音声通話用のプリペイドSIMカードでも、データ通信は可能だ。ただし結論を先に言えば、音声通話用のSIMカードはPCでのデータ通信用途には適していない。
音声通話用プリペイドSIMカードは各社とも複数の料金プランが存在し、購入時に選択する必要がある。そのため、あらかじめどんな内容か理解しておかないとソンする可能性があり、海外渡航者としては意外に壁が高い。また、データ通信料金の単価は総じてUSBモデムセットよりも割高である。
今回はシドニー国際空港のVodafoneショップで音声用プリペイドSIMカードを入手した。データ利用にも適しそうなものとして選んだ「Vodafone $30 Cap Recharge」プランは、30豪ドルで500Mバイト分のデータ通信権が付属する。
こちらは、前述したboost mobileならば同額換算で2.4Gバイト分ほど利用できることと比べると、その差は意外と大きい。さらに、49豪ドルで3Gバイト分も利用できる「Flexi Cap Recharge」というプランがあることも購入後に知った。──どのプランが適するかじっくり検討してから購入すればよいことだが、慣れない地で、ほかに並んでいる人や時間制限がありつつ、予備知識なしだと選択はかなり難しい。「ひとまずデータ通信が可能なプランで」と伝えた結果こうなってしまった次第だが、いずれにせよプランが複数あるのが分かりにくいので注意してほしい。
さらに、このVodafoneの音声通話SIMカードでは(スマートフォン内機能の)テザリングが行えず、データ通信モデムとしてUSB接続して使うこともできなかったのも誤算だ。同様に他社の音声SIMカードで試したところ、Optusは不可、TelstraはOKと通信事業者によって差があるようだ。
boost mobileプリペイドSIMカードのAPN設定 | |
---|---|
APN | preconnect |
ユーザー名 | (なし) |
パスワード | (なし) |
というわけでSIMロックフリースマートフォンなどでテザリング機能を使うなら、データ通信専用のプリペイドSIMカードにする方が確実と思われる。TesltraやVirgin MobileなどはUSBモデムセットのほかに、データ通信用のプリペイドSIMカードの単体販売も行っている。前述したboost mobileのSIMカードは、SIMロックフリースマートフォンに差し替えても利用できた。APNは右記の通りだ。
オーストラリアでは、各通信事業者がデータ通信用USBモデムセットおよびプリペイドSIMカードを販売しており、入手手段は比較的容易だ。
ただ、定額使い放題のプランがないので、通信量を気にせず、業務でガンガンデータ通信を行いたいとなると国内通信事業者が用意する“海外1日データ定額サービス”を利用するほうが安く済むかもしれない。このため、ホテルではホテルが用意するインターネットサービスを有効活用しつつ、滞在期間は数日程度、外出時に使う時だけ使う、利用頻度はさほど多くないと思うという場面、つまり一般的な旅行シーンで便利に使えそうだ。
山根康宏 :香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯コレクターとしても知られ、2008年は100台以上携帯電話を購入。所有する海外端末数はもうすぐ1000台(2011年9月時点)。
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