HTCが日本特化スマホを開発した理由/絵文字統一で変わること/MMS対応でau版iPhone 4Sが優位に?石野純也のMobile Eye(4月9日〜4月20日)(1/2 ページ)

» 2012年04月20日 23時50分 公開
[石野純也,ITmedia]

 ゴールデンウィークを間近に控えた4月9日から20日の2週間は、後半に大きなニュースが集中した。今回は、HTC初の日本特化型モデルとなる「HTC J」の発表、キャリア間での絵文字統一化に向けた取り組み、au版iPhoneの機能向上の3本に絞り、速報記事では言及されていなかった点なども交えてお届けする。

HTCが日本市場に特化した「HTC J」をKDDIと共同開発、おサイフケータイなども搭載に

 HTC Nipponが、20日にKDDI向けのスマートフォン「HTC J ISW13HT」(以下、HTC J)を発表した。ここでは、端末の概要とともに、投入の狙いをあらためて確認していこう。

photophoto 日本市場に特化して開発された「HTC J」(写真=左)。会見にはHTCの本社のある台湾からCEOのピーター・チョウ氏が駆けつけた。ゲストとしてKDDIの代表取締役社長、田中孝司氏も招かれており、2人の親密さをアピールした(写真=右)

 HTC Jは「HTCが初めて、1つの国のためにスクラッチから作った」(HTC Nippon、代表取締役社長 村井良二氏)という、日本市場に特化した機能が最大の特徴。“三種の神器”とも呼ばれるおサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信を搭載し、外観のデザインもKDDIと共同で行っている。村井氏によると、端末名に1文字入れられたアルファベットの“J”は「ジャパンのJから取らせていただいた」とのことだ。 

photophoto 日本市場の重要性を語る、HTC Nipponの代表取締役社長 村井良二氏(写真=左)。端末にはワンセグ、おサイフケータイ、赤外線が搭載されている。赤外線通信は設定メニューから起動するというユニークな方式(写真=右)
photophoto デザインも日本のニーズに合わせて検討が進められた。光沢のあるレッドは、グローバルでは非常に珍しいという(写真=左)。au端末のデザインプロデュースを手掛ける小牟田氏もビデオでメッセージを寄せた。ちなみに、映像フォーマットはHTCのグローバルの会見ではおなじみのもの。こうした演出からも、両社の関係の深さが見て取れる(写真=右)

 ベースになった端末はグローバルで発売中の「HTC One S」だが、microSD/microSDHCに対応していたり、SIMカードが通常サイズだったりと、細かな仕様の違いも多い。WiMAXを搭載し、CDMA/W-CDMAの両方で通信できる点も、HTC One Sにはない特徴だ(W-CDMAはローミングのみ)。あくまでHTC Sense 4.0をはじめとするソフトウェアや、CPU、ディスプレイなどの一部部材の点で、HTC One Sがベースになっているというのが正解だ。

photophoto 端末には通常サイズのSIMカードが採用された。カバーにアンテナが張りめぐらされており、CDMA、W-CDMA、WiMAXやFeliCaなど、他方式の通信に対応する努力の跡がよく分かる(写真=左)。WiMAXに対応しているため、テザリングも利用可能だ(写真=右)

 もちろん、グローバル端末としての実力はそのままで、HTC端末らしい軽快なレスポンスは健在だ。OSには、現時点で最新のAndroid 4.0を採用する。HTCが「amazing camera(驚くべきカメラ)」や「authentic sound(本物の音)」と呼ぶ、HTC Oneシリーズに共通で採用されている機能も、HTC Jに受け継がれている。カメラは800万画素で、F値2.0の明るいレンズを搭載。「0.7秒で起動でき、その間にオートフォーカスも終わっている。次の写真も、その0.2秒後に撮れる」(HTC CPO 小寺康司氏)という軽快な動作も、このカメラの優れたところだ。

photophoto OSにはAndroid 4.0を採用。HTCのUIである「HTC Sense 4.0」でカスタマイズされており、おなじみのアプリ履歴画面は横スクロールになっている。こうした点は、グローバル版のHTC Oneシリーズと共通だ(写真=左)。カメラには特にこだわった。単にキレイな写真が撮れるだけでなく、動画を撮影しながら静止画を保存する機能にも対応している(写真=右)

