旧ソニー・エリクソンからソニーの100%子会社になったこともあり、ハードとソフトでソニーの機器やサービスとより連携することが期待される。まず注力したのが、Xperia GXでは音楽アプリにWALKMANアプリを採用したこと。このWALKMANアプリで気になるのは、音質は確かに本家Walkmanと比べてもそん色ないが、Walkman向けに購入した著作権保護付きの楽曲をXperia GXで共有できず、Walkman向けPCソフト「x-アプリ」をXperia GXでは使えないこと。こうした点は初代(Android搭載)Xperiaの「Xperia X10」から改善されていない。中田氏は「アップデートをして中味のシステムが向上していくにつれて、ソフトウェアが変わっていくことは十分あり得ます。WALKMANアプリはこれが最終というわけではありません。ユーザーのフィードバックを受けながら、常に改善していきたいです」と話す。ただ、ソニーはAndroid搭載Walkmanも展開しており、XperiaにWalkmanと同等の機能を載せると、差別化が難しくなる側面もある。先述の不満点が早々に解消される可能性は低そうだ。
Xperia GXの音楽アプリに「WALKMAN」の名を冠しているのは、十分な音質をクリアしたため。「Walkmanの商品企画も音質チェックなどで関わっています」(中田氏)。ただ、2011年に発売されたXperia arc/acro/rayなどのミュージックプレーヤーと比べると、音質は向上しているという。このほか、大きい変化点の1つはAndroid 4.0に対応したことで、ソフトの作りは4.0に照準を合わせたそうだ。その他の違いについては別途レビューしたい。
端末デザインの基本路線は、ソニー・エリクソン時代から培ってきたDNAを継承しているが、今後はソニーの世界観をより色濃く反映していく考えだ。「ケータイのころから『Cyber-shotケータイ』『BRAVIAケータイ』など、ソニーのブランドを借りてきました。今後はスマートフォンを軸にして、タブレットなどと世界観を合わせるために舵を取ろうとしている段階です」(杉山氏)
最後に、カメラ機能について話を聞いた。Xperia arcが発売されたころは、裏面照射型CMOSセンサーを採用したスマートフォンは少なく、他社にはない優位性として訴求できた。しかし、2012年夏には他社製の多くのスマートフォンでも裏面照射型CMOSセンサーが採用され、もはやソニーモバイルだけの専売特許ではなくなってきた。中田氏は「世の中にソニーの裏面照射(Exmor R for mobile)が広まっていることは、ソニーグループの人間としてはとても嬉しいこと。一方で差別化が難しいことは把握しています」と話す。
そこで今回新たに用意したのが「アルバム」アプリだ。これはAndroid標準の「ギャラリー」アプリを独自にカスタマイズしたもので、サムネイル一覧を拡大/縮小表示したり、ジオタグ付きの写真を地図上で管理したりできる。「写真の編集機能はギャラリーアプリと変わりませんが、よりエンターテインメント性を高めました。ハードとソフトを統合して価値を作ることが大事だと考えます」(中田氏)。アルバムアプリはAndroid 4.0向けに開発されており、Xperia acro HDの海外版「Xperia acro S」にも採用されている。
一方、カメラスペックはXperia NXの1210万から1300万画素に向上したが、撮影機能は据え置き。HDR撮影、連写+ベストショット、動画録画中に静止画撮影などが可能な「HTC J ISW13HT」などと比べると、少々物足りない印象もある。「今受けているのはHTCやSamsung端末の連写機能だと思います。GXには連写機能は搭載していませんが、検討の余地はあります。そのほかにも、カメラ機能は足せる部分があると思っています。カメラはまだ完成形ではなく、いろいろな方向から(バージョンアップを)検討しています」と中田氏は話すので、今後の進化に期待したい。
XperiaシリーズのDNAを受け継ぎながら、LTEにも対応してAndroid 4.0を搭載するなど、正統進化を果たしたXperia GX。機能やソフトで「もう一歩」と思う部分もあるが、他のスマートフォンとは一線を画する洗練されたデザインには、単純なスペックからは図れない魅力がある。これまでにない新しいXperiaの世界観を体験してほしい。
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