、チッ”という小さい音でしたが、Xperia ZではPS Vitaをベースにアレンジした音に変更していて、2013年以降のモデルに採用しています。細かいところではSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)とも協業しているわけです(笑)」(柏原氏)

スタミナモードはなぜ非搭載に?

photo 日本のXperia Zに搭載された「省電力モード」。時間帯やバッテリー残量に応じてWi-Fi、データ通信、画面輝度などをオフにできる

 グローバル版と日本版の比較という意味で、日本版では省かれた機能もある。その1つが「スタミナモード」だ。スタミナモードは、ディスプレイのバックライトがオフになると、Wi-Fiとモバイルデータ通信を一時的にオフにする機能。Android端末はバックグラウンドで通信するアプリが多く、使っていないときも無駄な電力を消費しがちだが、スタミナモードを活用すれば、そうした事態を防げるわけだ。日本向けのXperia Zには、バックライトの輝度やWi-Fiなど消費電力に影響のある機能を一括で制御できる「省電力モード」を用意しているが、この機能はバックライトのオン/オフには連動しない。

 日本向けXperia Zにも欲しいスタミナモードだが、この機能では、特定のアプリだけを例外扱いにする――例えばGmailやspモードメールはバックライトオフでも通信を切らない――といったことができず、スタミナモード適用中は、全アプリの通信が止まってしまう。柏原氏は「ユースケースや使い勝手を勘案した結果、搭載を見送りました」と話す。各種メールや情報配信サービスなどがバックグラウンドで通信できないことが、ユーザーの不利益になると考えて搭載を見送ったものと思われる。ただし「引き続き検討はしていきます」(柏原氏)とのことなので、アップデートでの対応に期待したい。

※ソニーモバイル側のコメントに誤りがありましたので、スタミナモードに関する記述を一部修正しました(4/16 14:40)。

ガラスの板が新しい体験の窓になる

 Xperia Zを語る上で外せない要素がデザインだ。これまでもアーク形状や透明素材(Floating Prism)など、従来のスマホにはない手法でユーザーを驚かせてくれたが、今回は背面にもガラスパネルを使い、1枚のガラス板のようなデザインを実現している。ガラスパネル自体は「iPhone 4S」にも採用されているので特別目新しいものではないが、実物を見ると、その造形の美しさは一線を画すると感じる。背面にもガラスを採用した意図はどこにあるのだろうか。

photo ガラスの1枚板を目指したというボディ

 プロダクトデザイン担当の日比氏は「デザインとしては、なるべく要素を削ぎ落としたく、所有感や価値観を高めるような手法がないかなと模索していました。そこで、最初はガラスを表だけでなく全面に使おうというアイデアもありました。表裏と左右上下の6面をガラスで包んだ箱ができないかをイメージし、ガラスの板が新しい体験の窓になるという、シンプルなところに落とし込みたかったんです」と話す。ガラスの1枚板――というイメージは当初から日比氏の頭の中にあったようだ。

 実際にガラスを使ったのは表と裏の2面のみで、上下と左右の側面にはプラスチックを使っているが、「見た目や触った感じは限りなくガラスに近い触感」(日比氏)だという。「ガラスを使う場合、割れないようにするための加工も含めて、若干凹ませる必要がありますが、(プラスチックと)比べると持ち心地があまりよくないんです」と日比氏が話すように、指のかかる側面は持ちやすさを重視してプラスチックとした。また、コネクタカバーの安全性からも、ガラスよりプラスチックの方が適しているそうだ。

ガラスを使ったことで厚さ7.9ミリを実現

photo プロダクトデザイン担当の日比氏

 Xperia Zには、いわゆる“最厚部/最薄部”がなく、7.9ミリという厚さを均等に実現し、フラットなボディを形成している。これも特筆すべき点だ。厚さが8ミリを切ることは当初から目標としており、「意地の7ミリ単位です」と日比氏は笑う。「20ミリのものが5ミリ増えてもあまり印象は変わりませんが、10ミリ以下のものがコンマ5ミリ増えると別物になってしまいますね」(日比氏)

 この薄さを実現できたのは、ガラスを使ったことが大きい。「ガラスは強度が高いので、ものすごく薄い部材でも剛性が高く、ねじれに強いんです。同じ強度をプラスチックで実現しようとすると、本体自体が厚くなってしまいます」と日比氏は説明する。また日比氏によると、プラスチックは完全にフラットにすることは難しく、見た目がフラットでも映り込みが若干ゆがむのだという。完ぺきな1枚板は、ガラスだからこそ実現できたわけだ。

 無駄をできるだけ排除してシンプルなデザインを目指したXperia Zだが、「シンプルなものは退屈なものと紙一重」(日比氏)でもある。シンプルだけど、個性を主張するようなものを目指す……ここからXperia Zの「オムニバランスデザイン」というコンセプトが生まれた。オムニは「全方位」を意味する言葉で、Xperia Zの場合、縦と横どの方向から手にしても、同じような感覚で使えるよう目指した。「オムニバランスデザインでは、どこに対してもシンメトリー(左右対称)であることを突き詰めました。スマートフォンは(左右や上下)逆に持ってしまうこともありますけど、それを感じさせない形状にこだわりました」と日比氏は話す。

 この均一感のあるデザインの中で存在感を放っているのが電源キーだ。右側面のやや上にある大きな電源キーは、片手で持ったときにも押しやすく、デザイン面でのアクセントにもなっている。最初は側面の中央に電源キーを置くアイデアもあったそうだが、それでは、目をつぶってXperia Zに触れると上下どちらに触れているのかが分かりにくい。ポケットに入れた状態でも端末の上下が認識できるように、あえて電源キーは上方向に備えた。

photo アイコニックな電源キー。電源キーを目立たせるため、ボリュームキーは背面と同じ色にしている
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