3社横並びの新料金プラン、何が違う?/BIGLOBEの音声通話サービスにも注目石野純也のMobile Eye(6月23日〜7月4日)(1/3 ページ)

» 2014年07月04日 22時08分 公開
[石野純也,ITmedia]

 6月25日にKDDIは「カケホとデジラ」と銘打った新料金プランを発表した。受付は8月13日から。先行して音声通話定額だけを7月1日から提供している。一足先に新料金プランの「スマ放題」を発表していたソフトバンクも、7月1日にサービスを開始した。ドコモが6月から新料金プランを開始し、そこに2社も追随した格好だ。一方で細かな差異はあるものの、金額は3社とも横並びになった。通話をしないユーザーにとっては、料金が割高にも見える。

 こうした中、MVNOが音声プランを開始し、MNO(ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルなどの通信キャリア)からのMNPにも対応し始めている。6月30日には、ビッグローブが記者会見を開催し、音声プランやそれとセットで販売する端末を披露した。今回の連載では、auやソフトバンクの新料金プランに加え、MVNOの最新動向も取り上げていきたい。

音声定額を巻き上げて開始したau、ドコモとの差はパケットパックの選択肢

 6月25日に、KDDIは新料金プラン「カケホとデジラ」を発表した。このプランの柱は2つで、1つが音声定額。もう1つが、先行したドコモより段階を細かくしたデータパックだ。音声定額については同社の代表取締役社長 田中孝司氏が「申し訳ないが他社同様にさせていただいた」と述べているとおり、ドコモやソフトバンクと内容は同じ。基本使用料が2700円(税別、以下同)で、ナビダイヤル(0570)など一部を除いた通話がすべて無料になる。

photo 新料金プランの「カケホとデジラ」を発表したKDDI。料金プランの内容は田中孝司社長が直接説明した。音声定額ではなく、データ通信に力点を置いた解説になっており、差別化に苦心している様子がうかがえる

 KDDIはデータ通信に対する考え方や料金、容量の設定で差をつけてきた。ドコモやソフトバンクは家族とデータをシェアするプランを用意し、1人あたりの料金を下げるという考え方なのに対し(もちろん個別契約も可能)、KDDIは「データギフト」と呼ばれる仕組みを導入する。余りそうなデータを、家族に明示的に分け与えるというのがデータギフトの仕組みだ。

photophotophoto データシェアにはさまざまな課題があるとして、KDDIが導入したのがデータギフトだ。追加料金不要で、家族に500Mバイト単位でデータを分け与えることができる。ただし、開始は12月になる予定

 田中氏が「パケットシェアにはけっこう課題があり、計算上は10Gバイトを4人で分ければ1人2.5Gバイトだが、現実はデータライフが違い、そんなに簡単には均等に割れない」と述べていたように、データシェアだと家族の誰かが多くデータを使うと、そのほかの家族にしわ寄せがくる。他社はデータパックを家族単位で割り当てているが、KDDIは従来同様、個人をベースにしていく。

 また、データパックの容量設定の段階を、他社より細かく設定した。ドコモとソフトバンクは2Gバイト、5Gバイト、10Gバイト、15Gバイト、20Gバイト、30Gバイトとなっているが、KDDIは2Gバイトと5Gバイトの間に3Gバイトを、5Gバイトと10Gバイトの間に8Gバイトを、10Gバイトより大きなデータパックとして13Gバイトを用意した。上で紹介したように、KDDIの新料金は個人にひも付くため、「個別の料金は段階を細かくして、それぞれに合ったプランを選んでいただけるようにした」(田中氏)というわけだ。

photo 3Gバイト、8Gバイト、13Gバイトのプランを設け、他社より選択肢を多くした

 田中氏が「5Gバイトは横並びだが、5Gバイトより上については安い料金をご提案したい」と述べているように、8Gバイトは6800円、10Gバイトは8000円、13Gバイトは9800円と他社よりも割安な設定にしているのも特徴といえるだろう。細かな設定をしたという点では、追加のデータ量を500Mバイト単位で購入できる「データチャージ」もKDDIならではだ。

photophoto 大容量プランについては、1Gバイトあたりの単価を下げているのも特徴。データチャージは500Mバイトずつ行えるので、他社よりきめ細やかだ

 このほか、固定通信とのセット割引「auスマートバリュー」は、新料金プランでも継続する。auスマートバリューの割引はデータパックにつく形で、「2Gバイトと3Gバイトは入っていただく限りずっと934円、5Gバイト以上は2年間1410円」(田中氏)の割引が適用される。この点はもともと固定通信とのセット割引がないドコモや、8月でセット割の新規受付を停止するソフトバンクとの大きな差になっている。

photo 固定回線とのセット割である「auスマートバリュー」も提供。データパックが容量に応じて割り引かれる

 ただし、新料金プランの受付は8月13日からと、ドコモやソフトバンクに出遅れてしまった。田中氏が「もう少しゆっくりしようかと思っていたが、2社とも出し、営業現場からも早く出せというプレッシャーがあった」と本音を語っていたが、KDDIとしてはVoLTEの開始に合わせて料金プランの刷新を考えていたところを2社に出し抜かれた格好だ。

 慌てて新料金プランを導入したこともあり、各施策の導入時期もバラバラになってしまった。例えば、音声通話定額は先行してソフトバンクと同日の7月1日にキャンペーンとして提供されるが、データパックを含むプランが使えるようになるのは8月13日から。他社との違いを打ち出したはずのデータギフトやデータシェアは12月1日と、準備に十分な時間がかけられなかった様子が垣間見える。

photo 各施策の提供スケジュールがバラバラなことからも、慌てて対策を迫られた事情が見え隠れする
photo 報道陣からの質問に答える田中氏。NTTの光コラボレーションモデルには、改めて反対の意を表明した

 データ通信の料金設定に工夫の跡は見られるが、そもそも基本使用料が横並びな上、音声定額とデータパックを組み合わせるという考え方も他社と同じ。auスマートバリューがなければ、トータルの金額でも大きな差は出ない。仮にドコモやソフトバンクがNTTの光コラボレーションモデルを活用し、固定とのセット割引を始めたらすぐに追いつかれてしまう恐れはある。

 記者会見では「同じ土俵の上で星取をしている。違う土俵は作れなかったのか」といった厳しい質問も飛び出したが、厳しい言い方をすればKDDIもソフトバンクも、ドコモの新料金プランに翻弄(ほんろう)され、後追いをしてしまった印象を受ける。「選べる自由」を掲げていたKDDIには、音声定額をオプションとして用意するなど、横並びにならない工夫をしてほしかったのが本音だ。

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