 では、HTCがカメラ機能を強化した理由はどこにあるのか。答えは、スマートフォンとソーシャルメディアの相性のよさにあった。小寺氏は記者会見で「Facebookにアップされた携帯電話からの写真は45億」という数字を紹介。ただ、仕上がりはデジカメに及ばず、「残念ながらそのうちの9割がピントが合っていなかったり、ブレていたりする」(同氏)。アップロードして人に見せるものだからこそ、仕上がりをよくする必要があったというわけだ。そこで、カメラマンやユーザーなどに話を聞き、「シャッターチャンスを逃さない」「光を多く入れて鮮やかにする」という2つの要素を満たすカメラを開発した。

photophoto HTC Jの魅力を解説するHTCのCPO 小寺康司氏。グローバルも含めたプロダクト全般の責任者を務める(写真=左)。小寺氏は、Facebookにアップロードされた携帯電話端末からの写真が45億であることを紹介した(写真=右)
photophoto 起動が非常に速く、独自開発のセンサーによってHDR撮影にも強いという特徴がある

 音楽機能に関しては、HTCが買収した米国・Beats Electronicsの技術を採用している。本物という意味で、まがい物ではないというニュアンスも含む“authentic”をうたっていることからも分かるように、特徴は「アーティストの意図する音を忠実に再現すること」(同氏)だ。専用回路を搭載しており、Beats Audioのイヤフォンやヘッドフォンを装着すると、それを認識。自動的にサウンド効果がオンになる仕組みだ。音楽プレーヤーだけではなく、YouTubeなどの動画などにも効果が適用される。実際デモ端末で聴き比べたが、オンとオフでは音のよさが格段に違う。また、HTC Jにはauの「LISMO Player」が内蔵されているが、ここにもBeats Audioの補正がかかる。プレーヤーを選ばないのも、ユーザーにとってうれしい仕様といえるだろう。

photophoto 「サウンドエンハンサー」に「Beats Audio」が内蔵されている。イヤフォンも同梱されるが、これも実はグローバル版にはない日本独自の取り組みだ(写真=左)。アーティストの音を忠実に再現するというのが、Beats Audioのコンセプト(写真=右)
photo 日本市場でのプレゼンスを本格的に上げていくため、CMキャラクターには人気急上昇中のアイドルグループ「乃木坂46」を起用した。

 このように、HTC Jは日本独自のローカルな機能と、グローバルの性能を融合したスマートフォンに仕上がっている。では、なぜ世界シェアの高いHTCが、あえて日本市場のために専用端末を開発したのか。村井氏によると「日本マーケットは非常に魅力的」だが、ユーザーのモノを選ぶ目が肥えていることもあり、品質やデザインに対しては非常にシビアだ。こうした市場を攻略することで「再度鍛えられて、海外でもっと強くなれる。日本発のトレンドも再輸出できる」(同氏)という。日本専用端末の開発に踏み切った理由は、村井氏の「トレンドやファッションは、特にアジアの国には、日本から流れていく。端末の数以外の副次的なところで魅力がある」という言葉に集約されるだろう。会見に登壇したHTCのCEO、ピーター・チョウ氏も「コミットメント(約束)をもって日本市場用にカスタマイズしたが、今回の投資は非常に意味があると考えている」と述べている。チョウ氏が“投資”という単語を選んでいることからも、短期的な売上より、長期的なノウハウやトレンドの習得に重きを置いていることがうかがえる。

 一方で、KDDIにとって、日本仕様や日本向きのデザインは必須条件だった。ここ数カ月の売れ行きを見ると分かるように、日本においてはグローバル仕様そのままのスマートフォンが徐々に苦戦を強いられる状況になってきた。結果はふたを開けてみるまで分からないが、「今まではアーリーイノベーターと呼ばれる先進層がユーザーだったが、今年はフィーチャーフォンをお使いの方がいよいよ乗り換えるとき」(村井氏)という市場動向を考えると、この判断は正解だったように思える。グローバルに比べ、日本では十分なポジションを確立できていなかったHTCだが、HTC Jの投入がこうした状況を脱するための第一歩になりそうだ。ゲストとして登壇したKDDIの代表取締役社長、田中孝司氏の「HTC Jを日本市場におけるマイルストーンにしたい」という言葉からも、HTCとKDDIの意気込みが伝わってきた。

photo トークセッションでの息もぴったりの田中氏とチョウ氏。

KDDIとイー・アクセスが絵文字をリニューアル、ドコモのデザインを採用に

 NTTドコモ、KDDI、イー・アクセスの3社が、事業者間の絵文字統一に向けた取り組みを発表した。KDDIとイー・アクセスが、ドコモのiモード絵文字(i絵文字)のデザインを採用。文字コード自体はそのままだが、絵文字の変換によってニュアンスが変わってしまうことや、「〓」になってしまうこと、通常の文字に置き換えられてしまうことなどを解消していく構えだ。3社が関係する複雑な取り組みになるため、1社ずつ、変更の内容を見ていこう。

