未曾有の震災で見えた通信事業者の“使命”――トップが新入社員にメッセージ

» 2011年04月01日 20時43分 公開
[田中聡,ITmedia]

 4月1日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ、イー・アクセスに新入社員が入社した。現在、携帯キャリア各社は東日本大震災で被害を受けた通信設備の復旧作業にあたっており、震災の余波が残る中での入社となった。2011年の各社の入社実績は、NTTドコモが241人(ドコモグループ全体では344人)、KDDIが211人、ソフトバンクの通信3社(モバイル、テレコム、BB)が323人、イー・アクセスが46人。ウィルコムとUQコミュニケーションズは新卒採用を行っていない。採用数はドコモとイー・アクセスが昨年とほぼ同じだが、KDDIが減り、ソフトバンクグループが増えている。

「ONE docomo」を合言葉に改革を進める――NTTドコモ 山田氏

photo NTTドコモ代表取締役社長 山田隆持氏

 NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏は、「ドコモの社会的な使命」について言及。震災翌日と翌々週に2回、宮城県へ赴いた山田氏は「想像を超える事態だ」と実感し、復旧に向けて最大限の努力をしなければならない」と決意を示した。同氏はドコモは「移動通信サービス」だけでなく「安心・安全」もユーザーに提供しているとし、インフラの回復を最優先事項に挙げた。こうした状況を受け、新入社員にも被災地に赴いて、無料充電サービスなどの対応や被災地の設置端末の確認、保守などの支援をしてもらう考えがあることを明かした。

 ドコモの事業の今後について、山田氏は社長就任時に掲げたキーワード「変革とチャレンジ」をあらためて表明。変革については現場が原点であるという“現場原点主義”を掲げ、ドコモグループが一体となってお客様満足度とドコモブランドを高めるために、「ONE docomo」を合言葉に改革を進めていく。チャレンジについては、「24時間365日手元にある」「各ユーザーと携帯電話がひも付いている」「GPSでどこにいるかが分かる」という携帯電話の特長を生かし、イノベーションを起こす。

 ドコモの当面の課題は「総合ARPUの上昇」「スマートフォンの強化」「docomoの2020年ビジョン『HEART』」と山田氏は考える。

 ARPUについては、モバイルデータ通信を促進させることで、パケットARPUを音声ARPUよりも増やし、総合ARPUの上昇を狙う。2010年12月に開始した次世代通信サービス「Xi(クロッシィ)」のサービスエリアも拡大していく。スマートフォンは2011年に「本格普及期に入る」ことから、端末やサービスの強化はスマートフォンに集中させ、iモードのサービスをスマートフォンにも順次取り込んでいく。2020年ビジョン「HEART」では、豊かな社会への貢献、産業の発展、つながる喜びの創出、安心安全で心地よい暮らしの支援を目指す。

 同氏は「被災地での復旧支援活動は、社会人として自分がどうあるべきか考える機会になると思う。しっかり働き、しっかり考えてほしい。そして明るく活力を持って取り組んでほしい」と新入社員へメッセージを贈った。

通信サービスを絶え間なく届けることが使命――KDDI 田中氏

photo KDDI代表取締役社長 田中孝司氏

 創立から11年を迎えるKDDI。同社代表取締役社長の田中孝司氏は新入社員に対して「皆さんはKDDIのこれから10年の最初に入社した、幸運な211人だ」と祝辞を贈った。KDDIが誕生してからの10年で「ビジネスが大きく変わった」と振り返る中で、ここ最近はスマートフォンで遅れをとり、「非常に厳しい状況になっている」と同氏は実感している。

 そうした中で発生した東日本大震災。KDDIの通信設備も大きな被害を受けたが、現在は「一部の基地局を除いて本格的な復旧フェーズに入るところまで来た」という。今回の震災を受けて、田中氏はあらためて「KDDIの存在意義は通信事業だ」と実感している。ユーザーのライフラインである携帯電話とデータ回線が使えない状況を作ってしまったことを「悔しい」と感じる一方で、「緊急地震速報が役に立った」「auのスマートフォンだけが緊急地震速報に対応している」「移動基地局を投入したことで被災者から感謝の意を聞いた」ことを受け、ユーザーの役に立てたと幸せを感じたという。同氏は、「通信サービスを絶え間なく届けることがKDDIの使命」と決意を新たにした。

 「社会人31年目の先輩」として田中氏は新入社員に「10年後の目標を持ってほしい」「一生懸命勉強して多くの経験を積んでほしい」と提言した。悩んだり心が折れそうになったときは、KDDI全社員が共有する「KDDIフィロソフィ」に基づいた行動を取ってほしいとした。

人々の安心と安全を守り、悲しみを和らげたい――ソフトバンクグループ 孫氏

photo ソフトバンクグループ代表 孫正義氏

 ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は「東日本大震災で亡くなった方や被災された方のことを考えると、晴れやかな気持ちになれない」と複雑な心境を吐露した。孫氏が訪れた福島県の原子力発電所の近くにある避難所は、「本当に過酷な状況だった」という。「現地の通信復旧のために、技術部門の社員はもちろん、その他の部門の社員からも志願者を募って被災地に向かい、復旧に向けて全力で取り組んでいる。我々が提供している通信というサービスが、本当に人々の支えになる、人々の生活に欠かせないライフラインであるということを、今ほど認識したことはない」と孫氏は力を込める。

 震災直後は、トラフィックの増大によって電話やメールがつながりにくい状態となったが、一方でソフトバンクグループのもう1つの本業であるインターネットサービスも活躍し、TwitterなどのSNSからも安否を確認できた。「災害時でもインターネットは人と人をつなげ、さまざまな情報を一瞬でやり取りできる。そういう意味でも、我々の果たす役割は非常に大きい」と孫氏。「これからも人々の安心、安全を守り、悲しみを和らげるために取り組みたい」と決意を新たにした。

非常時の通信手段は社会的な課題――イー・アクセス エリック・ガン氏

photo イー・アクセス代表取締役 エリック・ガン氏

 イー・アクセスも3月11日の震災後、「不眠不休でネットワークの復旧と維持に取り組んできた」。同社代表取締役 エリック・ガン氏は「そんな中で46人を迎えることができて、非常に心強く感じている」と歓迎の意を表した。ガン氏は「非常時における通信手段が社会的な課題。イー・アクセスは通信事業者として大きな社会的責任を担っている」と認識を新たにした。

 イー・アクセスは3月31日に子会社のイー・モバイルと合併し、「固定事業とモバイル事業が完全に融合したユニークな総合通信事業者となった」。ガン氏は「お客様や市場から大きな期待を寄せられていることを自覚し、イー・アクセス社員としてふさわしい企業人になってほしい」と新入社員にエールを送った。

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