ソウルの次はオーストラリアのシドニーへ向かった。空港に降り立ちiPhone 4Sの電源を入れると、両者は異なるネットワークに接続。ソフトバンク版は「voda AU」と表示された。これはVodafoneオーストラリア(Vodafone Australia)のこと。さっそくSMSで海外パケット定額の対象事業者である通知も来た。この状態でデータ通信を始めれば、1日最大2980円で利用できる。
一方、au版は「3」が表示され、パケット定額の非対象事業者との接続となったが、注意をうながす通知などはなかった。このまま利用を続けると0.2円/パケットの従量料金で課金される。iPhoneなら大量のデータ通信はあっという間だから、例えば1Mバイトを使うと1Mバイト=1024Kバイト=8192パケット、つまり8192×0.2=1638円になってしまう。
このまま空港から市内に出るため電車に乗ったところ、ソフトバンク版iPhone 4Sに変化はなかったが、au版iPhone 4Sは途中のトンネル内で今度は「Telstra」の表示に切り替わった。3Telstraの電波が弱くなったため、自動的にTelstra Mobileへ切り替わった模様である。Telstra Mobileもauの海外パケット定額の非対象事業者だが、やはり通知の類は一切なかった。
その後シドニーに滞在中、au版iPhone 4Sを何度か電源オン/オフ、機内モードオン/オフを繰り返してみたが、Telstara Mobile以外の事業者には接続されなかった。オーストラリアの海外ダブル定額の対象事業者はVodafone au(GSM)だが、1度もつながらなかった。つまり今回のシドニー滞在中は、au版iPhone 4Sでは1度もパケット定額可能な状況にはならなかったのだ。そのため、滞在後半はデータ通信をオフにせざるを得なかった。せっかくiPhone 4Sを海外に持ち出しているのだからTwitterやFacebookなども利用したかったが、従量料金でのパケット利用は後からの課金が怖くて利用をためらってしまった。

au版iPhone 4Sは空港で「3」の表示。パケット定額非対象事業者だ。市内移動中には「Telstra」に切り替わったが、こちらも定額非対象。だが事業者を手動で切り替えることはできない(写真=左)。電源オン/オフや機内モードオン/オフを繰り返しても事業者は切り替わらなかった(写真=右)ソフトバンク版iPhone 4Sは、逆に何もせずにパケット定額対象のVodafoneオーストラリアに接続したままだった。仮に他事業者のネットワークをつかんでもSMSで通知され、手動で切り替えられる。もちろん、到着後に手動で定額対象事業者に切り替えておくことが望ましい。
ソフトバンクモバイル、KDDI、そしてNTTドコモも海外での定額通信サービスを提供しており、指定された通信事業者のネットワークに接続すれば、1日単位でパケット定額が利用できる。だが渡航先の国によっては複数の通信事業者が利用できるため、定額非対象の事業者の電波を拾ってしまうこともある。各社の携帯電話・スマートフォンには通信事業者を手動で切り替える機能があるが、au版iPhone 4Sはその機能がない。
そのためau版iPhone 4Sを海外で利用する場合は、渡航前に現地でパケット定額利用できる事業者をあらかじめ確認しておく必要がある。そして現地でパケット定額非対象の事業者のネットワークをつかんでしまった場合は、データ通信機能を一時的にオフにして従量料金による課金を防ぐ、という自己対策を講じた方がよいだろう。その上で電源のオン/オフなどの操作をするとよいが、必ずしもデータ定額対象の事業者に接続されるとは限らない。
なお2011年12月現在、auの国際ローミングで渡航先で利用できる事業者が全てデータ定額対象になっているのは、中国・香港・韓国の3カ国である。日本からの渡航者の多いこの3カ国であれば、au版iPhone 4Sを現地で利用中、どのネットワークを利用しても1日2980円でパケット定額が利用できる。そのため自分がどの事業者を利用しているかを気にする必要はない。
だが、これら3カ国以外を訪れる際は状況が大きく異なる。例えば「先週の中国ではパケット定額が利用できた。来週の台湾も同じだろう」と考えてはいけないのである。台湾ではGSM/W-CDMAとCDMA2000あわせて、実に8つのネットワークを利用できるが、そのうちau版iPhone 4Sでパケット定額を利用できるのは2事業者のみ。他の事業者に接続した場合は全て従量料金となってしまう。
ソフトバンク版iPhone 4Sでは、現地到着後に事業者を手動で選択しておけばその状態が固定されるため、例えば中国到着後は定額事業者の「China Unicom(中国聯通)」を選択しおけばよい。中国では他に利用できる事業者「China Mobile(中国移動)」のカバレッジが広く、China Unicomがカバーしていないエリアも多少あるため、自動設定では中国移動に切り替わってしまうこともある。
他国でも同様の状況があるため、ソフトバンク版iPhoneを海外に持ち出した際は、現地到着後すぐに定額対象事業者ネットワークを手動選択しておくとよい。一方、au版iPhoneの場合は前述したように中国・香港・韓国であればどのネットワークをつかんでも定額利用できるが、他国では常に自分のiPhoneが接続しているネットワークに留意しなければならない。

中国ではソフトバンク版iPhone 4S(左側)をChina Unicomに手動で固定した。au版iPhone 4S(右側)は自動的にChina Unicomをつかんでいる(写真=左)。電波の弱いエリアではソフトバンク版(左側)は同じChina Unicomの2G(Eマーク)に切り替わり、定額非対象の中国移動には接続されない。au版(右側)はRoaming表示でChina Telecom(中国電信)に自動的に切り替わった。auの場合はChina Telecomも定額対象だ(写真=右)
香港では市内と空港を結ぶ電車の車内で約20分間、Google マップや観光案内の閲覧、メールチェックを行った。画像の多いサイトを見たこともあり、約37Mバイトを利用。パケット定額でなければ課金は万単位になってしまう。他国では注意が必要だ国際ローミングは対応国へ行けば自分の携帯電話がそのまま使える便利なサービスだ。そして音声通話が主な使い道だった時代は現地で利用するネットワークを気にする必要はそれほどなかった。だがスマートフォンはパケット通信を頻繁に使う製品であり、海外でのパケット通信には国内の定額サービスが適用されず、通信料は割高だ。その対応として各社は海外向けの1日パケット定額サービスを開始しているが、指定された事業者以外では定額が適応されないことを理解しておく必要がある。
円高が続く中、この冬休みに海外旅行に出かける人も多いだろう。だがauのiPhone 4Sを海外に持ち出す場合は、現地で自動的に海外ダブル定額が適用されるのではないことに留意しておきたい。通信事業者の手動切り替え機能は、アップデートなどで対応してほしいところだ。スマートフォンの魅力は海外でも情報収集や発信を自由に行えることなので、早急な改善を求めたい。
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