「Surface Pro 4」と「Surface Book」の率直な疑問――米Microsoft担当者に聞く本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2015年10月23日 08時30分 公開
[本田雅一ITmedia]
前のページへ 1|2       

Surface Bookはサードパーティー製PCと競合しないのか?

 Surface Bookは、Microsoft自身が「究極のノートPC」とアピールする新機種だ。Surface Pro 4同様、タブレット本体を取り外して利用できるが、合体した様子はクラムシェルノートPCそのもので、タブレットにタイプカバーを組み合わせた2in1というこれまでのスタイルとは大きく異なる。

 価格は1499米ドルからとプレミアムクラスのPCに位置付けられ、AppleのMacBook Pro対抗をうたう。とはいえ、プレミアムなノートPCという製品をMicrosoftが手掛けるわけで、気になるのはサードパーティー製ノートPCとのすみ分けだ。

―― これまでのSurfaceシリーズは、いずれもPCメーカーがまだ積極的になれない新領域を早いタイミングで立ち上げるという意図がありました。

 しかし、Surface Bookに関しては既に存在する市場ですよね。そうしたカテゴリにおいて、液晶ディスプレイの画質もキーボードも性能も、そしてペン入力も最高だとなると、これまでパートナーだったPCメーカーとのすみ分けはどこになるのでしょう?

 ブライアンさんは、よりよいSurfaceシリーズの開発という立場ですから、よりよい製品を作るのは当然ですが、Microsoftのビジネスモデルが大きく変わろうとしているようにも感じます。

ホール氏 (Microsoft全体の事業方針ではなく)Surfaceシリーズを担当する私の立場で言えるのは、顧客視点で可能な限り優れた製品を提供することです。あらゆる面で1番を目指します。Surface BookはこのクラスのCore i7を採用する製品の中で最も薄いノートPCでありながら、さらにタブレットとしても使える設計になっています。

 これだけの性能、デザイン、機能を実現できる技術があるのに、それを使わない、製品を出さないという選択肢はありません。Surfaceチームは全力でよりよいPCを開発しているので、可能だとみたらそこに突き進みます。

Surface Book 「2016年の早い時期」に国内でも発売するというSurface Book。見た目はクラムシェルノートPCそのものだ

―― 記者会見で日本マイクロソフトの平野社長が「市場活性化につながれば」と話していましたが、Microsoftが全力で開発したSurface Bookが市場を活性化させることが、(Surface自身とは競合する)他社製PCにもよい影響を与えるという考えですか?

ホール氏 歴史をふり返れば(日本では幾つかのメーカーが挑戦しているが)、Appleがプレミアムクラスのパーソナルコンピュータ市場で大きくシェアを伸ばし、Windows搭載のPCは価格が安いものばかりになっていました。

 そうした中で、Surface Pro 3はある程度のシェアをAppleから奪還することに成功しました。プレミアム市場でWindows PCの存在感が増すことは、Windows市場全体の活性化という意味において、エコシステム全体に対してプラスでしょう。それは他メーカーのWindows PCにおいても同じだと思います。

 Surface Bookではさらに踏み込んで、最高のPCとは何なのかを追求することで、さらにプレミアムクラスのWindows PC市場を開拓し、他メーカー製PCの登場を呼び込めると思います。

―― コンシューマー向けPC市場が縮小傾向の中、Appleがプレミアム市場を席巻している現状では、資金も潤沢なMicrosoftが「最高の製品を作りました」と露払いになる必要はあるかもしれません。

 しかし、ここまで大きな勝負を打てるのは、やはり資金が潤沢なMicrosoftならではという面もあるのではないでしょうか。Surface Bookが成功したとして、その後に続くプレミアムクラスのPCメーカーは登場すると思いますか。

ホール氏 高価かつ技術的ハードルが高い製品を出そうと思えば、もちろん資金面でのリスクは高いでしょう。しかし1番の問題は、明確なビジョンを持ってよりよい製品を作る意思を持つことです。そこにコミットメントをもって、誰よりも強いやる気があれば、おのずと結果はついてくるものでしょう。

 例えば、Tesla Motorsは小さなベンチャーでGoogleに身売りしそうなところまで追い詰められていましたが、「Model S」で突破口を作り、今では時代を代表するアメリカ企業になっています。DJIも小さなベンチャー企業ですが、大人気のドローンを開発して大きな注目を集めています。

 資金力や会社の規模ではなく、よりよい製品を目指してリスクを取って開発すれば、夢のようなことでも実現できる事例だと思います。

 私たちは潤沢な資金を持ったMicrosoftですが、最小限の投資、最大限の効率で事業を進めなければならない立場という面では同じです。よりよい製品を出すために、多くのハードウェア技術者を新規雇用し、事業としてコミットメントを示して、明確なビジョンに向けて進んでいます。

 ということで、私たちの現在の目標はプレミアムのPC市場においてAppleからシェアを奪い、そこにWindowsのエコシステムを確立することです。

 私がMicrosoftに入社した1995年、「Microsoftはインターネットの世界で決して成功しない」と言われていました。2001年になると、MicrosoftなんてPCデスクトップの世界だけでしか通用しないから、企業向けには進出できないとも言われました。同じ頃、ゲーム機を作り、ゲームソフトを開発する会社になると言うとばかにされました。

 私たちは、業界をリードする、PC業界の未来を切り開くメーカーになろうと考えています。恐らく「無理だ」と言われるでしょうが、いつかきっとそうなるように努力をし続けます。

―― 現時点でSurface Bookが採用するシステムLSIのスペックは非公開ということですよね? 採用するGPUのスペックも公表されていません。

ホール氏 今のところ公開しているのは第6世代のCoreプロセッサを採用していることと、NVIDIAとの間で共同開発しているカスタム仕様のGeForceを採用しているという2点です。ノートPCの中でもトップクラスの性能を持ちながら軽量に仕上げているので期待してください。

Surface Book タブレット本体側にCPUやメイン基板を一通り搭載するが、キーボード側にNVIDIAと共同開発したカスタム仕様のGeForce GPUも内蔵する(GeForceを内蔵しない構成もある)

―― ところで、Surface Bookを日本の消費者が入手できるのはいつ頃でしょうか?

ホール氏 Surface Pro 3も、Surface 3も、Surface Pro 4に関しても、米国外への出荷第1陣に日本は入っていました。今回もそうした優先順位の高いタイミングで提供できるでしょう。しかし、私自身もグローバルでのローンチタイミングは分からないのです。出荷できるタイミングが近づいてくれば、正式にアナウンスします。


「本田雅一のクロスオーバーデジタル」バックナンバー

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
  10. MetaがMR/VRヘッドセット界の“Android”を目指す 「Quest」シリーズのOSを他社に開放、ASUSやLenovoが独自の新ハードを開発中 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー