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» 2009年04月07日 11時11分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:ハイエンドPCとワークステーションの境界線を考える (1/2)

インテルの新CPU投入に合わせて各社がワークステーションのラインアップを一新した。日本HPの製品を例に、ハイエンドPCとの境界線を考えてみた。

[元麻布春男,ITmedia]

インテルアーキテクチャのワークステーションがラインアップを一新

 インテルが新しいNehalem(開発コード名)アーキテクチャベースのXeonを発表したことに合わせ、日本ヒューレット・パッカードは同社のインテルCPUベースのワークステーション製品を一新した。HP Z Workstationシリーズのラインアップは、シングルソケットのエントリーモデルZ400シリーズ、デュアルソケットでミドルレンジのZ600シリーズとハイエンドのZ800シリーズの3つ。いずれも内部は、Nehalemに合わせ刷新されているが、Z600とZ800についてはボディも含めたフルモデルチェンジとなっている。特にZ800はハイエンドモデルにふさわしく、内外とも非常に力の入った製品となった。

ht_0904hp01.jpg ハイエンドのZ800シリーズ
ht_0904hp02.jpg ミドルレンジのZ600シリーズ
ht_0904hp03.jpg ローエンドのZ400シリーズ

BMW Group DesignworksUSAとのコラボレーション

 Z800の外観上の特徴を一言で表せば、精緻(せいち)な力強さ、ということになるのではないだろうか。ボディの左右のサイドパネルには、分厚いアルミパネルが採用されているが、単純な一枚板ではなく、中央部が絞られた複雑なカーブを描く。このデザインは、BMW Group DesignworksUSAとのコラボレーションで生まれたものだ。

 一般にアルミニウムは放熱性に優れるものの、軽量であるためストレージデバイスやファンといった可動部品の振動などにより共振しやすい。Z800シリーズは、アルミニウムを素材に用いながら、厚みを増すと同時に、単純な形状を避けることで、不快な共振を防止している。Z800シリーズの内部には、最大で合計12個におよぶ冷却ファンがあり、各部を適切に冷却しているにもかかわらず、非常に静かなマシンに仕上がっている。

 外観上のもう1つの特徴は、本体上部にビルトインされたハンドルにある。いくら頻繁に持ち運ぶものではないとはいえ、メイテナンスの際、あるいはプロジェクト終了による異動など、マシンを動かす機会は少なからず存在する。標準構成で21キロの本機を運ぶのにハンドルがあるとないとでは大違いだ。

 このハンドルがボディの外部に突き出すのではなく、本体上部に埋め込まれるように設置されており、全体のフォルムとしては直方体を維持している。このため、従来のxwシリーズワークステーション同様、このZシリーズも19インチ標準ラックにラックマウントすることが可能だ(ラックマウントキットは別売)。デスクサイドに縦置きした場合も、上部がフラットであるため、例えば上部にテープドライブを置いておく、といった使い方ができる。

 分厚いサイドパネルを開いた内部も、外部と同じように、非常に凝った作りになっている。内部は、上部の電源ユニット部、前部のストレージデバイスエリア、中央部のCPUおよびメモリ、下部の拡張カードエリアの大きく4つに分かれているが、中央部と下部は効率的な冷却と静粛性を高めるためのフェアリングで覆われており、サイドパネルを開いただけでCPUや拡張カードが目に飛び込んでくることはない。このフェアリングはもちろん、サイドパネル、ストレージデバイスや拡張カード類を含め、内部のアクセスにネジ回しなどの工具は不要だ(サイドパネルをカギでロックすることは可能)。

ht_0904hp04.jpg HP Z800 Workstationのサイドカバーを外したところ
ht_0904hp05.jpg BMW Group DesignworksUSAとのコラボレーションによる新デザインを採用する
ht_0904hp06.jpg 内部はツールレスでユニットが着脱でき、メンテナンス性も配慮されている