photo 4社で絵文字を共通化していく取り組み。ただし、まだ完全互換になったわけではない

photo ドコモのi絵文字。このシンプルなデザインが共通化のベースになった。キャラクター性の強いものは、デコメ絵文字に移行しているというのが主な理由だ

 まずは、ドコモに関しては一切の変更がない。広報部によると「他社がi絵文字のデザインを採用するという内容なので、ドコモ側は今までと何も変わることはない」という。現時点では、auの絵文字が数の上では圧倒的に多く、ドコモにない絵文字が送られた場合はやはり「〓」や文字に変換されてしまうが、今のところすぐに対応はしないようだ。

 イー・アクセスは現在、261種類の絵文字を利用している。この中の、238種類がリニューアルの対象だ。広報・CSR室の担当によると「変更されないものについては、デザインもそのまま」だという。ちなみに、差し引きすると23の絵文字が従来のまま残ることが分かる。顔や記号など大半はi絵文字のデザインになるが、「イー・モバイルのロゴや、コイン、HIT!といったマークは弊社独自のもの」(同)で、これらは他社に送信した際に〓や文字などに変換される。また、イー・モバイルの端末には一部KDDIと共通の絵文字が採用されている。「初心者マークや18禁マーク、麻雀パイ、サンタクロース、ギター」(同)などがそれに該当しており、これらもデザインは現状のまま残る。デザイン変更の対象は、5月以降に発売されるフィーチャーフォンやスマートフォン。既存端末も、スマートフォンについてはメールアプリのアップデートで対応していく。

 デザイン変更で一番大きな影響を受けるのが、auの絵文字だ。KDDIは、iモードを開発したメンバーの1人で、i絵文字のデザインを担当した現・バンダイナムコゲームスの栗田穣崇氏に監修を依頼。テレビや新幹線などの絵柄を現代風に再アレンジしつつ、表情などの基本的な絵文字はドコモのデザインを踏襲した。ただ、auの絵文字はトータルで497と数が多く、他社に送るとニュアンスが変わるものや、「〓」、文字に変換される機会も増えてしまう。そこで、一部互換性の取りにくい絵文字をパレットから削除し、送信はできないように対処した。パレットに表示される絵文字は「全部で390に減る」(KDDI広報部)という。ただし、入力できない絵文字も端末内にはセットされており、「au網内で受信した場合は表示できる」(同)。デザイン性が大きく変わってしまうため、既存ユーザーの一部が反発することも予想されるが、旧絵文字は画像化して、デコレーションメールの絵文字として利用できるようにしていく。先に紹介したHTC Jでも、文字入力ソフトから絵文字と同じように呼び出すことができた。従来と操作性も大きく変わらない。対象は夏モデル以降の全機種と、Android 4.0にアップデートされるスマートフォンになる。

photophoto KDDIは栗田氏を監修者として迎え、デザインを一新した。他社と互換性のない絵文字についても、シンプルなものになっている。写真は、HTC Jに内蔵された絵文字
photo 既存の絵文字については、デコレーションメール用の画像として内蔵された。タブの切り替えで、絵文字と同様簡単に呼び出せるため、ユーザーはあまり難しいことを考えずにどちらの絵文字も使える。

 3社の取り組みの中に、ソフトバンクモバイルは入っていなかったが、同社広報部によると「2008年にデザインの共通化を行っており、他社絵文字を表示する機能が搭載されている」とのこと。今後、さらなる共通化に向けた協議は続けていくそうだ。ソフトバンクグループのウィルコムについては、元々i絵文字と互換性を持つ「Web絵文字」を採用しているため、同じくデザインの変更は一切行われない。

 なお、ここで挙げた絵文字共通化の取り組みに、iPhoneは含まれていない。iPhoneは国際共通規格のUnicodeを採用しているためだ。また、iOS 5.1のソフトバンク版iPhoneからMMS(S!メール)を送信した絵文字が、相手先の多くの端末で表示できない事象が起きており、現時点では改善されていない(ソフトバンクモバイルのFAQ参照)。こうしたトラブルを未然に防ぐ意味でも、今後はぜひAppleやGoogleも巻き込み、絵文字の本格的な統一化に踏み切ってほしいところだ。

photophoto ソフトバンクのiPhoneからドコモに絵文字入りのメールを送ったところ。すべての絵文字がカットされてしまい、内容が伝わりにくい。早急な改善をしないとユーザーとのトラブルにもなりそうだが……
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