取締役・金子勇が考えるエンジニアの未来、経営の明日Winny裁判と向き合って(3/3 ページ)

» 2011年08月26日 17時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
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最大の仕事は「裁判に勝つこと」

 金子氏とともにインタビューに応じてくれたSkeedのマーケティング担当者は、金子氏を指して「パパのような存在だ」と笑顔で話していたのが印象的だった。就職経験もあり、大学院での助手を務めているときの逮捕、裁判といった遍歴を経た金子氏には、引き出しが多い、と言う。

――さきほど高裁での逆転無罪について聞きましたが、まだ裁判は続きますね。

金子 今お話しした「若手開発者の邪魔をしない、彼らのやりたいことが仕事に繋がっていくような環境を作る」ということとも通じるものがあります。わたし自身の反省として、そんなつもりは無かったとはいえ結果として「自分の後に続くプログラマー達の邪魔をしてしまった」という思いがあります。

 逮捕されたときは、警察に協力するのは当たり前だ、と素朴に考えてしまっていたんですね。ある時、これは自分のことだけでは済まされず、日本中のソフトウェア開発者にとっても影響の大きな話だということに気づいたんです。ソフトウェアの開発そのものが、罪に問われてしまっては、発明やイノベーションは生まれてこない。そこからは、一所懸命に戦うと心に決めました。

 ですから「今、金子さんのお仕事は?」と聞かれたら、真面目に「裁判に勝つことです」と答えるようにしています。「Winnyの金子」と呼ばれることにも違和感は無くなりましたが、本音を言えばWinnyを越えるような凄いソフトウェアを作りたいと思っているんですけれどね。お話ししたように、今、そのための環境は整いつつありますから、若い人たちに刺激を受けつつ頑張りたいと思います。


 筆者はこれまで何度か金子氏と話をする機会を得ているが、高裁での逆転勝訴に加え、Skeedという技術主導の環境を得て、これまで以上に金子氏は充実感を得ているという印象を受けた。Skeedでの氏の活躍と、続く裁判が良い方向に向かうことを願いたいと思う。

著者紹介:まつもとあつし

 ジャーナリスト・プロデューサー。ASCII.jpにて「メディア維新を行く」ダ・ヴィンチ電子部にて「電子書籍最前線」連載中。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレスジャパン)『生き残るメディア死ぬメディア』(アスキー新書)など。取材・執筆と並行して東京大学大学院博士課程でコンテンツやメディアの学際研究を進めている。DCM(デジタルコンテンツマネジメント)修士。


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