孫社長がSIMロック解除を容認/フリービットが東京に本格進出/「LINE GAME」が海外展開を本格化石野純也のMobile Eye(8月4日〜15日)(1/3 ページ)

» 2014年08月15日 21時28分 公開
[石野純也,ITmedia]

 各交通機関の混雑状況を見ると、8月11日からお盆休みを取り、ふるさとや行楽地に出かけている人も多いようだ。モバイル業界も例外ではなく、8月11日からはニュースが激減している。一方で、“駆け込みラッシュ”ともいえそうな発表が、8月4日から7日にかけて多数あった。今回の連載では、ソフトバンクの決算説明会、freebit mobileの新機種・新店舗発表に加え、LINEが「LINE GAME」を拡大するための取り組みを取り上げていきたい。

SIMロック解除は「提供すべき」――スタンスを大きく変えたソフトバンク

 ソフトバンクは、8月7日に決算説明会を開催した。業績は引き続き好調。売上高1兆9922億円、純利益776億円(アリババ上場に伴う一時損益を除くと1806億円)で、代表取締役兼CEOの孫正義氏は「他社との比較で頭1つ突き抜けてきた」と胸を張る。

photo 好調な業績をアピールする孫正義氏。
photophoto 売上高、純利益ともに一時的な損益を除けば大幅な増収増益だと強調した

 決算の内容以上に興味深かったのが、孫氏の発言の数々だ。1つ目はSIMロック解除に対するソフトバンクのスタンス。これまで、孫氏は「需要がない」とSIMロック解除の要望を一蹴し、Androidのごくわずかな機種でのみSIMロックを実施していた。2011年に出されたガイドラインには法的拘束力がなく、それに文字通り従った格好だ。

 こうした動きに対し、総務省が制度の見直しを検討。SIMロック解除は、既報のとおり義務化される見通しとなった。7月には総務省のワーキンググループで、SIMロック解除義務化の方向が明記された中間取りまとめが発表されている。このSIMロック解除義務化を受け、ソフトバンクの対応ついて問われた孫氏は次のように語った。

 「私どもとしては、かねてより機能的にも提供すべきで、あってしかるべきだと思っていた。ただし、極端な形で行われるのも理にかなわないことが出てきかねない。方法論については、よく詰めながらやっていくべき」

photophotophotophoto これまでに、SIMロック解除機能が提供されたのはこの4機種のみ。左から、「ARROWS A 301F」「STREAM 201HW」「STAR 7 009Z」「シンプルスマートフォン 008Z」。iPhoneはもちろんだが、ソフトバンクで売れ筋のシャープ製端末もSIMロック解除には非対応だ

 SIMロック解除サービスの提供方法については含みを残しながらも、方針としては賛成だという。これまでの発言と比べると、態度が大きく軟化した格好だ。では、孫氏の想定する“極端な形”とはどのようなものだろうか。これについては、以下のコメントが参考になる。

 「スマートフォンを世界で一番多く売っているのは米国だが、最近の新しいスマートフォンについては、SIMロックがかかって販売されているものがほとんど。それはなぜかというと、各社が販売補てん金のようなもの出し、割賦販売で契約期間を設けているから。販売奨励金の回収が終わるまでは、SIMロックはあってしかるべき。一方で、SIMロックがない端末を高い値段で買いたいというお客さんがいるのも事実。これはこれで、柔軟に対応すべき」

 つまり、ユーザーが販売奨励金に見合った期間端末を使えば、SIMロックを解除するのもやぶさかではないということだ。この発言を文字通り受け取れば、「割賦や月月割が終了した端末はSIMロックを解除する」という提供方法になる。ソフトバンクは現在、Androidの一部機種のみSIMロック解除を行えるようにしているが、ここでは割賦の残債や月月割の有無は問われない。SIMロック解除に全面対応する代わりに、この部分を厳密化する可能性もありそうだ。

 ただ、現在、ドコモは残債や月々サポートのありなしに関わらず、SIMロック解除を提供している。仮に端末のSIMロックを解除しても、回線の契約があり、2年契約や割賦が残っていれば、ユーザーは他社に移らないからだ。前回の連載でも取り上げたように、ドコモの代表取締役社長 加藤薫氏は「海外で現地のSIMカードを挿して使う方が8割」と述べているように、実際、SIMロック解除を行ってもユーザーの流動はあまり起こらないことが分かる。SIMロックフリーもしくはSIMロック解除を提供している海外でも同様のケースが多い。回線に対する割引を行っていれば、孫氏の心配は杞憂(きゆう)に終わるだろう。

