このキラーアプリの不在について、ゲーム業界ウォッチャーで知られる元San Jose MercuryのDean Takahashi氏も同意している。同氏によれば、App Storeの6割がゲーム関係で、どちらかといえばメインとして使うようなアプリは限られているという。同氏が考える現状のキラーアプリは「FaceTime」で、このビデオチャット機能がiPadの利用層を拡大する可能性を秘めていると指摘する。
一方で、こうした追加ハードウェアを購入するユーザーは少なく、ゲーム機市場でも過去に成功例はゼロだといい、今年末にMicrosoftがリリースを計画しているモーションセンサー装置「Kinect」は価格の問題もあり普及は非常に厳しい可能性があると同氏は説明する。現状のiPadはフロントカメラを内蔵しておらず、追加オプションなしではiOS 4に搭載されたFaceTimeの機能を利用できない。もし第2世代iPadが登場するのなら、こうしたiPhone 4で採用されたハードウェア仕様の数々を取り込んでいくことが必須となるだろう。


米VentureBeatのDean Takahashi氏(写真=左)。米XEODesignプレジデントのNicole Lazzaro氏。iPhoneとiPadを手に「iPadは片手で扱うには難しいデバイス。iPhoneとは異なる使い方を考えなければいけない」と説明(写真=中央)。米Dictionary.comプレジデントのShravan Goli氏(写真=右)ゲームプラットフォームとしての人気が高まってきているとはいえ、iPhoneが現状のまま任天堂やソニーといったメーカーの携帯ゲーム機市場を食っていくかというと、そうでもないようだ。今のところiPhone/iPadは、あくまで新しいタイプのゲーム機として認知され、任天堂とソニーはその状況を現在様子見している状態だという。
任天堂が先日発表した「3DS」は、こうしたiPhone型デバイス登場に対する回答の1つであり、3D機能を付与することでシングルプレイヤー向けデバイスとしての1つの方向性を打ち出したと指摘している。これに同意するのは米XEODesignプレジデントのNicole Lazzaro氏だ。3D自体は非常に興味深いが、iPhone/iPadはみんなで画面を覗き込んで楽しむ傾向が強く、これらデバイスとは目指す指向性が異なるという。同氏はiPadの本体の重さに触れつつ、片手で遊ぶようなシングルプレイヤーゲームよりも、Face-to-Faceのマルチプレイヤーゲームなど、一種のツイスターゲームの要領で複数のプレイヤーが同時に1つのスクリーンを触るようなゲームのほうがiPadに向いているという。
一方でiPhone/iPadが登場したことによる任天堂やソニー、そして既存のゲームデベロッパーにとってのデメリットは、価格のハードルが上がったことにある。Takahashi氏は「App Storeで安価にゲームが購入できる以上、既存のゲーム機のように毎回30ドル以上のお金を払って子供にゲームを買い与え続けるべきかどうか、親が考え始めている」と意見を述べている。直接市場が競合しないとはいえ、価格のプレッシャーは確実に存在するというのだ。
またiPad向けアプリを開発するにあたって、ユーザーの利用傾向を知ることも重要となる。例えばLazzaro氏は、iPadの特徴として「ベッドに入る前に最後に触るデバイス」だと考えている。逆にいえば目を覚ました段階で「最初に触るデバイス」でもあり、これを把握することで見えてくるものがあると指摘している。例えば辞書ソフトを開発する米Dictionary.comプレジデントのShravan Goli氏は、過去に同社の辞書アプリからの利用傾向を紹介して、iPhone用アプリが(学生が主に利用する時間帯である)月曜日〜金曜日の日中の時間帯が中心なのに対し、iPadはまったく逆の時間帯での利用が20〜50%程度の割合で伸び続けているという。Lazzaro氏の発言を加味すれば、まさに寝起きに利用し、そして週末に家で使うためのデバイスとなっているわけだ。
以上、iPadアプリ開発の現状を簡単にまとめたが、後半ではさらに「成功するiPhoneアプリ開発の実例」「ソーシャルゲームにおけるマネタイズとiPhoneアプリ開発の事業化は?」といったテーマの話題を紹介していく。
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