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» 2012年12月19日 10時30分 UPDATE

完全分解×開発秘話(前編):「VAIO Duo 11」の“上質なスライドボディ”を丸裸にする (1/7)

Windows 8とともにソニーが投入した新スタイルのモバイルPC「VAIO Duo 11」。開発者が自ら実機を分解し、こだわり抜いた複雑な変形機構の秘密を明らかにする。

[前橋豪(撮影:矢野渉),ITmedia]

・→完全分解×開発秘話(後編):「VAIO Duo 11」を“徹底解剖”して語り尽くす

ソニー入魂の「スライダーハイブリッドPC」を徹底解剖

 名前も、見た目も、使い勝手も、そして中身も、今までのVAIOとはまるで違う――。

 ソニーの「VAIO Duo 11」は、独自のスライド型ボディが目を引くWindows 8搭載モバイルノートPCだ。VAIOの2012年秋冬モデルで目玉となる機種であり、「VAIO Z」が店頭から姿を消した今(ソニーストア直販モデルは継続販売中)、同社のフラッグシップモバイルノートという重責を担う機種でもある。

tm_1212_duo11iv_01.jpgtm_1212_duo11iv_02.jpg 液晶ディスプレイがスライドして現れる独特の変形機構を採用した11.6型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」。これまでのクラムシェル型ノートPCと区別するため、ソニーは「スライダーハイブリッドPC」という愛称を付けている

 詳細なレビューは掲載済みだが、ここでは従来と大きく異なるデザインのVAIO Duo 11が製品化に至るまでの経緯やコンセプト、複雑な変形機構と薄型軽量ボディを両立した内部構造の秘密を明らかにすべく、開発者の方々にインタビューを行った。特に内部構造は、開発者自身の手で実機を分解してもらいながら、じっくり確認していく。

 今回話を伺ったのは、開発を統括したプログラムマネージャーの鈴木一也氏(VAIO&Mobile事業本部 PC事業部 設計1部1課 統括課長)、機構設計を行った浅見正氏(同事業本部 VAIO第1事業部 設計1部3課)、商品企画を担当した金森伽野氏(同事業本部 企画1部 Hardware企画1課)の3人だ。

 PC USERでは以前よりVAIOの注目機種を分解しながらの開発者インタビュー企画を実施してきたが、この3人は初登場ではない。鈴木氏は第1世代の「VAIO P」(VAIO type P)、浅見氏は第2世代の「VAIO P」、金森氏は第2世代の「VAIO Z」および第3世代の「VAIO Z」と、従来機種でも開発秘話を披露してもらった。

 つまりVAIO Duo 11は、ミニノートPCの名機としていまだに根強いファンも少なくないVAIO Pや、突出した性能を薄型軽量ボディに収めたハイエンドモバイルノートPCのVAIO Zなど、VAIOの人気機種を手がけてきた開発者が集まり、Windows 8世代にふさわしい新スタイルのモバイルノートPCを模索し、具現化した製品なのだ。

 VAIO Duo 11はその斬新さゆえ、ひょっとして「Windows 8の新しいタッチ操作向けに、とりあえず作ってみたコンセプトモデル?」と思われるかもしれないが、開発チームの主要メンバーだけを見てもそれが誤解であり、“本気のモバイルノート”だと分かる。

tm_1212_duo11iv_03.jpg VAIO Duo 11を開発した主要メンバー。左が開発を取りまとめた鈴木一也氏、中央が機構設計を担当した浅見正氏、右が商品企画の金森伽野氏だ。鈴木氏はVAIO type Pのほか、VAIO type U、VAIO type A、VAIO type F、VAIO GRなど歴代VAIOノートの開発を手がけてきた。浅見氏は第2世代VAIO Pに続き、今回も分解をお願いした。金森氏はVAIO Zの商品企画を担当してきた

ポストPC時代に一石を投じる「新しいPCのカタチ」

 タブレットやスマートフォンに代表される「ポストPC時代の新デバイスを標ぼうする製品」が台頭する中、ソニーでは、タッチパネルでの快適な操作と、PCとしての高い生産性を高次元で両立した新しいスタイルのモバイルPCを生み出すプロジェクトとして、さまざまな検討が続けられていた。

 その1つとして製品化されたのが、斬新なスライド型ボディを採用し、「スライダーハイブリッドPC」の愛称を与えられた今回のVAIO Duo 11だ。液晶ディスプレイ部をワンアクションでスライドさせることで、ノートPC形状の「キーボードモード」とタブレット形状の「タブレットモード」を瞬時に切り替えて利用できるメリットから、VAIOが推すハイブリッド型モバイルPCとしてこのボディデザインの採用が決定した。

tm_1212_duo11iv_04.jpg 2012年4月26日に公開された「Freestyle Hybrid PC」のイメージ画像

 VAIO Duo 11の原型である「Freestyle Hybrid PC」のイメージ画像が我々の前に姿を現わしたのは、2011年4月に開催された「Sony Tablet」の発表会でのこと。当時は2011年内に投入する目玉機種の1つとして紹介されたが、実際にVAIO Duo 11の名で発売されたのは2012年10月26日、つまりWindows 8の一般販売開始と同日だ。