 また、孫氏はSIMロックフリーで販売されているiPhoneを引き合いに出し、「現にiPhoneはSIMロックを解除したものが販売されているが、ほとんど売れていない。6万、7万、8万円を出してiPhoneを買いたいユーザーはほとんどいない」と述べているが、これも少々ミスリーディングだ。実際、各キャリアの販売しているiPhoneも、端末の価格自体はSIMロックフリー版と大差がない。実質価格とはあくまで回線に対する割引のこと。割賦という形ではあるが、ユーザーは数万円のお金をiPhoneに対して支払っている。

photo SIMロックがかかっていないiPhoneは、Apple Store(オンライン、店舗の両方)で販売されているが、キャリア版の方が実質価格が安く、売れ行きは芳しくないという

 逆に、もしSIMロックフリーiPhoneの持ち込み契約に対してキャリアが同様の割引を行えば、その比率も大きく変わってくるだろう。さらに言えば、持ち込み契約に割引をつければ、その間ユーザーを留めておくことができる。今後、こうした施策を行うキャリアが出てくる可能性も、ゼロではないだろう。

 SIMロック解除については以前より一歩踏み込んだ発言をした孫氏だったが、同時に実施される見通しのクーリングオフにはやや慎重な姿勢を見せた。孫氏は「消費者保護の観点からすると、ある程度の当然の行為」としつつも、「極端な形になると営業の障害になる」とコメント。成り行きを見守っている他社と同様のスタンスを示した。

 7月1日に提供が始まった「スマ放題」の動向も、孫氏が明かした。孫氏によると、契約者の8割がこのプランを選んでいるという。

 「今日現在は従来型の料金体系とスマ放題の併売をしている。契約状況を見ると、8割ぐらいがスマ放題を選択している。通話がかけ放題になる点に魅力を感じていただいているのではないか」

 このように音声定額が評価されているのは一面の事実だが、通話定額はもともと通話量の多いユーザーが飛びつきやすいプランでもある。また、「iPhone 5 残債無料キャンペーン」の条件にスマ放題の加入があるなど、キャンペーンと料金プランの2つを天秤にかけて選んでいるユーザーもいるはずだ。旧プランが終わったあとの9月以降、スマ放題に変更する人がどの程度いるのかも引き続き注目しておきたい。

 決算説明会では、ソフトバンクグループとしてワイモバイルをどのように位置づけているのかも語られた。イー・アクセス、ウィルコムの2社が傘下だったころは、両社ともLCC(ロー・コスト・キャリア)に位置づけ、低価格なサービスを提供。どちらかといえばイー・アクセスがデータ通信を、ウィルコムが音声をというようなすみ分けもあった。一方で、ワイモバイルを語る際にはLCCのように極端に価格を意識したキーワードを用いておらず、戦略にやや変化があったことがうかがえる。

 「ソフトバンクモバイルが正規軍だとすると、ワイモバイルは別働隊という役割。したがって、別働隊である以上、機能や価格ですみ分けが必要。よりモバイルインターネットという位置づけとして、Yahoo!JAPANとの連携を深めた運営にしていきたい。(中略)いろいろな機能や、Yahoo!JAPANとの連携をテストしていきたい。ワイモバイルだからこそ連携を深めてやっていくことが、テスト的にやりやすい。うまくいったら本体(ソフトバンクモバイル)の方に拡張することもできる。格安スマホとの競争という点でも、それなりの存在意義がある」

photophoto 8月1日にブランドを一新し、サービスを開始したワイモバイル。六本木の旗艦店には、国内未上陸のIoT関連製品をズラリと並べるなど、ソフトバンクモバイルよりも先進性を意識した店舗になっている

 Yahoo!JAPANのサービスと密に連動させ、ユーザー層の広いソフトバンクモバイルではできないことを率先して取り入れる役割を、ワイモバイルに求めているという。あくまで別会社だが、事実上、ソフトバンクモバイルの“サブブランド”的な扱いともいえそうだ。ただし、ワイモバイルは4〜6月の3カ月で、9000件程度の純減を記録している。決算資料ではPHSぶんの純減が大きかったことが分かるが、ワイモバイルにブランド変更したことで、この状況をどこまで巻き返せるのかにも注目したい。

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