従来のケータイ(フィーチャーフォン)からスマートフォンに乗り換えて、大きく操作性が変わるポイントの1つが「文字入力」だろう。これまでは物理キーで入力していたものが(ほとんどの機種で)タッチパネルに変わり、ディスプレイに触れながら入力するスタイルになる。日本語入力システムもスマートフォン向けに作り込まれており、細かい部分で物理キー付きのケータイとは操作性が異なる。スマートフォンではどの入力システムが使いやすいのだろうか。2010年冬モデルに「Xperia SO-01B」(Android 2.1)を加えた13機種と、日本語入力アプリの「OpenWnnフリック対応版」と「Simeji」2種類の入力機能を検証した。
日本語入力システムは、多くの機種が「iWnn」を採用しており、操作性で共通している部分が多い。ただし同じiWnnでもメーカーごとにカスタマイズを施しており、「HTC Desire HD 001HT」と「HTC Aria」はフリック入力非対応、自動カーソル移動は(iWnn対応機では)シャープ端末のみ対応など、機種によって異なる部分もある。また、入力ソフトのOpenWnnフリック対応版は、iWnnと同じくオムロンが開発したOpenWnnをベースに、野田邦昌氏がフリック入力機能を追加したものだが、こちらも細かい仕様は異なる。
「REGZA Phone T-01C」はこの中では唯一「ATOK」をプリセットしているが、他の機種もAndroid マーケットからTrial版をダウンロードすることで利用できる。「Pocket WiFi S」は富士ソフトの「FSKAREN(エフエスカレン)」、Xperiaはソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ独自の「POBox Touch 3.0」を採用している。
いずれの機種もQWERTYキーボードを搭載しないフルタッチ形状なので、文字入力には画面に現れるソフトウェアキーボードを使用する。タッチパネルの利点は、言語や好みに応じてキーボードの形を変更できること。日本語の場合、ケータイのキーに近いテンキーと、QWERTYキーのどちらかを使って入力できる。スマートフォンなら、テンキーなら縦向き、QWERTYキーなら横向きが入力しやすいだろう。キーボードの種類は文字種ボタン(長押し)や設定ボタンなどから変更できる。
ケータイやスマートフォンでは必須ともいえる「予測変換」と、変換した単語に続く単語を予測してくれる「連携予測」には、どの機種も対応している。iWnn、POBox Touch 3.0、OpenWnnフリック対応版、Simejiは英単語の予測変換も可能だ。固有名詞など変換候補に表れない文字を簡単に呼び出せる「ユーザー辞書」も、どの機種やアプリでも利用できる。
タッチパネルならではの操作といえるのがフリック入力だ。iPhoneでもおなじみだが、テンキーを4方向にフリックすることで、1つのキーに割り当てられた文字を1ステップで入力できる。「お」「こ」など従来のキーだと入力回数が多かった文字を入力するのに便利だ。母音が「あ」の文字は、これまで通りキーを1回押せばよい。iWnnでは標準的な機能だが、前述の通り、HTC製端末やFSKARENはフリック入力に対応しておらず、1回ずつキーを押す必要がある。フリック入力を重視するなら、OpenWnnフリック対応版やSimejiに替えた方がいいだろう。
ATOKではフリックに加えて「ジェスチャー入力」も用意されている。ジェスチャー入力では「か」行なら「か」〜「こ」のすべての文字をフリックで入力する。フリックする方向も異なり、十字型ではなく扇形にフリックする形になる。か行なら「か」は左、「く」は上、「こ」は右方向にフリックすればよいが、「き」は左斜め上、「け」は右斜め上でややコツがいる。ジェスチャー入力だと、濁点付きの文字を2回のフリックで入力できるメリットもある。なお、T-01Cには、キーを押したときに表れるジェスチャーガイド(プレビュー)を表示させない「ジェスチャー入力Pro」も用意されている。
シャープ端末のiWnnは独自色が強い。その1つとして、入力した際に端末側が「入力ミス」と判断すると、他の候補を表示してくれる補正機能がある。例えば「はわだ」と入力すると、変換候補に「補正」アイコンが表れ、これを押すと「判断」「パンダ」「ホンダ」などの語句が表示される。先述のとおり、自動カーソル移動に対応するのも、この中のiWnn対応機ではシャープ端末のみだ。
もう1つ細かいところだが、シャープ端末では記号を入力してから、記号一覧を表示させたまま文字の削除ができない。他の機種のiWnnだと右下に削除ボタンが出るが、シャープ端末の場合、右下に出るのは「閉じる」アイコン。したがって、記号一覧から記号を入力してから削除する場合、いったん記号一覧を閉じる必要があり、やや不便だ。
ちなみに、Android端末ではGoogleの音声認識を用いて検索ができるが、GALAXY SとGALAXY Tabにはソフトウェアキーボードに音声認識ボタンがあり、音声認識でメールの本文を入力したり、Twitterにつぶやいたりできる。
機種 | 日本語入力システム | 日本語のキーボード | 予測変換 | 連携予測 | フリック入力 | 自動カーソル移動 | 英単語の予測&連携予測 | ユーザー辞書 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
GALAXY S | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
GALAXY Tab | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
LYNX 3D SH-03C | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
REGZA Phone T-01C | ATOK | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
IS03 | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
SIRIUS α IS06 | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
DELL Streak 001DL | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
HTC Desire HD 001HT | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | − | − | ○ | ○ |
GALAPAGOS 003SH | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Libero 003Z | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
HTC Aria | iWnn | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | − | − | ○ | ○ |
Pocket WiFi S | FSKAREN | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ |
Xperia SO-01B | POBox Touch 3.0 | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ○ |
− | OpenWnnフリック対応版 | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | − | △(予測のみ) | ○ |
− | Simeji | テンキー、QWERTYキー | ○ | ○ | ○ | ○ | △(予測のみ) | ○ |
※初出時にATOKの英単語の予測&連携予測が非対応となっていましたが、正しくは対応してます。お詫びして訂正いたします。(3/11 12:06) |
キーボードスキン(背景画像)を多数プリセットした機種もあり、これもソフトウェアキーボードならではの楽しみ方といえる。シャープの3機種は「Normal」「Chic」「Kyoto」「Metal」「Vivid」(5種類)、001HTとHTC Ariaは「Dafault」「Simple」「Metal」「Light」「Ice」「Classic」「Wood」「Kyoto」(8種類)、OpenWnnフリック対応版は「標準」「シンプル」「メタリック」「グレーβ」「シンプルβ」「メタリックβ」(6種類)のキーボードスキンを用意している。また、Simejiはオンラインから好みのキーボードスキンをインストールできる。
GALAXY SとGALAXY TabのiWnnとPOBox Touch 3.0にはキーボードスキンの設定は用意されていない(Xperia arc SO-01Cが採用するPOBox Touch 4.0ではキーボードスキンが用意される)。また、「SIRIUS α IS06」「DELL Streak 001DL」「Libero 003Z」のiWnnには「キーボードイメージ」の項目があるが、初期状態では1つしかプリセットされていない。
多言語対応が容易なのも、ソフトウェアキーボードのメリットといえる。日本語と英語以外の言語で入力できる機種は多い。GALAXY Sと「GALAXY Tab」は入力方法の「Samsung keypad」から、オランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語などを利用できる。001DLの「Androidキーボード」はドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語の入力に対応している。003Zは中国語の入力も可能だ。Xperiaは「入力方法」から中国語と韓国語キーボードを選べるほか、「スタンダードキーボード」からイタリア語、インドネシア語、オランダ語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語など多彩な言語を選べる。
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