 発売時期の変更について、金森氏は「Freestyle Hybrid PCの仕様を詰めていくにあたり、2011年末までに我々が考えるレベルには到達しないと判断した。同時に2012年秋に登場するWindows 8ではタッチ操作に最適なUI(ユーザーインタフェース)を採用しつつ、従来のデスクトップモードもサポートしているので、新しいフォームファクタ(スライド型ボディの機構)が最大限生かされ、かつてないユーザー体験を提供できると確信が持てた。そこで、Windows 8との同時発売に予定を組み直した」と振り返る。

 VAIO Duo 11(と同時発表されたVAIO Tap 20)は、ボディデザインだけでなく、製品名もこれまでのVAIOと大きく異なる。従来はVAIO ZやVAIO Tなどアルファベット1文字でシリーズ名を分けていたが、なぜ唐突に“Duo”なのか。

 金森氏によると、「従来の名称はシンプルで覚えやすい半面、各シリーズで提供できる価値がイメージしにくい面もあった。そこで今回は、シリーズの特徴がよりダイレクトに伝わる名称を付けている。“Duo”の場合、タブレットモードではタッチ操作を快適に使っていただき、キーボードモードではタッチ操作を加えながらも、既存のPCと同様の快適さで使っていただく、この2つを高次元に融合させたマシンという意味を込めた」との回答だった。今後もVAIOのシリーズ名は同様の考え方を適用していく方針だ。

VAIO Duo 11はどのような新しい価値をユーザーにもたらすか

 2つのスタイルを柔軟に切り替えられるVAIO Duo 11の想定ユーザーは、「仕事ではアウトプットを最大限高め、遊ぶときはユーザーをよりアクティブにさせる。ビジネスもホビーも両方カバーできるモバイルPCを求める方」(金森氏)とのこと。

 具体的な利用シーンとしては、ソファなどでリラックスしてネットを楽しむときはタブレットモードで手軽にタッチ操作を行い、メールやSNSなどで長めの文章を書くときにはサッと開いてキーボードモードで快適に文字入力をする、といった使い分けが想定されている。

 また、タブレットモードは移動中に仕事で使っているメーラーやスケジューラー、プレゼンの資料、Windowsアプリのデータなどを確認したい場合、既存のクラムシェル型ノートPCのように液晶ディスプレイを開く必要がなく、そのまま電源ボタンを押せばすぐに確認できることから、モバイルでも有用という。

tm_1212_duo11iv_05.jpgtm_1212_duo11iv_06.jpg タッチ操作で手軽に使えるタブレットモード(写真=左)。本体が約1.3キロあるので、実際はこうして片手で持って使うのは短時間でも厳しい。テーブルや膝の上に置いて使うのが自然だ。液晶ディスプレイを立ち上げたキーボードモードでは、慣れ親しんだクラムシェル型ノートPCとほぼ同じ感覚で、キーボードによる文字入力が行える(写真=右)

 もう1つ、VAIO Duo 11で忘れてはならないのが、付属のデジタイザスタイラスによるペン入力のサポートだ。これにより、メールやプレゼン資料の作成時に、手書きのイラストを加えたい、既存の資料に手書きのコメントを添えて送りたい、といった既存のPCでは手軽にできなかったことが容易に実現できることに加えて、タブレットモードならば、紙のノートに向かうように集中して書き込める利点があるとする。

 金森氏は「PCがこれほど優れた仕事道具になっているのに、いまだにペンと紙のノートを併用している方は非常に多い。そこで今回は、Windows 8の採用は別として、最初からペン入力まで統合した新しいPCの価値を提案するつもりだった。ペンでメモしたり、図形や絵を描いたり、あるいは気の向くままに何かを書き出しながらアイデアをまとめたりと、ペンを第2の脳のように活用している方には、VAIO Duo 11が創造性を最大限高めるツールになる」と、ペン入力のメリットを力説する。

 「ペン入力については、本体を設計するうえで実装が難しい部分なので、最初から搭載することを想定していた。途中から採用が決まっていたら、この薄型ボディは実現できなかったはず」と鈴木氏は付け加えた。

tm_1212_duo11iv_07.jpgtm_1212_duo11iv_08.jpg ペン入力はタブレットモード(写真=左)でも、キーボードモード(写真=右)でも行える。キーボードモード時は液晶ディスプレイの角度が固定されるため、筆圧検知に対応したペンで強めに書いても画面がぐらつくようなことはない(写真=右)

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