基板とディスプレイ構造を見直して到達した“8.7ミリ”――Xperia arcの中身に迫る開発陣に聞く「Xperia arc SO-01C」(前編)(1/2 ページ)

» 2011年04月13日 09時59分 公開
[田中聡,ITmedia]

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製のAndroid搭載スマートフォン「Xperia SO-01B」がNTTドコモから発売されて約1年。その後継モデルとなる「Xperia arc SO-01C」が発売された。

 スマートフォン向け最新OSのAndroid 2.3に国内向けモデルではいち早く対応し、Exmor R for mobile搭載の800万画素カメラ、より大きくなった4.2インチのフルワイドVGA液晶、写真や動画を鮮やかに見せる「モバイルブラビアエンジン」を搭載するなど、Xperiaから着実に進化を果たしている。弓のような曲線が施されたボディは最薄部8.7ミリを実現し、洗練されたデザインも目を引く。また、Xperia arcは世界各国で発売されているグローバルモデルであり、海外で培ったノウハウも注入されている。

 弧を描く独特のデザインやスリムなボディはどのように完成したのか。インタビューの前編では、Xperia arcの機構設計とUI(ユーザーインタフェース)に焦点を当てた。

photophoto ソニー・エリクソン製の「Xperia arc SO-01C」。ボディカラーはSakura Pink、Misty Silver、Midnight Blueの3色(写真=左)。左から、ソフトウエアプロジェクトマネージャーの花見氏とR&Dプロジェクトマネージャーの片山氏(写真=右)

薄さ、強度、狭額縁を高いレベルで実現

photo 片山氏

 弧を描いた形状はもちろんだが、前モデルのXperiaと比べて大きな進化を感じられるのが、最薄部約8.7ミリ(最厚部約11.4ミリ)のボディだ。Xperiaの約13.1ミリに対し、Xperia arcは1.7〜4.4ミリの薄型化を果たしている。R&Dプロジェクトマネージャーの片山氏は「arcでは画面を大きくしながら薄くしたいとまず考えました。8.7ミリという数字をもともと考えていたわけではありませんが、少なくとも9ミリを切ることは目指していました」と話す。

 Xperia arcの厚さを決める際にソニー・エリクソンが目安としたのが、2007年2月に同社が海外で発売したウォークマンケータイ「W880」(厚さ9.4ミリ)だ。ただ、W880はスマートフォンではない通常のケータイ、いわゆるフィーチャーフォンなので、部品やソフトウェアは当然異なる。このサイズを実現するための苦労は想像に難くない。

photo 左と中央がXperia arc、右がXperia。arcでは基板とバッテリーが重なっていない

 スマートフォンは主に、液晶、タッチパネル、板金、基板、バッテリー、カバーで構成されており、Xperiaではいずれも「当時では最薄の部品を使っていた」(片山氏)という。さらなる薄型化を目指すXperia arcでは、基板のサイズを従来モデルから半分以下に縮小した。その結果、Xperiaでは基板の上にバッテリーを重ねていたため厚くなったが、Xperia arcでは基板とバッテリーを重ねず、上に基板、下にバッテリーを配置することに成功した。この小型化した基板の設計はW880がベースになっている。

 本体の薄型化に伴ってバッテリーのサイズが犠牲になるケースは珍しくないが、Xperia arcではバッテリーを新規で開発し、Xperiaと同じ1500mAhの容量を実現している。「薄くなったからといってバッテリーが小さくなったら意味がありません」と片山氏が話すように、ユーザビリティも両立させた。なお、Xperia arcのバッテリー電圧はXperiaの3.6Vから0.1V高い3.7Vとなっているが、「バッテリー自体の性能は変わらない」(片山氏)とのこと。

※初出時に「バッテリー電圧がXperiaの3.6Vから1V高い3.7Vとなっている」と記述していましたが、正しくは「0.1V高い」です。お詫びして訂正いたします。(4/13 16:03)

 Xperia arcのボディを語る上ではディスプレイの構造も外せない。arcではタッチパネルと液晶を貼り合わせた「クリアブラックパネル」を採用することで、タッチパネルと液晶の間にある空気層がなくなり、光の乱反射を防いで一体感のある表示が可能になったほか、薄型化にも貢献した。さらに、外装フレームとメタルシャーシ(板金)を一体成形とすることで狭額縁設計ができるようになった。Xperiaと同じ幅63ミリを維持しながら、0.2インチ大きい4.2インチのディスプレイを実装できたのは、こうした工夫があったことが大きい。

photophoto 上がXperia arc、下がXperiaのパーツ。arcでは外装フレームとシャーシが一体となっているので、Xperiaよりもパーツが1つ少ない(写真=左)。ガラス(裏にタッチセンサーがある)と液晶を貼り合わせたクリアブラックパネル(写真=右)。こうした設計のお陰で、薄さ、強度、狭額縁を高いレベルで確保できた

スピーカーとレシーバーも改良

 スピーカーも、よりクリアに聞こえるよう拡張されている。Xperia arcのスピーカーはモノラルだが、Xperiaよりも1.5倍大きい“スピーカーボックス”と呼ばれる空間が用意されており、この空間が大きいほど低音が響きやすくなる。「密閉型スピーカーボックスの構造を取っていないケータイもある」(片山氏)が、Xperia arcはFMラジオや独自のミュージックプレーヤーを搭載するなど、音楽機能にも注力しており、内蔵スピーカーでもしっかり聴けるようこだわった。

 スピーカーの周囲には3Gのアンテナがあるが、電波干渉しやすい金属(基板)からなるべく遠くなるよう、外側に近い部分に設けた。「キーの裏側などにアンテナを置くと、(基板と距離が近くなるので)感度を確保できない」(片山氏)ためだ。さらに、反対方向にあるカメラの横にはGPS、Wi-Fi、Bluetoothのアンテナが密集しており、これらの金属物から遠くなるよう、外側に配置されている。「カメラの部品は必然的に大きくなるので、そこを生かしたアンテナを配置しました。薄くしながら、アンテナのパフォーマンスも優れています」と片山氏は胸を張る。

photophoto 一見すると通常のモノラルスピーカーだが、内部の空間にスペースを取っているので、低音が響きやすい(写真=左)。カメラの右側にGPS、Wi-Fi、Bluetoothのアンテナがある(写真=右)

 細かい部分だが、イヤフォンジャックがXperiaの上端部から左側面に移動しているのが少し気になる。「Xperiaではレシーバー(電話の受話口)とジャックが重なっていましたが、Xperia arcでは通話時の音質を改善するために、より大きなレシーバーを使っているので、ジャックと重ねると厚くなってしまいます」と片山氏は理由を話す。Xperia arcに付属しているL字型のイヤフォンを使えば、操作性に支障が出ることは少ないだろう。ただ、Sony Ericsson Storeで購入できるメディアスピーカースタンドには、縦向きでないとarcを設置できず、動画を横再生しながら視聴できないのは残念だ。

photophoto 左側面にイヤフォンジャックがある(写真=左)。Sony Ericsson Storeで購入できるメディアスピーカースタンドは、arcを縦向きにしないと設置できない(写真=右)
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