冷却効率やメンテナンス性を追求した内部構成

 最上部にマウントされる電源ユニットは、本機のために開発された80 PLUS SILVER対応の高変換効率のもの。1.1キロワット級の出力を備え、4Gバイトのグラフィックスメモリを搭載したQuadro FX 5800の2枚構成にも対応可能な電源供給能力を持つ。電源ユニットは、ボディの前後をほぼ貫通する細長い形状で、内蔵する2個の冷却ファンは電源ユニット専用(電源のファンでPCのほかの部分を冷却しない)となっている。この電源ユニットの着脱も工具不要であるほか、バックプレーンとコネクタで接続されるため、ケーブルレスで交換が容易だ。

 前部のストレージデバイススペースは、上が光学ドライブ、下が3.5インチHDDのエリアになっており、着脱に工具を必要としない。HDDは専用のマウントにセットしてロックするだけで、ケーブルの接続などは不要だ。このHDDエリアの後部には2個の冷却ファンが設置されており、熱に弱いHDDを守っている。

 中央部のフェアリングの下にCPUとメモリがある。デュアルソケット構成をサポートするZ800シリーズが発表時点(2009年4月)でサポートするCPUは、2.0GHz動作のXeon E5504(TDP 80ワット)、2.66GHz動作のXeon X5550(TDP 95ワット)、2.93GHz動作のXeon X5570(TDP 95ワット)、3.2GHz動作のXeon W5580(TDP 130ワット)の計4種類。5月以降、Xeon E5520(2.26GHz/TDP 80ワット)、Xeon E5540(2.53GHz/TDP 80ワット)、Xeon X5560(2.80GHZ/TDP 95ワット)といったCPUも追加される見込みだ。ファン付きのヒートシンクが取り付けられたCPUは前後に並んでおり、そのままでは後部側のCPUの冷却効率が低下してしまう(前部のCPUで暖められた空気を受けることになるため)が、本機ではフェアリングを用意することで、後部側のCPUの冷却効率低下を防いでいる。

ht_0904hp07.jpg 電源ユニットもハンドルを手前に引くだけで取り外せる
ht_0904hp08.jpg HDDもレバー操作で簡単に交換が可能だ
ht_0904hp09.jpg 最大5基のHDDを内蔵することができる

ht_0904hp10.jpg 12本のDIMMスロットと2基のCPUを搭載可能なZ800シリーズ
ht_0904hp11.jpg 発表会で展示されたZ800にはQuadro FX 4800が装着されていた
ht_0904hp12.jpg Z800では合計12個のファンを内蔵しているが、騒音も極力抑えられているという

 メモリスロットは最大で12スロット(デュアルCPU構成時)。ECC付きのアンバッファDIMMとレジスタ付きDIMMの両方をサポートする(混在不可)。発表時点でバリデーションが完了しているのは4GバイトのアンバッファドDIMMを12枚用いた48Gバイトまでだが、年内には8Gバイトのレジスタ付きDIMMを12枚用いた96Gバイト構成がバリデーションされる見込みだ。さらに16GバイトのMetaRAM(専用の変換チップを用いることで大容量を実現したDIMM)を用いた192Gバイトの構成も将来的にサポートするとしている。これだけのメモリを安定して運用するために、メモリスロットの上を、2個の冷却ファンを備えたフェアリングでカバーしている。システムの中でメモリとCPUは、グラフィックスと並んで最も発熱量の多い部分だけに、メモリフェアリングとCPUヒートシンクの計4基に加え、ボディ背面に2個の冷却ファンを設け、安定動作に努めている。

 メモリ/CPU部の下、HDDの後ろが、拡張スロット部だ。独立したフェアリングに覆われたここには、グラフィックス用のPCI Express 2.0(Gen2)x16スロットが2基に加え、PCI Express 2.0(Gen2)x8スロットが2基、PCI Express 2.0(Gen2)x4スロット(コネクタはx8)が1基、PCI Express x4スロット(同)が1基、32ビットPCIが1基の計7スロットが用意される。

 用意されるグラフィックスオプションは、金融などに向けたマルチディスプレイ対応の2Dグラフィックス向けQuadro NVS 295から、スーパーハイエンド3Dグラフィックス向けのQuadro FX 5800まで多岐にわたる。価格も、1万円台から47万円台まで、ユーザーの用途と予算に合わせて選択できる仕組みだ。

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